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季節140字小説まとめ 夏

【No.066 光の陰る速度】
ジリリリ。と、地面で蝉が這い蹲っていた。「あ、タンポポだ」意識してないのか意図してなのか、花を避けた彼女は代わりに蝉を踏み付けた。鳴き声が止まる。「秋が過ぎる速さで、光は陰るの」彼女の言葉を思い出す。長い夏が終わりに差し掛かり、もうすぐそこまで、秋が迫っていた

【No.072 金魚屋】
古書店の裏通りにいる、金魚屋さんが好きだった。ライラックの香り。漁り火の光。セルリアンブルーの髪飾り。淡い初恋だったのかもしれない。十年経った今でも、何度か裏通りを訪れる。びいどろ風鈴と絵羽模様の猫だけが笑っていた。金魚屋さん。あなたはどこかで元気にしていますか

【No.100 夏の日】
「もうすぐ夏が終わりを告げます」とニュースが流れる。昔、彼女が「憂鬱に名前を付けて、それを水風船に書いて割りたいね」と言っていたことを思い出す。来年になったら。再来年になったら。そう言っている内に夏が終わってしまう。「深刻な寒波が続き、日本の四季は春秋冬にーー」

【No.104 ちーちゃん】
夏休みが始まると、従妹のちーちゃんが私の家に遊びにくる。そうしたら縁側の柱で背くらべをしたり、底の深い川で遊ぶのが恒例だった。私が大人になった今、柱に記された、低いままのちーちゃんの身長を眺める。ごめんね、ちーちゃん。あのとき、大きい方のスイカを渡せばよかったね

【No.152 汽空域(百景 2番)】
私が社会人になってから三年が経った。家を出て、ベランダの物干し竿を眺める。夏になると干されていた白い制服が、私を見送ることはもうなくなった。代わりに、黒いスーツ姿が記憶の中の白い制服をより映えさせる。蝉が鳴く。季節にも、私にも、いつのまにか春が過ぎてしまっていた

【No.154 雪融け水(百景 4番)】
哀しいことや辛いことがあると、私は決まって海岸へ向かう。どうしてだろう。おだやかな心で眺める海より、ボロボロでズクズクになった心で眺める海の方が、やけに澄んで見えた。遠くの山に目を向けると雪がしんしんと降り続く。その雪溶け水が海に流れて、私の足下を優しく濡らした

【No.155 山の子(百景 5番)】
ひと夏の恋。なんて呼べば聞こえは良いだろう。実際は欲に身を任せただけである。まだ二ヶ月そこらの赤ん坊を抱えて山へと踏み入った。あれから数年。たまに山中を散歩すると、どこからか鹿の鳴き声が聞こえた。その度に、赤ん坊の泣き声と重なって私は、身勝手にも心苦しくなるのだ

【No.186 月の裏側(百景 36番)】
大学の夏休みを利用して、僕達は二泊三日の演劇合宿をすることになった。かぐや姫役の女の子に告白する機会を伺う。夜になったら。夜になったら。なんて言い訳している間に朝が明けてしまう。神秘的な雰囲気を纏わせる彼女は、劇が終わると朗らかな表情に戻る。夜が消える。月がどこに隠れた

【No.222 海辺の彼女(百景 72番)】
大学の演劇サークルで夏合宿に訪れる。みんなが海で遊んでいる間、泳げない私は砂の城を作ることに勤しんでいた。男の子が「泳がないの?」と聞いてくるのを無視すると、すぐに違う女の子と楽しそうに笑い合う。そのとき、横殴りの強い風が吹いて砂が目に入った。涙が流れたのは、きっと――

【No.225 格子園(百景75番)】
高校最後の夏が終わる。野球部がグラウンドに集められて監督が土下座した。監督は「必ずお前達を大会に連れて行くと約束したのにな」と涙を流す。監督のせいではない。誰のせいでもない。じゃあ一体、何を恨めばいいんだ。ふいに問いかけられる球を、誰も打ち返すことができなかった

