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Rio Del Lago 100 Mile Endurance Race (後半)

前半からの続き

初めの21マイルは聞いていた通り、ほぼロードを走る。
一緒にスタートしたチームジャパンの皆さんは初めからペースが早く、アドバイス通りスピードを抑えて走っていたのは僕ぐらいだったかな。
その話をしていた張本人クニさんを見かけたのでゆっくりいくのかと思い、
話しかけようかと近づいていったらぐんぐん先にスピードアップ。
すぐに見えなくなりました。
僕はこの21マイル区間はマイペースをキープすることに専念しました。
心拍と自分の体調をみながら、調子は良好、まだ79マイル残っています。

9マイルと17マイルのエイドステーションは早朝で温度も低くて水の消費もあまりなかったので素通りしました。持っていたジェルを45分おきに取り、Saltstick とBACCアミノ酸を1時間おきに体に入れて進みます。

単調なロードは個人的に好きではなく、このレースの序盤21マイルはとても長く感じました。
ですのであんまり記憶に残っていないのですが、
唯一心動いたのは21マイル地点エイド近くに現れた川沿いのサンライズ!
素晴らしく綺麗でした。

川の向こうに登るサンライズ

21.48miles_Beals Point Aid、最初のドロップバック(自分の用意したもの、補給、食べ物、着替えなどを用意して置けるバック)のあるスタート地点へ戻ってきました。ベテランランナー、クニさんの妻、デイジーさんがなんと僕ら他の日本人選手のお手伝いもしてくださいました。心から感謝!!ちょっと泣きそうになりながらも、笑顔をキープ。素早くゴミを捨てて補給を済ませ5分以内にはエイドを出発しました。さあここからようやくトレイルへ入っていくはず!その後2つのエイドでは、水と液体Fuel(カロリーをしっかり摂れる飲み物)を補給だけして、3分も滞在せず進んでいく。


35.75miles_Rattlesnake bar Aid、ここにもドロップバックがある。
足元もロードからトレイルに変わって、自分の足も体も動いてきている。
このエイドでもデイジーさん達が迎えてくれました。
前を走っていた、ケリーさんとクニさんに追いついた。
お稲荷さんをひとついただいてエネルギーも注入、体も動いてきたし早々にエイドを出る。エイドを出るとクニさん発見、アメリカンリバー沿いのトレイルが素晴らしいと話していたのですが、クニさんのちょっと調子が悪そうだったので、僕は先に行かさせていただくことにした。
足が動いてきたので、ペースをキープ。

41.76miles_Cardiacに難なく着くとまたロードに出た。
ここから4マイルはロードの上りのようだ。
足は動いていて走れる感じだったけど、ここは後半に足を残してパワーウォークを心がけて進んでいく、良い感じに足は進み息もあがらない。
ワサッチに向けての登りの練習は無駄ではなかったなあと、
一歩一歩確認しながら進む。

44.93miles_OverLook 山道を登り切った上にあるエイドステーション。
時間が午後に入っていたので気持ちの切り替えと体を少し温めるという効果も狙って、1ヶ月間抜いていたコーヒーを飲む、スターバックスの粉コーヒーはレベルが高い、お湯さえあればちゃんとしたものがどこでも飲める。美味しすぎて一気に飲み干してしまった。もういっぱい飲みたい気持ちは抑えてカフェインパワーで小走りで早々に出発。
体はまだまだ動く感じだ。
ここから一気に川沿いまで降って、Western States100の後半コース部分へ入っていく、まずは有名なNo hands Bridgeへ向かう。
上から見るとそこまで大きくも感じないこの橋は、思っていたよりもサラッと現れてサラッと終わってしまう。 
49.17milesこのエイドでは水だけ補充してすぐに出発。
ここからのアメリカンリバートレイル、オーバーンレイクトレイルは今回のレースで走れるのを一番楽しみにしていた。
ゆるい感じに登ったり降ったりを繰り返しながら、登りは早歩き、下りと平地は走った。10milesほどあるこの区間、ほとんど走っていた気がする、気持ちがよくて夕日に追われながら山道を進んでいったら59.35miles_ALTのエイドステーションに着いていた。
陽が落ちると冷え込むと聞いていたので、寒さ対策のため、足のゲイターを履いて、夜のセクショションに入るので、メインライトのウルトラスピアのウエストライト600ルーメンを装着。頭にはザックに入れていたPetzlのIKO coreを付け直した。トップスは朝から一度も脱いでいないパタゴニアのAirshed Pro Pulloverをそのまま継続、暑くなったらジッパー全開に腕まくりして、寒くなったらジッパーを閉める。この変化だけでレース中全く不快感なく走り切れた。ドライレイヤー、そしてベースのTシャツ、その上に羽織る形。

