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天気140字小説まとめ

【No.029 炎の街】
あなたは元気ですか? そちらは晴れていますか? 私は元気です。空からは今日も火の粉が降りかかります。大切な写真も、交換日記も、渡せなかった手紙も、全部燃えて消えてしまいました。私の街には、ガーネットで作られた避炎針があります。今日もこの街は、炎に包まれています

【No.039 レイニー レイニー】
僕が子どもだった頃、雨の日にだけ家の中に現れる女の子がいた。一緒に絵を描いたり、歌を歌ったり。話をしたり。だから僕は雨の日が好きだった。「もうすぐ雨が止むから、そしたらさよならね」。それが女の子の最後の言葉だった。大人になった今でも、あの女の子とは会えずにいた

【No.063 雨降り】
「雨だ」と彼は言って、傘を私に差す。「いいよ。私まで変な目で見られちゃう」「でも、雨が降っているから」と。そうは言うが雨は降っていなかった。「雨なんか降ってないよ」と、私は彼に何度言っただろうか。雨なんか降ってないよ。雨なんか降ってないよ。雨なんか降っていないのに

【No.071 ヒヨコノクニ】
「今日の天気は晴れのちひよこです」と天気予報が告げる。ふと、頭の上にひよこが落ちてぶつかった。「ぴよ!」とひよこが元気良く鳴くと、嵐のようにひよこ達が降り注ぐ。街は一瞬にして黄色く染まり、足の踏み場がなくなった。ぴよぴよぴよぴよ。まるで、ヒヨコノクニだなと思った

【No.084 春の風】
二年前のことだ。小雨が降る中、僕と彼女は傘を差しながら夜桜を眺めていた。なんとなく別れの予感はあったのかもしれない。言葉は交わさず、ただ散りゆく桜の軌道を追いかける。あの日と同じく小雨が降る今日、適当に傘を取り出して頭上へ広げる。桜の花びらが数枚、地面へと落ちた

【No.086 花降りの街】
その街では雨の代わりに花が降ります。種類や色、大きさなどはそのときによって違いますが、大抵は季節に合った花が降ってきます。しかし冬も山場を迎える今日、季節外れにも桜の花びらが、やわらかく空を舞い始めました。みんな、みんな、春の訪れが待ち遠しかったのかもしれません

【No.111 たいふうのめ】
おかあさんから「たいふうには『め』があるのよ」ってきいた。わたしは、すなあらしがかぜでとんで、たいふうさんの『め』にはいって、いたいよー、いたいよーってなみだがでて、それがあめになってそらからふるんだーってわかりました。たいふうさんにやさしくしようとおもいました

【No.209 月の帳(百景 59番)】
今夜は流蝶群のようだ。月からそっと光の残滓がこぼれて、やがて一匹の蝶へと変容する。いくつもの蝶が流れ星のように、群れを成す光景はとても鮮やかだった。ベランダで流蝶群を待っていると、彼から「行けたら行く」とメールが届く。その言葉を信じて、私は沈んでいく月を一人で眺めていた

【No. 230乱れる(百景 80番)】
大雨に降られて髪をぐちゃぐちゃにしたまま帰ると、美容師である彼が髪を整えてくれた。ふと「私の髪が綺麗じゃなくなったら別れる?」なんて聞くと彼は俯く。心が乱れた。彼の気持ちがこのまま変わらないのは難しいだろう。彼は返事の代わりに、病気で抜け落ちつつある私の髪を優しく撫でた

【No. 237 季節の変わり雨(百景 87番)】
季節の変わり雨が降ってくる。夕陽を溶かしながら落ちる黄金色の雨は、山や花々、風や人や命さえも濡らして、また別の季節に塗り替えていく。山は紅葉が色づいて風には生ぬるい温度が纏う。夏の対する憧れを消費できないまま、季節の変わり雨は季節を、心を、感傷を。強制的に次へと進ませた