【No.234 サナトリウムの火花(百景84番)】
サナトリウムの窓から海を眺める。夏になれば遠くで花火が見えるらしい。夏になれば。先生の話では私の寿命はあと3ヵ月ほどだそうだ。写真に映る恋人と目が合う。病気のことを言い出せなくて私から別れを切り出してしまった。桜が散る。あと3ヵ月だ。夏になれば。夏になれば。夏になれば――

【No.346 夏戦争】
今年も夏が侵略してくる。去年は地球温暖化でついに秋が消滅してしまった。このままでは冬までもが夏に支配されるだろう。恋の予感、淡い期待。夏はキラキラとした幻想を見せて人間達を弱体化させてくる。春に溜め込んだ「地に足の着いた目標」を掲げて、季節防衛軍の最後の戦いが始まった

【No.348 脱出ゲーム】
去年の夏に行った脱出ゲームのフライヤーが出てきた。あの頃はまだ彼と付き合っていて、将来も見えずにだらだらと同棲を続けていた。今でもきっと彼のことが好きだ。この部屋にはまだ彼との思い出がたくさん残っていた。二度と訪れない夏を思い返す。あの日、私達は脱出できていたのだろうか

【No.351 少女風鈴】
朝、目覚めると体が透明になっていた。血管も筋肉も見えなくて、まるでガラス細工の風鈴にでもなったみたいだ。窓から入り込む風が私の体を揺らすと、リリン、リリンと音が鳴る。『透明になって誰からも忘れ去られたい』と、そう願ってしまったからだろうか。リリン、リリンと鈴がまた鳴った

【No.354 青い栞】
図書室の本から栞が切り取られる事件が起きた。犯人は図書委員の女の子だ。「栞なんかあるから飽きるんだよ。最後まで一気にパーっと読んじゃえばいいの」と笑う。読みかけの文庫本に目を落とす。「いつか、忘れてしまう今日だね」と青い栞のミサンガを、くちびるでほどきながら笑っていた

【No.376 プールの底に】
プールの授業中、松葉杖の女の子が座っていた。同級生からは「人魚」と笑われる。それでも必ず参加するのは、せめてもの反抗だったのだろう。無口で、ふれたら泡になって消えてしまいそうな白い肌だった。久しぶりに小学校を訪れる。水の抜けたプールの底に、彼女の長い黒髪が見えた気がした

【No.459 フカシキ】
風鈴の音が街に鳴り響くと、季節は強制的に夏へと侵食されていく。付夏式の準備は春の初め頃から行われる。大量のラムネ瓶と海砂が敷き詰められた部屋に、無作為に選ばれた人が長い時間を過ごす。窓もなく娯楽もない。誰かの犠牲が溜まったラムネ瓶を風鈴にして、また今年も楽しい夏が始まる

【No.504 らむねこ】
らむねこが夏を告げる。鈴の代わりに喉元のビー玉を鳴らすらむねこは、薄青い透明な体をしていた。頭を撫でてやると「しゅわ、しゅわ」と気の抜けた声で甘えてくる。夏の間、高校生の男女が一緒にいるときにだけらむねこは現れる。弾ける音がした。大人には見えない、不思議な不思議な生き物

【No.571 ぎむ茶】
夏を迎えると会社では、ぎむ茶の補給が徹底された。「残業しても納期までに間に合わせなくっちゃ」「会社の為にがんばらなくっちゃ」といった思いを強制的に植え付ける。上司を立てること。部下は口出ししないこと。義務だから。義務だからと言い聞かせる。飲む、飲む、飲む。吐いても飲んだ

【No.589 金魚すくい】
夏祭りの屋台で金魚すくいを見かける。その店はポイの代わりにシャボン玉を使うそうだ。ふっ、と生み出した泡で金魚を包む。優しく作った泡なら金魚は暴れずに、ボウルの中まで運ばれていく。隣の名人がシャボン玉を吹くとまるで水槽のように、何百匹もの金魚が泡の中で浮かんでは泳いでいた

