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140字小説 No.≠211‐215

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【No.≠211 花に嵐】
傘を開くと桜の花びらが舞い落ちる。私が中学生のとき、仲の良い女友達とお花見した日のことを思い返す。花びらを掬う彼女のはにかむ顔が、もの悲しかったのを今でも忘れられずにいる。私が告白してから会うことはなくなったけど、あの日の思い出だけは、私の心の中に美しく咲き誇っていた。

【No.≠212 亡き真似】
孫を騙る男性から電話がかかってきた。もう亡くなっているのに、声が孫にそっくりで思わず涙が流れる。男性が私を心配してくれるほどに、孫はこの世にいないと思い知らされてしまうから。私より先に旅立ったあの子が優しいはずないもの。だから私も意地悪く、あなたには会ってあげませんよ。

【No.≠213 ルートレス】
好きな人の嫌いなものだからという理由だけで嫌いにはなりたくないし、逆に、嫌いな人の好きなものだからという理由だけで嫌いにはなりたくなかった。なんて自分勝手で、自分本位な考え方なんだろう。それでも、嫌いな人の嫌いなものが私で、好きな人の好きなものも、私だったらいいのにな。

【No.≠214 エンプティー】
小説家としての人気が落ちてきた頃、不幸話をエサにして、暴露本で炎上を狙って、夢もプライドも捨ててどうにか知名度を保つ。誰かを蹴落としても、誰かに恨まれても、有名になれるならそれで良かった。不安で濁っていた視界が澄み渡る。そのくせ、鏡に映る僕は随分と薄汚れてしまっていた。

【No.≠215 ささなぎ】
絵羽模様の和服を纏ったまま砂浜に横たわる。私の長くて茶色い髪をさざ波が揺らす。夕陽が海に融けて、景色が橙から群青に移りゆく。彼が浮気していたとも知らずに逢瀬を重ねたことは、疎い私にも責任があると友人から嗤われる。私も、空も、心さえも。病葉のように本来の色を失っていった。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652