【No.238 ミオ(百景 88番)】
雨風を凌げる場所もなく、頼れる人もいない。寒さで震える私をあなたは家に泊めてくれた。ご飯を食べさせてくれて、毛布を与えてくれて、何度も頭を撫でてくれる。一夜が明けてあなたと別れた後、私は遠い街に住処を見つけた。もう二度と会えないあなたに向けて、私は「にー、にー」と鳴いた

【No.241 永久凍土(百景 91番)】
降り止まない雪を静めるために、私と妹は山の上に住む魔女の生け贄に捧げられることとなった。病弱だった妹は頂上へと着く前に倒れてしまう。身を清めたあとに、纏った着物が雪に降り積もっていく。村の人達のことなんてどうでも良かった。私は着物の上に寝転がって、妹の寝顔を静かに眺めた

【No.247 海に溶ける(百景 97番)】
夕陽が溶け出して雨のように海へと流れていく。橙色に染まる海に足を入れると、つま先から足首にかけて皮膚の色も橙色に染まる。海の中を泳ぐと感傷的な気持ちが体を浸食していく。薄情なあなたの元へと駆けていかないように、声を出して泣かないように、このまま人魚になって沈みたかった

【No.298 雨うつつ】
子どものころ、雨の日にだけ見える友達がいた。いつのまにか部屋の中にいて「わたし、雨のひはそとであそばないといけないから」と困りながら笑う。彼女がどこから来て、どこへ消えるのか。大人になった今でもわからない。遠い日の思い出だ。ヘッドフォンで耳をふさぐ。雨の音だけが聞こえた

【No.314 雨の行事】
「今日は不思議な行事を紹介します」とレポーターが伝えると、画面はとある学校に切り替わる。先生が「雨天決行です」と報告するや否や、生徒達は飛んだり跳ねたり喉を鳴らしたりの大騒ぎ。雨の中みんなで歩いて池までたどり着く。なかよく横一列に並ぶと、かえる達はゲコゲコと合唱を始めた

【No.338 浮力検査】
「今日の天気は晴れのち人でしょう」と、病院の待合室に座っているとニュースが流れる。診察室からは「浮力検査の結果ですが、以前よりも体が軽くなっているので重力剤を出しておきます」と聞こえてきた。浮力を制御できない人達は空へ飛ばされていく。やがて、空から大量に人が落ちていった

【No.352 空のくじら】
海水の雨が降ります。小学校は錆びて朽ち果てます。今日も空ではくじらが泳いでいました。街に迷い込んだくじらは、親の元へと帰れず涙を流しました。そこに傘を差した女の子がやってきて「一緒に探してあげる」と言いました。くじらは女の子を背中に乗せます。1人と1匹の冒険が始まりました

【No.382 そらねこ】
2歳の娘が「ままー。おそらにねこがいるよー」と話す。なんのことかと空を見上げると曇り空が広がっていた。しばらく眺めているとゴロゴロと雷が鳴る。娘が「ごろごろー、ごろごろー、にゃーん」と猫の声真似をした。なるほど、そういうことか。雨が降り出すと「ねこさんないてるね」と呟いた

【No.419 飽き冷め前線】
「もうすぐ飽き冷め前線がやってきます。心の移り変わりに気を付けてください」とニュースが流れる。この気圧に当たられると、心は否応なく感傷的になってしまう。生きる気力も、誰かを想う気持ちも。飽きて、冷めて、やがて失ってしまう。「今日は家の中にいようか」彼女は眠ったままだった

【No.482 雪似だいふく】
そこまで寒くないのに雪が降ってくる。珍しいなと思っていたらどこからか甘い匂いが漂ってきた。雪が服についた部分がベタベタになっていく。手のひらに雪を乗せて食べてみるとクリームが口の中に広がる。なるほど、もうそんな季節か。人肌が恋しくなるころ、街には雪似だいふくが降り始めた

【No.484 冬の音ずれ】
冬が深く積もると、街のありとあらゆる音がずれていく。朝方の雪の上を歩く調子、薬缶が沸騰する時間、寒さで震える声が遅かったり低かったりする。静かに、静かにずれは大きくなった。正しいリズムがわからないまま、ふいに通学路で彼に会うと、落ち着いたはずの心拍数が早めにずれていった