【No.592 最後の夏休み】
僕の通っている中学校が廃校になる。夏休みを前にして僕は都会の中学校に編入することになった。都会はお金がいっぱいあるから、季節税なんてたんまりと払えるらしい。この村は『夏』を購入することができなかった。やがて冬しか訪れない村は雪の中に埋もれていくだろう。最後の夏休みだった

【No.595 透明な膜の】
ショーウィンドウに青空と入道雲が映り込んでいた。麦わら帽子を被った顔のないマネキンと無愛想な私が並ぶ。青信号を待っている間に夏が終わってしまう気がして焦っていた。不安も、泥濘も、平穏すらも叩き割ることができたなら。透明な膜の外側にいるのか、内側にいるのか、それはまだ――

【No. 732 不自由研究】
夏休み明け、一人は「自由研究をやらないとどうなるのか」を研究して、一人は「自由研究はやったけど持ってこないとどうなるのか」を研究して、一人は「自由研究をやったふりするとどうなるのか」を研究して、みんながみんな自由研究をサボる研究をしていた。結果、生徒達は先生に怒られた

【No.864 青春賛夏】
高校生になれば、自動で青春が始まると思っていた。部活も、恋愛も、将来も、大人達が思うような眩しさだけではないし、赤の他人が羨むほど適当に生きているわけでもない。だから、私の手で青春とやらを灯すのだ。「花火、買ったんだけどさ」幼なじみの男の子に話しかける。夏が騒ぎ出した。

【No.878 夏あめく】
綺麗な小説を、綺麗な映画を、綺麗な音楽を、ふれたあとに彼女のことを思い返す。どれだけ美しい記憶を纏ったって、僕の心に溢れる血液は濁ったままだ。あの夏の風景がモノクロになっていく。形も、匂いも、感触も、もう二度と忘れないように。ずっと願う。彼女の言葉をなぞって、なぞった。

【No.879 夏あわく】
綺麗な絵画を、綺麗な写真を、綺麗な物語を、ふれたあとに彼氏のことを思い出す。どれだけ美しい言葉を飾ったって、私の体に流れる感情は淀んだままだ。あの夏の視界がアナログになっていく。音も、愁いも、色彩も、もう一度忘れられるように。そっと呪う。彼氏の記憶をなじって、なじった。

【No.-046 線香花火】
恋の病を患って入院することになった。病室の窓から覗く線香花火の木を見つめる。パチパチと燃える花火が全て散ってしまったら私は死んでしまうだろう。ドキドキする度に花火が落ちていく。ふいに好きな男の子がお見舞いに来て心臓が高鳴る。蝉が鳴く。ラムネが弾ける。線香花火が淡く光った

【No.-073 夏の風物詩】
秘境の森にウォータースライダーができたらしい。頂上から竹で作られたすべり台に乗り込む。小鳥のさえずり。やわらかな日差し。冷涼とした風。水に流されていると心が洗われていく。ふいに、空から二本の棒が迫って体を挟んだ。大きな口が、僕を──「夏といえば『流しにんげん』だよなぁ」

【No.-074 災夏】
街から人が消える度、透明な蝉と風鈴が増えていく。鳴き声や音を放っているのに、姿形はどこにも存在しない。何もない場所を見つめる人はとても幸せそうだった。夏に魅せられた者は数日後にいなくなる。けれど、誰もこの街から逃げようとしない。声と、熱と、音の牢に囚われてしまったのだ。

【No.-079 クロデンワゼミ】
ジリリ、ジリリ。と電話が鳴ったので取ると、受話器の向こう側は静かだった。窓の外にはクロデンワゼミが網戸に張り付いている。今年は猛暑のせいで、例年よりも大量発生しているらしい。ジリリ、ジリリ。電話の鳴き声を聞く度に懐かしさを感じていく。世界は『昭和』に侵食されつつあった。

