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長めのショートショート・短編小説

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1000字以上のショートショートや短編小説を集めています。 どこかの文学賞に出してあえなく撃沈した作品の供養も兼ねております😅
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2022年9月の記事一覧

(旧作)ミッション・テンパッシブル 〈5170字〉 光文社文庫Yomeba!第19回『ゲーム』優秀作

(旧作)ミッション・テンパッシブル 〈5170字〉 光文社文庫Yomeba!第19回『ゲーム』優秀作

【おことわり】
2024年5月の文学フリマ東京38で発売した短編集『夜半舟』に収録されている『ミッション・テンパッシブル』は、旧作を大幅に改稿したものです。
本記事は2022年に執筆した旧作の『ミッション・テンパッシブル』であり、短編集に収録したものとは異なる内容です。
ご了承ください。
以下は2022年当時の記事となります。

――もう耐えられない。

私は真夜中のダイニングで、ひとり涙をこぼし

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おとしもの【#2000字のホラー応募作品②】

おとしもの【#2000字のホラー応募作品②】

「今日はお会いできて本当に嬉しいです。桜木さんのプロフィールを拝見してぜひにと思ったけど、競争率が高そうで半ば諦めてたので……」

桜木美緒は信じられない思いで目の前の男性、榊優一を見つめた。
三十六歳だというが、実際には三十過ぎぐらいにしか見えない。仕立てのいいスーツをきちんと着こなし、落ち着いた物腰と穏やかな笑顔はなかなかの好印象だ。

お決まりのホテルの喫茶店で、榊は手際よく自己紹介をした。

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棘 【#2000字のホラー応募作品】

棘 【#2000字のホラー応募作品】

老婦人は飾り棚の上にぽつりと置かれたサボテンの鉢に、深く皺の刻まれた手を伸ばすと、そっと語りかけた。

「もう生きていても仕方がない。おまえを置いていくのを許しておくれ」

――事の起こりは昨今、巷に蔓延る高齢者を狙った詐欺だった。
老婦人は決して不注意な人間ではなかったが、その生来の人の好さが災いしてか、まんまと詐欺グループの企みに引っ掛かり、多くはないが自身の生活を支えるにはまずまずの蓄えを根

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