【No.500 フォルトゥナ】
「今日の天気は晴れのち砂でしょう」とテレビが伝える。宙では隕石が粉々になって、砂に変わっては僕達の住む街を埋め尽くす。夢も、手紙も、記憶も、君も、砂は全てを飲み込んでやがて風化してしまう。いつか、数千年後の誰かが、化石になった僕達を掘り返すとき、どうか、思い出してほしい

【No. 553 ぷるぷる】
空から色とりどりのぷるぷるとしたものが降ってくる。落ち潰されないように物体をひたすらよじ登っていく。必ず二個一組で降ってくる物体は街中を埋め尽くした。やがて、見えない天井に阻まれたかと思うと、物体が次々に消えていき、どこからか女性の声が「ばよえ〜ん、ばよえ〜ん」と響いた

【No.570 夕融】
夕日が溶け出して、橙色の雨が降り注ぐ。街に、花に、人に、夢に、雨が侵食していくと、やがて感傷的な気持ちに取り込まれてしまう。機能を失って、希望を失って、今日を失って。鮮やかだったはずの思い出も色褪せてしまう。夕日が欠けていく。三日月に変わる。ずっと、ずっと、夜が生まれた

【No.582 晴れのちラムネ】
「今日は晴れのちラムネです」と天気予報士が告げる。わざと傘を持っていかなかった私は、案の定ラムネに濡れてしゅわしゅわになってしまう。同級生の男の子が「何やってんだ」と笑いながら傘を差してくれる。ラムネは降り止んだはずなのに、ずっと、どこからかしゅわしゅわと音が弾けていた

【No.631 流ペン群】
今日は年に一度の流ペン群が見れる日だ。宇宙を泳ぐペンギン達が次々に地球へと降り注ぐ。元々、ペンギン達は宇宙に住んでいたそうだ。大気圏を抜けて無事に地球へと降り立ったペンギン達は、初めて泳ぐ海の心地良さを知って地球で暮らす者、プライドを守って宇宙で生きる者と二分化された

【No. 654 秋しとど】
雨の日にしか会えない女の子がいた。ふいに目の前に現れては悲しい顔をする。僕の声は届かないし彼女の声も聞こえなかった。歩道橋の下で彼女の姿を見かける。花束と手紙を添えて涙を流していた。ふと、手紙の文章が目に入ってしまう。『あなたが亡くなったのは、どしゃ降りの雨の日でしたね』

【No.664 濡れる】
駅のホームに辿り着いていることにも気付かず、傘を差したままのサラリーマンが歩いていた。うっかりだなと思いつつ彼の表情を覗くと、俯いて、虚ろんだ目で、うわごとを繰り返す。雨だ。彼の心には、まだ、ずっと、雨が、雨が、雨が降り続いている。空が晴れ始めても、ずっと、雨が、雨が、

【No.675 蜃気牢】
蜃気牢に囚われる人が年々と増えていく。人の繋がりが希薄になった今、世界中で蔓延している自然現象だ。表面上だけの希望や、叶えたかったいくつかの夢、あるはずもない未来を見せては蜃気楼の檻に閉じ込める。次々に人が現実から消えていく。蜃気牢の中にだけ、幸せそうな人達の影が見えた

【No.-008 すいさい】
校外学習で使うボンドを買いに行った帰り、予報にはないどしゃ降りの雨が体を濡らした。屋根のあるバス停で休んでいると、先客のおじいさんに「えらいザーザー振りになってきましたね」と飴を渡される。「はい、……どうも」空は未だ晴れない。心にも、地面にも、池のような水溜りを作った

【No.743 あめのふる】
雷で目を覚ます。ぽつ、ぽつと窓を叩く音が聞こえて洗濯物を干していたことに気付く。急いで外に出ると頭にこつんと小さなものが当たる。毛玉だ。空を見上げれば「ごろごろ、にゃーん」と鳴きながら大量の猫が降ってくる。そういえば、予報では曇りのちアメリカンショートヘアと告げていた

