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140字小説 No.≠171‐175

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【No.≠171 あのね、あのね。】
拝啓、あなたは元気ですか。私は退屈です。あのね、あのね。もう一度会えたら、話したいことが星の数ほどあります。あのね、あのね。心が溢れてくるのに、なぜか言葉になりません。あのね、あのね。それでも、あなたにはまだ会いたくないのです。天国に来るのは、何百年後でも構いませんよ。

【No.≠172 凍りの時代】
「森の奥には魔女が住んでいて、凍える魔法を使って農作物を駄目にするの。だから、冬は贅沢をせずに慎ましく身を隠しなさい」それが祖母の口癖だった。すっかり耄碌してしまったと思っていたけど、やがて訪れる人生の冬に対して、私が強く生きられるように願った言葉だったのかもしれない。

【No.≠173 季節の虚ろい】
遥か昔には『季節の移り変わり』があったらしい。今では技術革新によって四季を完全にコントロールできるようになった。【お知らせです。本日を以って秋に変更します】とアナウンスが鳴り響く。時期外れの寒暖差も、予測不能な天気も、果ては余韻すらなく、私達の季節は変えられていくのだ。

【No.≠174 花冠の眠る】
投薬治療の影響なのか、彼女の黒い髪は少しずつ抜けていく。僕に用意できるものや捧げられるものなんて何一つなかった。せめて、白詰草で編んだ花冠を渡そうと思う。髪飾りが必要なくなった彼女の頭を、誰も救えない僕の弱さを、そっと隠すために。何の役にも立たない、その言い訳のために。

【No.≠175 蔓言葉】
祖母の家へ遊びに行くと、庭先にさねかづらが咲いていた。「昔は遠くまで蔓が伸びていてね。隣に住む男の子に蔓の揺らし方や回数で愛を送っていたの。まぁ、気付いてもらえなかったけどね」祖母の横顔が若々しく見える。私は蔓を揺らしながら、今では誰も住んでいない隣の家に思いを馳せた。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652