次のエイドまで、9.64miles。ここもなかなか長い距離で特に前半部分は同じようなトレイルがずっと続く、目の錯覚のようにくねくねと登ったり降ったりしているこのトレイルは、なんと石一つ落ちていないシングルトラックでほとんど太陽の光のない中でも問題なく足を踏み出していけた。ここも走ったというよりは走らされてしまった感があるほど”素晴らしいトレイル”だった。この区間の後半部分ごろから、徐々にお腹に違和感がでてきた。どうやら走ることで胃が振られて気持ち悪くなっている感じだと実感したのは、68.99miles_Cool FireStation Aidに着く頃だった。
何も食べれない感じがする。
寒くなってきたので水の消費も減ってきたし、汗もあまりかかなくなってきた。
それに伴って塩分サプリ(Saltstick)も取る時間を2時間に一回に変えた。
45分に一回とっていたジェルも胃がうけつかなくなってきたので、1時間半に一回、それもちょっと現状厳しくなっている。一口ゼリーとチーズカサディアをもらってお腹に無理やり入れた。
食べれないことで足が止まってきたので、寒さも増してきた。持っていたレインウエアを着込んだ。止まったら終わると思い、座らずそのままエイドを出発。
このエイドで先を走っていたキタノさんと出会う。
前半走りすぎて足が終わっているようでした。

100mile raceは70mile地点からスタートだ!とベテランランナー達がよく言っている。僕も実際、過去2回のレースは、70mile前後で時間切れになっている。
気持ちを仕切り直して、まず胃の調子を崩さないようという事と、
体が止まってしまわないように足を動かし続ける事を心がけて進む。
RDLの後半、ここから先は一度通った道を戻っていく。
まずは、72.60miles_No hands Bridge aidまで向かう。
下り貴重だったので、スピードを出しすぎないように足をすすめていく、まだ食べれていないことからくるダメージはない感じだけど、スピードを上げると気持ちが悪くなるので、一定のスピードをキープして動く。
No Handsから4mileちょっとは今度は登りになる、山の上のエイドステーション76.84mileのOverlookへ、素早く補給して(ほぼ何も食べれなかったけどスナック菓子をもらってポリポリしながら)4マイル以上続くロードを下へ進んでいった。
一番下までついたらそこからは、くねくねと続く川沿いのトレイルを進んでいく。
この辺りの15マイルくらいの区間、あたりが真っ暗なのもあるが自分の体調も悪くてあんまり記憶がない。川沿いになり寒さもどんどん増していた気がする。
体の動きを止めないように足だけは進めた。
ジェルも取れていなかった気がする。

86.02mile_Rattlesnake barに着く直前、3つくらい前のエイドで出会っていたキタノさんに追いついた。足の疲労がひどいようで、思うように進めないようでした。エイドでお湯をもらって、ピザを一切れ無理やり食べて、本気で座らないように出発準備をした。周りにはしっかり座ってしまっている人たちで溢れていた。やっぱり休むとこの外気温は危ない。寒すぎる。
気持ちは先を急ぐ。
キタノさんと一緒に出発するが、先に行ってくれとの事で、
パワーウォークができるようになってきたので、早めの歩きを心がけて進んだ。