【No.-082 影繋ぎ】
遊歩道に伸びる影を見ると、彼女と付き合っていた夏をいつも思い出す。人前で手を繋ぐのがもどかしかった僕達は、夕陽で生まれた手のひらの影を重ねて、間接的に手を繋いでいた。今にして思うとそっちの方が恥ずかしい気もする。夜になれば、否が応でも離ればなれになってしまう関係だった。

【No.-175 退行の街(正しい街の破片⑤)】
小学校のチャイムが鳴り響く。駄菓子屋、塩素の匂い、ラジオ体操。どこか懐かしさを覚える。大人はいないのか、街は子供で溢れていた。景色が遠のく。きづけば私のからだがちいさくなっていた。こども達がてまねきする。はやくここからにげないと。わたしはよちよちとつぎのまちにむかった。

【No.-204 フラワーウォール】
育ての母は私を「ひまわり畑で拾った」と話す。血の繋がらない妹の向日葵も似た笑顔が、私には眩しくてつい日陰に隠れてしまう。それでも、白菊みたいな細い腕を、妹が褒めてくれたから少しだけ楽になれた。今は花霞の向こうに消えてしまったけど。祈るように、また、夏の匂いを閉じ込める。

【No.-227 虹焦がす命】
人間は亡くなると傘に変化する。遺された者が涙で濡れないように、後悔で身を焦がさないように。あの日、豪雨による自然災害で多くの犠牲者が生まれた。夏になると故人の魂を弔うため、傘を一斉に飛ばす行事が行われる。色とりどりの傘がふわり浮かぶと、薄暗かった空に大きな虹が架かった。

【No.-225 リィンカーネーション】
風鈴が咲く時期になると、私は亡き母の言葉を思い出す。「綺麗だけど摘み取ってはいけないよ。元は誰かの命だからね」母は縁側に座りながら、寂しそうに団扇で涼ませてくれた。親になった今、家の庭先で小さな風鈴を娘が揺らす。今年は多くの命が失われた。りりん。と、追悼の音が鳴り響く。

【No.-231 星天前路】
婚姻届は夫婦になるためのラブレターかもしれない。彼とは短冊に願って付き合えたから、入籍は七夕の日と決めていた。窓口預かりで受理は次の日になるけど。他人や家族じゃない今に不安を覚える。それでも、目が覚めれば天の川を超えられるはず。灯りを消して、運命の赤い短冊を握りしめた。

【No.-235 恋琴術】
高校の修学旅行で沖縄に訪れる。泳げないので砂浜で休んでいると、委員長が頬にペットボトルを当ててきた。「炭酸、苦手なんだけどな」「知ってるよ」いつもは暗い表情なのに、熱に浮かされてか意地悪く笑う。体が火照る。海がさざめく。嫌いだった夏から、彼女が恋とキラキラを生み出した。

【No.-237 青春を描く】
砂浜にイーゼルを置いて、キャンバス代わりの海を眺めた。修学旅行中の高校生のために『青春』を描く。水彩絵の具でさざ波を、雲形定規で入道雲を現実に生み出す。どこかで風鈴が鳴った。私自身が美しくなくても、私の描いた物語が誰かの光になれたら。そう信じて、今日もまた絵筆をふるう。

【No.-242 在りし夏】
匂いの記憶と言うけれど、人が最後まで覚えている五感は嗅覚らしい。蚊取り線香の煙、夕立の香り、手持ち花火の匂い。幾許の年月を一緒に過ごしただろうか。病室で眠る妻の走馬灯が、僕との在りし夏であってほしいと願う。人生最期の日に思い出す妻の記憶が例え、薬品の臭いしかしなくても。

【No.-245 サマーレコード】
小学校の自由研究で『夏を壊そう』をテーマに、僕はペットボトルロケットを作った。大人になった今でも、病院沿いの砂浜に行くと思い出す。空に飛ばして、太陽を割って。届くはずなんてないのに。子どもとはいえ本気だった。彼の余命である夏を壊せば、友達を助けられると思っていたんだよ。