【No.≠037 言葉の涙】
どこかにあって、どこにでもあるという物語の泉では、絶えず言葉が湧き出します。言葉は文章になって流れます。文章は雨になって空から降り注ぎました。天文台から、恋から、曲がり角から、人々の夢が溢れていきます。君が流した涙もきっと、いつか、誰かを救う物語になるのかもしれません

【No.≠039 雨に結う】
雨の日にだけ現れる女の子がいた。一緒に歌ったり、絵を描いたり。ひとりぼっちの僕は女の子と遊べる雨の日を心待ちにしていた。「雨が止んだらさよならね」中学生になって、友達ができてからは彼女と会うことはなくなった。今にして思えば、寂しかった僕が生み出した幻想なのかもしれない

【No.≠049 軽い魂】
風の強い日に傘を差すのが苦手だった。私の軽い魂までもが吹き飛びそうで不安になる。雨が降っていても、雪が積っていても、傘を差さずに惨めだと笑われても構わなかった。どれだけ軽くたって、私の魂が空に流されるくらいならずぶ濡れの方が生きやすい。いつのまにか、雨は降り止んでいた

【No.≠063 命しとど】
「雨だ」彼が私を覆い隠すように傘を差し出す。けれど、空には雲一つない穏やかな日だった。「雨なんか降ってないよ」私は彼に何度言っただろうか。いつから、彼の命や生活に雨が降るようになってしまったのだろう。雨なんか降ってないよ。雨なんか降ってないよ。雨なんか降っていないのに

【No.≠070 欝降りの歌】
目の前で女の子が車に轢かれる。晴れの日でも雨靴を履いている近所の子どもだ。いつも「る、る、る」とメロディーのない声で歌っていた。ふいに、ウイスキーとタバコに興じる生活保護の女を思い出す。「命は不平等なんだって。だから私は生きてんの」と笑っていた。命は平等なんて嘘だった。

【No.≠071 ヒヨコの国】
天気予報士が「今日は晴れのちヒヨコです」と告げる。ふと、頭の上に一匹のヒヨコがぶつかった。ぴよぴよ鳴くのを合図に、空から色とりどりのヒヨコ達が降り注ぐ。今では人間よりもヒヨコの数の方が多いくらいだ。ヒヨコ小学校。ヒヨコ遊園地。ヒヨコ株式会社。世界中がヒヨコの国になった。

【No.≠086 花降流】
街では雨の代わりに花が降ります。夏は向日葵。秋は紅葉。冬は山茶花。気温や空模様によって種類は変わりますが、大体は季節に合った花が降り注ぎます。冬の寒さが厳しくなったある日、季節外れにも桜の花びらが舞い始めました。きっと、みんな、春の訪れが待ち遠しかったのかもしれません。

【No.≠111 たいふうさん】
おかあさんが「たいふうには『め』があるのよ」ってゆってました。すながかぜでとんで、たいふうさんの『め』にはいって、いたいよー、いたいよー。ってなみだがでて、それがあめになってそらからふるんだーってわかりました。だから、わたしはたいふうさんにやさしくしようとおもいました。

【No.-140 雲形定規】
僕が小学生のころ、雲型定規で曲線を描くと雲を生み出すことができた。悲しいときには雨雲が、友達に優しくできなかったときには雷雲が空に浮かぶ。大人になってから定規はどこかに失くしてしまったけど、不安を抱えても不思議な経験を思い出せば、僕の心には雲ひとつない青空が広がった。

【No.-151 雪葬】
雪合戦に興じる子ども達を横目に、まっさらな歩道へと踏み出せずにいた。綺麗なものは汚したくないくせに、少しでも濁ってしまえば気にしなくなる。私のせいじゃないからと『誰か』を言い訳にする浅ましさを、雪の中に埋めて消えたかった。白い吐息が揺れる。私の軽薄な命が、しんしんと──

