見出し画像

Can|Canとは何か?

Will-Can-Mustは、リクルートが半期の目標管理をするために使っている考え方である。選手やメンバーの(Can)の円を大きくすることは「育成」や「指導」であり、コーチやマネジャーの重要な役割の1つである。
今回の投稿では、Canとは何か?について掘り下げてみた。できること(Can)という表現を見ると誰でも分かる気がするが、誤解したり混同したりするケースを見てきたので整理してみる。これによって、Canの指導が明確になればと思う。

Will-Can-Mustのベン図

CanとMustの密な関係

できる(Can)とすべき(Must)は全く違う言葉なのだが、実際には混同しやすい。例えば、営業職として、月に10件の契約を取るというのは、すべきこと(Must)だが、月に10件の契約を取ることができるか?できないか?を考えると、できること(Can)として扱うこともできてしまう。
できること(Can)とすべきこと(Must)の関係は密接である。仕事では、研修やマニュアルによってスキルを向上させる育成方法もあるが、実戦経験を通じてスキルを向上させる育成方法もある。能力に応じて任される仕事の役割(Must)が決まるのが基本アプローチだが、現状の能力以上の役割(Must)を任されることで、能力を向上していくアプローチもある。仕事を通じて能力を開発することとOJT(On-the-Job Traningの略)と呼び、企業では一般的に取り入れられている。
バスケで考えると、シュート練習によってシュート力(Can)を上げることもできるが、ゲーム練習や練習試合の実践経験を通じて、シュート力をあげる指導も行われる。また、ベンチメンバーや次の世代で期待する選手を少しだけ試合に出して、実戦経験を積ませる育成も一般的だと考える。

CanとMustの密な関係

Mustを達成するために必要な複数のCan

ここまでで、できること(Can)とすべきこと(Must)は密接な関係で混同しやすことを整理した。もう少し関係性を整理しておく。
やるべきこと(Must)を達成するためには、複数のできること(Can)が必要という関係がある。仕事において、月に10件の契約(Must)を取るためには、コミュニケーション能力も必要だし、たくさんのお客様に接触する行動力も必要になる。更に、お客様の課題を分析する能力や、自社商品の説明力、社内の事務手続きの能力も必要かもしれない。
先のバスケの例でいうと、シュート力をできること(Can)として整理して、実際の試合で点を取ることをすべきこと(Must)と整理することができる。シュート力というのは曖昧な表現なので高いシュート成功率としよう。試合で点を取るには、高いシュート成功率の能力も必要だし、シュートチャンスを作る空間認知力やパスの受けるキャッチ力など、複数の能力が必要になる。すべきこと(Must)を達成するためには、複数のできること(Can)が必要という関係が分かる。
バスケでは、試合に勝つことを目的とするが、そのためにチームに必要な能力はさまざまである。選手個人として見ても、複数の能力を使って結果を出している。そのため、コーチはチームや選手に不足している能力を見つけて、それを強化するために練習メニューやトレーニングを導入して、結果を出そうと考えているはずだ。
会社のマネジャーも、組織として結果を出すためにメンバーを指導している。自分のメンバーにとって不足している能力を見つけて、アドバイスをしたり、ルールを設定してみたり、研修を受けさせたりして、メンバー能力を上げて結果を出そうと考えいるはずだ。

複数の能力(Can)を用いて、すべいこと(Must)に挑戦する

Canは長期的で基礎的

すべきこと(Must)のために、複数のできること(Can)を必要とするということは、できること(Can)はより要素的なことで、すべきこと(Must)は実践的なことだと整理できる。違う言い方をすると、できること(Can)は長期的に維持できることで、すべきこと(Must)は短期的とも見える。
つまり、会社で考えると、1年前にやるべきことと今年やるべきことが違うことはあり得るし、他の部署に異動するとやるべきことは変わる。しかし、1年前にできる能力を得ていたら今年ができるのは自然であり、どの部署でも通用する能力がある。できること(Can)では、長期的で基礎的な部分の能力を扱うことと分かる。

Mustは実践的だが短期的

逆に、すべきこと(Must)は、より応用的だが、短期目標や今期のミッションとして扱われると理解できる。よって、冒頭の営業職の事例である「月に10件の契約を取る」は、すべきこと(Must)として扱われるのが妥当である。「月に10件の契約を取れる」(Can)があるか?ないか?ではなく、単に「月に10件の契約を取れたかどうか」の事実をすべきこと(Must)の結果として評価すべきである。
ここで気付くことがある。営業メンバーに月に10件の契約を取れる能力が備わっていたとしても、市況環境や競合の新商品の発売など、外部環境によって影響されてしまう。できること(Can)に関係なく、すべきこと(Must)は達成できていない事実は評価されざるを得ない。端的的には、すべきことができたら評価されるし、すべきことができなければ評価されない。ということだ。
バスケにおいて、天才と称されるシューターAが絶不調でシュートがほとんど入らない試合もあるだろう。能力は疑われないが、期待を裏切ったと非難されることは、仕方がないことかもしれない。
できること(Can )と、すべきこと(Must)の違いを整理してきたが、個人の能力と短期業績は分離して評価されることが重要ということが分かる。コーチやマネジャーは能力を評価するためには、1つの結果だけで一喜一憂しては行けない。

CanとMustが一致しないこともある

CanとMustの関係を理解するために、もう1つの例を説明する。Aさんは海外留学経験があり英語が堪能だが、現在は、国内の業務だけを担当しているとする。この場合は、英語ができるという(Can)を持っているが、業務としてやるべき(Must)で、Aさんの能力を十分に使えていないと言える。もちろん、できること(Can)とすべきこと(Must)の重なりが多いほうがメンバーの能力を有効活用できていると言える。
しかし、仮に、Aさんには、交渉力が高いという別の能力があり、現在の組織では、Aさんの英語力という能力よりも交渉力を活用して欲しいと考えることはあり得る話である。この事例において、Aさんのできること(Can)が変わることはないが、すべきこと(Must)は、短期的な組織のニーズに影響を受けるということになる。
バスケの例で考えると、ロングシュートが得意な選手Aがいたが、他から更にロングシュートが得意な選手Bが移籍してきたので、選手Aはチーム事情に合わせて、選手Bにパスを供給することを優先役割を担ってもらうことがある。これも、短期的なチーム事情ですべきこと(Must)が影響を受けるケースと言える。
選手Aが、役割によってロングシュートを打つ本数が減ることは、不本意と思うかもしれないが、これは本人のどうしたいか(Will)を確認する必要がある。NBAでは、オールスター級だった選手が、トレードの影響を受けて、ベンチスタートを受け入れることがある。第三者から見ると不本意なんだろうと想像できるが、NBAファイナルを目指したい。優勝リングを手に入れたいという(Will)から比べると、受け入れられることなのかもしれない。


今回、Canとは何か?について掘り下げてみた。特に、すべきこと(Must)と混同しがちだと思い、その差を整理することで、できること(Can)について明確にしてみた。コーチやマネジャーの役割は、選手やメンバーのCanの円を広げることだが、Canとは何か?が明確になることで、指導のヒントが見つけられたのでは?と思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?