88.84mile_Horseshoe bar, この辺りで出会った女の子と一緒に進む、彼女は胃酸を調整するTOMsという、ラムネのようなものをもっていて20個くらい僕の手の上にくれた、それをずっと食べ続けたら胃の調子は治るはずと言っていたので、食べていたが全く変わらない、胃の調子。
夜が開け始め、川と湖からの放射冷却でトレイルがグッと冷え込んできた。
僕はきているものは全て羽織っていたが止まったら震え出しそうな温度、おそらく0度くらいには落ちていた気がする。隣にいたその女の子は軽装でずっと震えながら動いていたが、貸せるものもなく淡々とそのまま進む。
7マイル続いたそのセクションがようやく終わり、最後のエイドGranite Beach_95.84mileに着いた。水もジェルも減っていなかったし、温かい食べ物もなさそうだったので、素通りして先へ進む。
この辺りはトレイルのマーキングが曖昧で何度もコースを見失いそうになった。
残り4マイル、走ってゴールしようと決めて一緒に動いていた二人をおいて、僕は走り始めた。胃は気持ち悪いが太陽が上がるにつれて体が動いてきているのが感じれたし、寒さは走れば暑くなると知っている。
最悪、吐けば良い。

朝靄が出始め、前が見えなくなってきた。
朝日と靄に包まれ、先が見えない中をコースマークだけを頼りに走った。
幻想的なモヤと光の中、疲労し切った身体を出来立ての光が覆っていく。
太陽の光が身体に鋭気を与える。
スピードは出ないけれど黙って走った。
川沿いの道が長い土手につながっていく、靄で前はまだ見えない。
無我夢中で土手を進む、終わったと思ったらもう一度同じような土手が現れた。
それでも進む、その土手も終わりが見えた。
なんともう一回土手が現れた、24時間以上動いているので幻覚でも見てるのかと思ったけれど、今度の土手に差し掛かった時、応援している方がいた。
『ゴールはもうすぐだ』と。
靄の向こうから朝日に混じってアナウンサーの声が聞こえた。
前に進む、土手の終わりがようやく見えてきた。
土手から少し下ると靄が一気にはれた。
眼前にはゴールのゲートがそびえる。
ブルックリンから来た僕の名前を呼ぶ声。
とうとうゴールか、初めての100マイル感想は泣き崩れるのかと思っていたけど、なぜが涙は出てこなかった。
気づいたら超えていたゴールライン。
係の方からバックルと参加賞パーカーをさっと渡され。
レースディレクターが首にメダルかけた時、僕を呼ぶ声が聞こえた。
一緒に参加したなみねむさんが、笑顔で写真を撮ってくれた。
あっけに取られた瞬間。じわじわ嬉しさと達成感が溢れてきた。
完走時間 26:48:30
レース前予定では28時間くらいを予想していたので、良いタイムだと思う。
内臓の調子を崩すまでは、25時間内にはゴールできるのではと少し欲張っている自分もいたが、現状の現実と実力はこのくらいだろう。
失敗せず、”マイペース”で自分のレースを楽しめた気がします。

突然のゴールにあっけにとられている自分

今回一緒に参加した日本人チーム(7名)、僕の前に2名がゴールして、残り4名のゴールを待つ、着替えを済ませ戻ってくると残り4名が次々にゴールした。
ロングレースは人のゴールも嬉しい、同じ時間を共有し、苦しさを個々で感じながらゴールに向かってやってくる姿は本当に素晴らしい。
100マイルレースはスタート地点に立つまでに、たくさんの練習、用意をしてきていることもお互いに理解しているから。

スタート前、意気込みいっぱいのチームジャパンの皆さん
左からケリーさん、クニさん、シンヤさん、僕、なみねむさん、ニックさん
写真にいない、キタノさん


クラフトビールとソーダで乾杯
7つプラス、クニさんの昔のバックル


見事!7人全員完走できました。
その日の夜のクニさんの家でのBBQは格別でした。
食べたものよりも同じ経験を一緒にできた仲間たちと
時間を共有できたことが何よりも最高でした。

No hands Bridgeが彫られたバックル

このレースと僕が23年生活してきたNYでのことをPodCast: We Love Timerにて

長いのですが話させていただいております。
ロング走や長時間の移動の時にでもお時間合えば聴いてみてください。







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