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140字小説 No.≠196‐200

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【No.≠196 不恋不愛②】
不要不急の恋が自粛されてから、この国の失恋率は九割を超えた。今では恋愛支援施設に人が溢れて機能しなくなっている。誰かに優しくすることが不確かになった私達は、感情の行く末すらも失っていく。学校で、職場で、ネットで。生まれるはずだった無数の恋が、物語とならずに消えていった。

【No.≠197 知らないどこかで】
山登りをしていると、蔓で生い茂った小屋を見つける。伸びて、絡んで、移ろって。私の生き辛さに知らん顔をして季節は流れていく。そんな当たり前のことが少しだけこわかった。私の知らない場所で川が流れて。私の知らない場所で鈴虫が鳴いて。私の知らない場所で、きっと、誰かが自殺して。

【No.≠198 涙の海】
「海ができた理由を知ってる?始まりは一人の女の子だったのよ。失恋する度に流れた涙が波になって。いつしか、恋に破れた人達の悲しみを癒す場所だという噂が、生まれた風に乗って世界中に届いたの。色んな人達の思いが集まって海になったのよ。だから、海は塩辛いんだって。……なんてね」

【No.≠199 別れの朝】
「夜が明けたら僕はこの村を去ろうと思います」篝火の側で星を眺めながら旅人が告げる。これまで朝が恋しかったのに、夜が終わってほしくないと思ったのは初めてだ。ホットミルクの中に涙が落ちる。もしも、朝のない国で生きることができたのならば、別れの夜明けなんて知らずに済んだのに。

【No.≠200 一雫の命】
自暴自棄になって走り出すと砂漠に着いていた。息を切らして倒れ込んだ傍らに、見窄らしい花を見つける。醜くても、慎ましく佇む姿が愛おしく思えた。枯れた花に涙が落ちると、色鮮やかな光を振り撒いていく。何もかも終わらせたかったはずなのに、もう少しだけ、その様を眺めていたかった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652