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#第18回坊っちゃん文学賞
今昔コロツケー奇譚 〈3998字〉第18回坊っちゃん文学賞撃沈作品③
表通りから離れた狭い路地の奥に、その小さな店はあった。
外の看板にはひとまずバーと謳ってあるが、入ってみれば壁中所狭しと品書きが貼ってある店内は、むしろ寿司屋のカウンターに近い。
ポテト・かぼちゃ・クリーム・さつまいも・カレーポテト・餅・チキンライス……
「ねえマスター。俺さ、この店通うようになってから、何だか元気になったみたいだ」
「ほう、そうですか」
客は若い男が一人いるだけだった。中年の
令和青春恋絵巻 〈3997字〉第18回坊っちゃん文学賞撃沈作品①
「はあ……マジで無理……」
紫苑は、ため息まじりに部屋の天井を仰いだ。頭の中に放課後の光景がまざまざと甦る。
「一之瀬さん、隣の席だからって中里君にベタベタしないで。目障りなのよ」
誰もいない教室で、まるで般若のような形相の清原香澄に睨みつけられた紫苑は、才色兼備で名高い香澄の豹変ぶりに言葉を失った。
確かに中里哲哉とは時折会話を交わすこともなくはない。だが顔立ちが良く性格も爽やかな上に、