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140字小説 No.≠176‐180

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【No.≠176 秋あざみ】
娘を連れて妻の墓参りへ訪れる。出産してから数年で亡くなった妻のことを、娘は何も覚えていないはずだ。照れると白い肌が紅葉のように染まることも、頭を撫でる手が秋風のせせらぎのように感じることも。それだって娘の代わりに僕が忘れなければ、きっと、思い出の中で妻に会えるのだろう。

【No.≠177 文通タイムカプセル】
物置小屋代わりの旧校舎が取り壊されることになる。先生の手伝いで机の片付けをしていると、彫刻刀で掘られた歪な文字が目に入った。『あなたはまだそこにいますか?』過去の誰かが、未来の誰かに送った文通のようでなぜだか喪失感を覚える。「私はここにいるよ」と、知らない誰かに放った。

【No.≠178 凍る鳥籠】
大切な人の住む街が冷凍保存された。人口増加、環境維持、食料問題。地球が抱える全ての問題が解決されるまで、鳥籠のような防護壁に閉じ込めて街は眠り続ける。生命が凍てついていく光景を思うと心が擦り切れそうになった。叶うなら、あの人の思い出までも凍ってしまうわないように、願う。

【No.≠179 花を膿む】
自然症候群と呼ばれる病態により、彼女は植物状態になってしまった。名前の通り、体の至る部分が花に変わっていく。病室のベッドに彼女が横たわる。簡単に手折れそうな白菊となった左腕に、涙を落とせば元に戻るのだろうか。枯れないように、萎まないように。何度も、何度も、涙を流せば――

【No.≠180 路傍の月】
『わたしはつきからきたおひめさまなの』幼稚園で友達だった女の子を思い出す。けれど母親に尋ねても、アルバムを探しても女の子の存在は見当たらなかった。月を眺める度、確かにあったはずの思い出が揺らぐ。もしかしたらあの女の子は、友達のいなかった僕を迎えに来た幻なのかもしれない。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652