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Can|能力開発のフレームワーク

Will-Can-Mustは、リクルートが半期の目標管理をするために使っている考え方である。選手やメンバーの(Can)の円を大きくすることは「育成」や「指導」であり、コーチやマネジャーの重要な役割の1つである。前回の投稿で「Can|Canとは何か?」について掘り下げた。今回の投稿では、具体的な育成を考えるヒントになるフレームワークを紹介する。

Will-Can-Mustのベン図

前回の投稿では、できること(Can)は長期的で、基礎的で、要素的な能力であると整理してきた。ビジネスで必要な能力とは何か?という問いを全てのマネジャーが考えるには荷が重い。すでにあるフレームワークを利用して、メンバーを評価して、能力開発をすると効果的だと考える。

リクルートのロクヨン

リクルートでは、ビジネスの(Can)を整理するために、独自の「ロクヨン」というフレームワークを利用している。「ロクヨン」とは、6つのスキル・4つのスタンスであり、リクルート社内に広く深く浸透している。

この「ロクヨン」は、できること(Can)のどの部分が十分で、どの部分が足りないのかをマネジャーからメンバーへ説明するのに利用される。例えば、この業務(Must)を遂行するのに、「分析的に問題を見る力は強いけど、人を統率する力が足りていない」などと使われている。
全社で「ロクヨン」が浸透しているので、伝えるマネジャーも使いやすく、伝えられるメンバーも理解がしやすい。また、長期での育成記録としても残しやすく、異動先でも以前のマネジャーの評価を確認することができるなど、インフラ化している。
また、会社で提供される研修も「ロクヨン」に合わせて提供されている。どのCanを伸ばすためには、どの研修を受けるべきかが分かりやすくなっている。そのため、マネジャーは、メンバーに対して、このCanが足りないので、この研修を受けたほうが良いとアドバイスしやすくなっている。メンバーから見れば、指摘された能力を不足を克服するための研修を選びやすくなっている。

社会人基礎力

ビジネスで使えるCanを整理するフレームワークとして、リクルートワークス研究所の大久保氏の「キャリアデザイン入門1 基礎力編」を紹介したい。

大久保氏は著書で能力(Can)をパソコンの要素に分けて説明している。今だとスマホの要素と考えると良い。「アプリ」「OS」「CPU」「バッテリー」という構成だ。
一番上の「アプリ」は「専門能力」を示しており、勉強して修得する知識と、体で体得する系の技術・ノウハウである。
一番下の「バッテリー」は動機(意欲)や価値観という姿勢(スタンス)を示してる。正に、電源がなければスマホも単なる板という意味で、言い得て妙である。
その上の「CPU」は思考力と処理力の2つで、処理力とは数字や言語の能力であり、思考力は論理性や創造性として、基礎学力と言える。処理速度や正確性・集中力が求められる。
そして中心になる「OS」の部分を「社会人基礎力」と呼んでいる。[1]対人能力、[2]対自己能力、[3]対課題能力の3つの能力で功績されている。iOSやAndroidOSの部分であり、バージョンによってスマホでできることが大きく変わる。この3つの社会人基礎力は、幼少期から社会人初期における総合的体験の成功と失敗の繰り返しによって培わられる能力と言える。修学旅行や文化祭、部活動や恋愛やアルバイトなどの経験が重要になる。

ポータブルスキル

更に、上記の社会人基礎力を「ポータブルスキル」として整理してた考え方もある。更に、3つの能力を、それぞれ8つの能力で分けて説明している。8つ能力も2つの相対する能力になっていることも興味深い。
例えば、対人力に①主張力と②傾聴力がある。主張力とは他人に自分の意見をしっかり伝える能力を示している。傾聴力とは他人の意見にしっかり耳を傾ける能力を示している。
仕事では、複雑な問題を扱うことになるため1つの能力があれば良いという分けではない。正反対の能力をバランスさせながら駆使していく必要があるこ現れなんだろうと分かる。メンバーへのアドバイスに使うフレームワークとして非常に有用だ。

バスケの基礎能力のフレームワーク

バスケのコーチが選手のできること(Can)の円を広げる観点で、基礎能力を整理したフレームワークを探したが適切な情報は見つからなかった。そこで、上述の社会人基礎力をフレームワークをベースにして、バスケに関して考えてみる。
バッテリーなどの土台は、ビジネスと同様に動機や価値観になるだろう。運動なので体力や気力や、身長や手足の大きさや長さなどのフィジカルも含まれる。
CPUにあたる基礎学力も、ビジネスと同様に思考力・処理力であり、そこにコーディネーションと言われる運動能力が含まれる。コーディネーションは①リズム能力、②バランス能力、③変換能力、④反応能力、⑤連結能力、⑥定位能力、⑦識別能力の7つに分けられる。
運動能力は、体力テストの項目から①筋力、②持久力、③俊敏性、③柔軟性で整理されるのだと思う。

コーディネーションの7つの能力

問題になるのは、社会人基礎力にあたるOSの部分だ。スポーツである点、特にチームスポーツである点を考えると[1]対人力と[2]対自分力は含まれるだろう。[3]対課題能力は、少しチューニングが必要だ。
バスケットの基礎技術が含まれるのだろう。JBA(日本バスケットボール協会)のU12〜16の育成指導内容を見ると、①ドリブル、②パス、③シュート、④1対1オフェンス、⑤1対1ディフェンス、⑥リバウンド、⑦トランジションが、バスケのOSの部分と言える。状況判断力とか、チームディフェンスとかも基礎力に入れたいが、それらはアプリの部分かもしれない。

コーチやマネジャーが、選手やメンバーに対して能力を評価したり、能力を向上させるためのアドバイスや指導に役立つ、能力開発のフレームワークを紹介してきた。バスケの適切なフレーワムワークが見つからなかったので、中途半端な投稿になってしまったが、フレームワークを持って考えて、指導することで、選手やメンバーの理解度や納得感が高まることとがイメージできたと思う。アシスタントコーチや他のマネジャーとの情報共有にも有用であると考える。

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