【No.-254 六等星の瞬き】
今年の夏も海辺に色とりどりの傘が浮かぶ。元は亡くなった人が変化したものだ。ふと、青い星形の傘が私の側までやってくる。すぐに彼だとわかるのは、きっと、魂で繋がっているからなのだろう。涙が落ちる瞬間に傘が開く。私を慈しむようにくるりと回って、空に舞いながら悲しみと連れ立つ。

【No.≠005 宇宙人ごっこ】
「ワーレーワーレーハーウーチュージーンーダー」扇風機に向かって彼女が口を開く。どこでそんなもの覚えたんだとおかしくなる。「これね、宇宙人ごっこ」「ごっこじゃないだろ」彼女が振り返ってけらけら笑う。透明感のある水色の皮膚と、おでこに存在する第三の目がとても可愛らしかった

【No.≠066 秋の陰る】
「あ、タンポポだ」地面に蝉が這い蹲っていた。意識していないのか、意図してなのか、花を避けた彼女は代わりに蝉を踏みつけた。ジジ、ジジ、と鳴き声が消える。『秋が過ぎる速さで光は陰るの』遠い昔の、彼女の言葉を思い出す。長い夏が終わりに差し掛かり、すぐそこまで秋が迫っていた。

【No.≠100 憐夏】
彼女が「憂鬱に名前を付けて、それを水風船に書いて割りたいね」と言っていた事を思い出す。彼女は失うために、自身の名前を水風船に書いて割ってしまったのだろうか。熱に浮かされている間に夏が終わってしまう。夕方のニュースが流れる。「深刻な寒波が続き、この国の四季は春秋冬に──」

【No.≠104 夏のあの子】
夏休みになる度に従妹のちーちゃんを思い出す。縁側の柱で背くらべをしたり、扇風機に横並びしたり、底の深い川で遊ぶのが恒例だった。柱に刻まれた低い傷を眺める。ごめんね、ちーちゃん。あの日、大きい方のスイカを渡せばよかったね。そしたら、喧嘩して家を飛び出すこともなかったのに。

【No.≠137 夏の残り音】
裏通りにある風鈴屋を二人で覗く。夏の残り音を背に、店主から「彼女かい?」と訊ねられる。照れながら肯定すると、なぜか彼女が不機嫌になった。「なんで『はい』なんて言ったの?」大きなお腹を優しくさする。あぁ、そうか。「もう彼女じゃないでしょ」意味に気付いて、小さく笑った。

【No.≠152 残夏】
社会人になって数年が経つ。実家に干されていた夏服が、職場へと向かう私を見送ることはなくなった。代わりに、黒いスーツが記憶の中の白い夏服をより映えさせる。ふいに、もう子どもじゃないことを思い知らされた。どこかで蝉が鳴く。季節も、人生も、いつのまにか春を過ぎてしまっていた。

【No.≠156 夢うつつ】
高校最後の夏、彼が深い眠りについてから数十年が経ちました。時の流れまで止まったのか、少年の姿から成長することはありません。今日も一人で夜と朝の狭間をまどろみます。夢の中の彼は私と同じ老人の姿をしていました。「過ぎ去った青春だ」と笑っています。夢だとは承知です。夢だとは、

【No.≠186 残夜灯】
大学の夏休みを利用して演劇合宿をすることになった。かぐや姫役の子に告白する機会を伺う。照明をうまく灯せたら。なんて、言い訳している間に練習が終わってしまう。神秘的な空気を纏う彼女は、いつもの朗らかな表情に戻った。後悔が夜に浮かぶ。月が隠れる。自分自身の手で光を落とした。

【No.≠225 ノーヒットノーラン】
流行り病によって甲子園が中止になる。野球部員がグラウンドに集められて監督が土下座した。必ず大会に連れて行くという約束を守れなかったと涙を流す。誰のせいでもない。じゃあ、一体、何を恨めばいいのか。高校最後の夏が終わる。ふいに問われる疑問を、誰も打ち返すことはできなかった。

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