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'95 till Infinity 153

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【 第9章 : Unfolded Nothing-② 】

ドアを開けた俺に泣きながらエマが抱きついてきた。

ドアを開けたまま、どのくらい俺たちは抱擁していたのだろう。ゆっくりと、ゆっくりと何かが俺の心に染み入るように俺の服が濡れていった。

吹き入る風が俺の体温を奪っていった。
エマの頬は暖かかった。

しばらくして、俺はエマを招き入れ、エマは俺のTシャツやなにかに着替えた。毛布に包まって壁を背に床に座った俺にエマは話し始めた。

カイロのこと、カイロがこのままドラッグでダメになっていくんじゃないかということを。

俺は上の空でただ相槌を打っていた。
それよりも寒さだ。
俺は寒い、誰か、誰か俺を救ってくれ。
ただそれだけを考えていた。

カイロのドラッグプロブレムはその時始まったものじゃなかった。

ドラッグでいえば、俺もカイロもトーニもみな似たようなものだった。それに世の中のジャンキーがみなそう思うように俺たちは自分がジャンキーだなんて1mmも思っていなかった。

大丈夫だよ、エマ。
別にカイロはジャンキーなんかじゃない。
俺たちは遊びでやってるだけなんだ。
心配することなんか何もないよ。

俺は寒かった。
俺の頭の中にはそのことしかなかった。

魂だけが半身浮いた俺の前ではエマが話し続けていた。

カイロにはもっとできる、今よりもきっともっとすごいことが、他の誰にでもできない、カイロにしかできないことがきっとできる。カイロが今の生活を抜け出すことさえできれば…

大丈夫だよ、エマ。
俺はそれしか言うことができなかった。


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