百人一首140字小説まとめ③
【No.≠151 待ち人知らず(百景 1番)】
紅葉を踏み鳴らしながら、私は無人駅で飼い主様の迎えを待っています。お手製の待合室は草の網目が荒いので、夜露が体に染み込みます。「冬を越えて、春を過ぎる前には必ず戻ってくるからね」あれから何年が経ったのでしょうか。飼い主様はまだ訪れません。私の被毛は涙で濡れるばかりです。
【No.≠152 残夏(百景 2番)】
社会人になって数年が経つ。実家に干されていた夏服が、職場へと向かう私を見送ることはなくなった。代わりに、黒いスーツが記