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自分の土地に他人名義の空き家?

「自分の持っている土地の上に他人名義の空き家があったらどうしますか?」

そんなことが果たしてあるのか?,と思われたかもしれません。
でも,私たちはいくつかそのような案件を相談され,それを解決してきました。

今回は,それをご紹介したいと思います。


なぜそんなことが…

なぜそのようなことがあるのでしょうか。
もちろん,自分がわざわざそんな土地を買ったならいざ知らず,普通はそんなことはありません。

私たちが相談を受けたのは,相続した土地というケースでした。
ご先祖が口約束で自分の土地に建物を建てさせ,その後当事者たちがこの世を去り,子孫が貧乏くじを引くという流れです。

役所に相談しても解決するためのノウハウもなく,逆に「お宅の土地の上にある空き家が壊れかかっていて,近隣が迷惑している。何とかしてください」と言われる始末。

「だから相談に来たんじゃないですか。本当の所有者が分かってれば、とっくに話し合って解決してますよ」と抗議しても梨の礫です。

いくら放置されていて近所に迷惑をかけても他人の所有物,勝手に解体したら後にその建物の関係者に何を言われるか分からない、と不安が募ります。

一体、どうしたらいいの?


解決方法はありますよ!

実は、条件さえ整えば、土地所有者が自分の土地に建っている建物を解体することは可能です。
これは、私たちが勝手に判断しているのではなく、法務局担当者と相談しながら進めてきた事例になります。

まずは,以前もご説明した「職務請求」を使って,登記上の所有者,もし本人が存命していないようでしたら,その法定相続人を探します。

土地所有者は立派な利害関係人,空き家の被害者とも言えます。
ゆえに建物所有者に「何とかしてくれ」と言う権利があります。

それによって関係者までたどり着いたら、何とかするように、例えば解体するようお願いすることになります。

もし見つからなかったら?

でも、調査しても関係者が誰がいなかったら、どうしたらいいでしょうか?
また、たどり着けるかどうか分からないのに、調査のための時間と費用をかける価値があるのでしょうか?

ヒントになる事案をご紹介します。
茨城県の相談者(ここではAさんにしておきます)の例です。

Aさんは親から相続した土地に、他人の空き家がありました。
市からは、「その物件が劣化して部材が飛散するおそれがあるので、何とかするように」とお願いされ、Aさんは自費でブルーシートで養生しました。

ところが、さらに劣化が進み、今度は「補修などの対策を講じるように」と市からお願いされました。
それで、私たちに相談がありました。

* ちなみに、そこの市の担当者とは、以前の別の空き家案件で知り合うようになり、このような難しい案件については、相談者が望まれれば私たちの連絡先を教えていただくようになっています。

早速、家屋の登記簿を確認しました。
登記名義人は、お隣の県の方でした。
戦前に所有権が移転しているので、本人はすでに亡くなっていると想定されました。

ただ、住所はいわゆる「田舎」でしたので、その住所もしくはその近辺にお住まいの同じ名字の方を訪ねれば、子孫にたどり着くかもしれないと考えました。

それで、状況を記した手紙や写真等の資料を携えて訪問しました。
かなり周辺も回ったのですが、登記名義人の子孫や知り合いに出会うことはありませんでした…

では、これで万事休すでしょうか?
いいえ、ここからが本番です。


実は、もっと簡単な方法があるんです!

登記名義人の住所とその近辺を訪問したのは、実際に探したという証拠を残すのが目的で、メインはその住所を管轄する役所を訪ねることでした。

その役所で、登記名義人は不明であることを示す「不在住証明書」と「不在籍証明書」を取得することが目的だったのです。

*ちなみに、この2つの書類を取得するあたり、念のため、土地所有者からの委任状や登記簿等の資料を持っていきましたが、通常は、第三者でも取得できるとのことです。

これらにより、土地所有者の権限で解体し、滅失登記の手続きを行うことができます。

当然のことながら、解体費用は土地所有者が負担します。
それにより、土地の有効活用ができるようになって資産価値が上がりますし、何よりも空き家による被害防止の費用の発生を防ぐことができます。

それに加えて、なぜ土地所有者が自分の土地の上にある空き家の滅失登記手続きをせざるを得ないのかという、事の経緯を記した「上申書」を登記申請書に添付します。
ここで、上記の所有者探しで手を尽くしたことを正直に記載できるという訳です。

他にも、建物所有者との土地賃貸借契約や借地料の支払いなどの事実もないことも記載しました。

無事、登記手続きは完了し、空き家問題は解決しました。


喜んでお助けします

こんな方法があったのか!」と、驚かれた方もいらっしゃるかもしれません。
このように一般的には知られていないものの、専門家の中では普通に行われている方法で、解決に向けて前進させることができる案件もあります。

諦めないで、専門家にご相談されてみてください。
私たちも、自分たちでお手伝いできることがあれば、よろこんでサポートさせていただきます。