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140字小説 No.≠101‐105

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【No.≠101 私製造機】
私と似ている人を見かけて、後を追うと工場に行き着く。そこには大勢の私が保管されていた。「私製造機を見てしまったのですね」背後から私と似た人に声をかけられる。意識がぐにゃりとした。私が私をカプセルから取り出す。「私824号は失敗しました。私825号。生活の準備をしなさい」

【No.≠102 君利き】
『本日は左利きの日です。全ての道具は左利き用になります』ハサミ。改札口。定規。蛍光ペン。慣れない感覚に多くの人が戸惑った。「反対になると大変だね」右利きの彼が、おたまでスープを掬いながら笑う。少しは左利きの苦労もわかったか。いつもより温かいスープを飲みながら私も笑った。

【No.≠103 オンガエシガメ】
罠にかかった亀を助けた晩、道に迷った女性が泊めてほしいと家を訪ねてくる。「お礼をしたいので、絶対に襖を開けないでください」部屋の奥からガタガタと鳴る音が気になって、思わず襖を開けてしまう。すると、大きな甲羅を背負った女性が裏返しになっていた。「……あの、助けてください」

【No.≠104 夏のあの子】
夏休みになる度に従妹のちーちゃんを思い出す。縁側の柱で背くらべをしたり、扇風機に横並びしたり、底の深い川で遊ぶのが恒例だった。柱に刻まれた低い傷を眺める。ごめんね、ちーちゃん。あの日、大きい方のスイカを渡せばよかったね。そしたら、喧嘩して家を飛び出すこともなかったのに。

【No.≠105 影を纏う】
誰かに尾行されている気がして、夜道を歩くのが不安になる。何かが視界に入って振り向くと自分の影だった。横断歩道に添えられている花束が目に映る。そっか。私、車に轢かれて死んじゃったんだ。亡くなった悲しみより、幽霊も足や影があることに笑ってしまう。笑って、小さくうずくまった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652