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140字小説 No.≠161‐165

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【No.≠161 漁り火の島】
あの冬の罪を償うために、誰からも忘れられた島で暮らしています。私のことを覚えている人はもういないでしょう。渡り鳥が私を見つけてくれるのを祈っています。海に浮かぶ漁り火よ、願わくば彼に伝えてください。私はここにいます。おばあさんになるころには、あなたに会えるのでしょうか。

【No.≠162 芽吹く青葉の】
部屋に引きこもってアイドルのライブDVDを眺めた。構成を覚えるくらいに、何度も、何回も。他人から見たら気持ち悪いだろうか。嘲笑うだろうか。それでも、僕と彼女を繋ぐものに縋ることしかできないのだ。薄暗い部屋の、明るい画面の中では、亡くなった妹の笑顔だけが眩しく輝いていた。

【No.≠163 深海症状】
観光名所となったダムに訪れる。数十年が経った今では、そこが集落だったなんて誰も知る由がないだろう。「君と過ごした場所で生きていくんだ」彼は退去要請に応じることなく故郷に住み続けた。命を捧げた彼の声が、放流に紛れて聞こえてくる。私の叶わない恋も、青春も、水底に沈んだのだ。

【No.≠164 心仕掛け】
私の頭を優しく撫でるあなた。怪我をすると直してくれたり、調子が悪いときは元気を与えてくれます。しかし、その度に私の『心』と呼ばれるものは乱れていきました。電子回路の異常でしょうか。感情機能の故障でしょうか。不確かな気持ちの原因は、アンドロイドの私にも理解できないのです。

【No.≠165 記憶の花】
ずっと目覚めないあなたの為に、今日もシロツメクサを摘んでは花冠を作ります。やがて、何度目の春が過ぎたでしょうか。頬を撫でる私の手にあなたの涙が落ちました。「もういいんだよ」という、あなたの声が聞こえた気がします。私自身に言い聞かせるように。病床に伏せた、あなたの声が――

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652