【No.≠154 白を凪ぐ】
苦しいことや辛いことがある度に、私は観光地の海岸へと赴く。さざ波の立つ気持ちで見つめる海の方が、おだやかに、透明に感じるのはどうしてだろうか。遠くの島に佇む灯台を覆い隠すように、雪がしんしんと降り積もる。溶けた水が海に流れて、空に還って、私の心と足下をやさしく濡らした。

【No.≠173 季節の虚ろい】
遥か昔には『季節の移り変わり』があったらしい。今では技術革新によって四季を完全にコントロールできるようになった。【お知らせです。本日を以って秋に変更します】とアナウンスが鳴り響く。時期外れの寒暖差も、予測不能な天気も、果ては余韻すらなく、私達の季節は変えられていくのだ。

【No.≠181 白い夜明け】
家出した女の子を泊めた日の夜明け、初雪がしんしんと街を彩る。駅まで送る道すがら、女の子が羽織ったコートの汚れが、雪の白さと対比して目立っていた。店のシャッターが開いて明かりが漏れ出す。中を見てはいけない気がして、それは、知らない女の子を泊めた僕の罪悪感なのかもしれない。

【No.-179 雨鳴の街(正しい街の破片⑨)】
雨が降ると美しいメロディーが広がった。街に存在する全ての物体は、硬度や材質、温度の違いによって様々な音を生み出す。濡れるのも厭わず、住民達の慣れた手つきによって物体が動かされていく。「旅の方にプレゼントだよ」不規則だった音はやがて、盛大なファンファーレに変わっていった。

【No.≠209 蝶の行く末】
ベランダで流蝶群を待っていると、彼から「行けたら行く」とメールが届く。月から光の残滓が溢れて蝶が生まれる。色彩豊かな蝶が流れ星のように、群れを成す光景はとても美しかった。眠い目をこすりながら、三日月に変わっていくのを眺める。彼の言葉を信じて、私は寒さに震えるのだ。

【No.≠237 季節の変わる】
夏がもうすぐ終わるころ、季節の変わり雨が街に降ってくる。夕陽から滴る黄金色の雨は、向日葵や生命すらも濡らして次の四季に塗り替えていく。山は紅葉が色づき、風には冷たい温度が纏う。青春が終わる。夢も、未来も、夏に対する憧れも乾かないまま、季節の変わり雨は強制的に秋を深めた。

【No.-212 音泳ぐ】
「今日の天気は晴れのち音でしょう」夕方から夜にかけて騒がしくなるらしい。濡れる代わりに雨の音だけが街を打つ。傘を差すとメロディーが弾けて、踵を鳴らせば雫が躍る。イヤフォンを忘れてしまったけどたまにはいいだろう。どんなに足取りは重くても、たんたんとたんと階段を駆け上がる。

【No.-217 スリープウォーク】
私は晴れの日が嫌いだ。どんなに未来が暗くたって、上を向いて歩かなきゃいけない気分になる。俯いても泥濘に映る青空は見えるのに。私は私に自信が持てないから、いつか、根拠のない誰かの「大丈夫」に安心してしまう日が来るのだろうか。踏み出した足を止めて、解けてもいない靴紐を結ぶ。

【No.926 徒然銀河】
地球最後の日、流星群が降り注ぐ。空が綺麗に映える丘で、僕と彼女は終焉を眺めていた。星に三回願うと夢が叶うらしい。早口が不得意な彼女のために、半分ずつ声にする。二人の願いだ。二人で祈るのは構わないだろう。「生まれ変わっても」「一緒にいたい」祝福の光が、今、目の前で爆ぜた。

【No.-224 捨て箱】
紙に『拾ってください』と書かれたダンボールが捨てられていた。「さよなら」飼えないお詫びに餌のパルプを与えると雨がぽつぽつ降ってくる。「だーん、ぼー……」切り傷でいっぱいの体を私の頬にすり寄せた。「……さよならって言ったじゃない」まぁでも、晴れるまでは家に入れてあげるか。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652