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子供のうちに読みたかった!! 今からでも間に合う「教養文学」 後編 私たちはどう生きるか

「前編」で、私が「子供のうちに読んでおきたかった」本を紹介したが、「後編」は紹介しきれなかった「君たちはどう生きるか」特集である。



君たちはどう生きるか


〈読書後の感想〉

長く気にはしていたが、読むには至らなかった。
 
しかし、最近同じタイトルの映画を観て、その映画の原点を知りたいと感じ、購入して読むことにした。
 
その内容は、

目 次

一、へんな経験

二、勇ましき友

三、ニュートンの林檎と粉ミルク

四、貧しき友

五、ナポレオンと四人の少年

六、雪の日の出来事

七、石段の思い出

八、凱旋

九、水仙の芽とガンダーラの仏像

十、春の朝

君たちはどう生きるか より


という項目で、中学一年生の主人公のコペル君が、おじさんや三人の友達と体験する学校でのできごとを考察し、より良い方向に生きていく術を考え、成長していくもの。
 
読む前のこの本のイメージとしては、学生である主人公が日常でのできごとに対し、どう選択するかに迫られる……なんて想像していた。
 
しかし方向性は間違いではなかったが、より専門的というか考察が深く、大人の私が読んでも考えさせられる内容であった。
 
最初はコペル君の体験をおじさん(叔父さん)に語り、それをおじさんがノートに残すという形で、より深く解説して、読者を考察に巻き込むという形で進行。
 
その後、学校でのコペル君のできごとが事件に発展し、コペル君自身が悩む。
 
それをおじさんに相談して解決に励み、やがてコペル君自身がノートを付けるようになり、どう生きるか考える。
 
しかしその展開は読者を誘い、飽きさせず、読んでいて涙することもあった。

本の中で、特に心に刺さった文章を引用する。
 

四 貧しき友

どんなに立派な着物を着、豪勢な邸に住んで見たところで、馬鹿なやつは馬鹿な奴、下等な人間は下等な人間で、人間としてしての値打がそのためにあがりはしないし、高潔な心をもち、立派な見識を持っている人なら、たとえ貧乏していたってやっぱり尊敬すべき偉い人だ。

だから、自分の人間としての値打に本当の自信をもっている人だった、境遇がちっとやそっとどうなっても、ちゃんと落着いて生きていられるはずなんだ。

なるほど、貧しい境遇に育ち、小学校を終えただけで、あとはただからだを働かせて生きて来たという人たちには、大人になっても、君だけの知識をもっていない人が多い。

(中略)

こういう点からだけ見てゆけば、君は、自分の方があの人々より上等な人間だと考えるのも無理はない。

しかし、見方を変えて見ると、あの人々こそ、この世の中全体を、がっしりとその肩にかついでいる人たちなんだ。

君なんかと比べものにならなない立派な人たちなんだ。  

考えて見たまえ。

世の中の人が生きてゆくために必要なものは、どれ一つとして、人間の労働の産物でないものはないじゃないか。 

しかし、自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か、  

こう尋ねて見たら、それは問題にならないじゃあないか。

しかし、自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か、こう尋ねて見たら、それは問題にならないじゃあないか。

(中略)

だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後、決して見落とさないようにしてゆきたまえ。

この点から見てゆくと、大きな顔をして自動車の中にそりかえり、すばらしい邸に住んでいる人々の中に、案外にも、まるで値打のない人間の多いことがわかるに違いない。

君は、毎日の生活に必要な品物ということから考えると、たしかに消費ばかりしていて、なに一つ生産していない。

しかし、自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大きなものを、日々生み出しているのだ。

それは、いったい、なんだろう。

コペル君。

僕は、わざとこの問題の答をいわないでおくから、君は、自分で一つその答を見つけ見たまえ。

別に急ぐ必要はない。

この質問は忘れずにいて、いつか、その答を見つければいいんだ。

決して、ひとに聞いてはいけないよ。

(中略)

とにかく、この質問を心に刻みつけておいて、ときどき思い出しては、よく考えて見たまえ。

きっと、君は、そうしてよかったと思う日があるだろう。

おじさんのNOTE 人間であるからには
 
  貧乏ということについて   より


五 ナポレオンと四人の友人

英雄とか偉大とかいわれている人々の中で、本当に尊敬が出来るのは、人類の進歩に役立った人だけだ。

そして、彼らの非凡な事業のうち、真に値打のあるものは、ただこの流れに沿って行われた事業だけだ。

おじさんのNOTE 偉大な人間とはどんな人か
 
  ナポレオンの一生について   より


七 石段の思い出

その事だけを考えれば、そりゃあ取りかえしがつかないけれど、その後悔のおかげで、人間として肝心なことを、心にしみとおるようにして知れば、その経験は無駄じゃあないんです。

それから後の生活が、そのおかげで、前よりもずっとしっかりした、深みのあるものになるんです。

お母さんの話 より



最初は1935年(昭和10年)に書かれたとのこと。

それから言葉使いなどを多少現代風に手直ししたのが本書。

少し古い感じはするが、その内容は、得ること、考えさせられることが多く、噂に違わず良書だった。

私としては「人間の根幹」というか、「人としての心構え」を気付かされた気がする。


ぜひ、漫画として発売もしているので、そちらから入ってもいいだろう。


本書のコペル君とおじさん・お母さん・友人達とのつながりが、宮崎駿のインスピレーションを刺激して、同名の映画が制作されたのだと、感じ取れた気がする。




別冊100分de名著 読書の学校 池上彰 特別授業 君たちはどう生きるか


〈読書後の感想〉

宮崎駿の「君たちはどう生きるか」の映画を観ると、同名の本が登場する。

映画の制作で影響を受けたことを裏付けており、さりげなく敬意を表していて、その登場の仕方がなかなかよい。

映画を観た後、これはぜひ読んでみたいと本を買い求めた。

同時に、より深く知るため、その解説本的な期待をしつつ、この「池上彰 特別授業」の本も一緒に購入し、読むに至った。
 
その内容は、

目 次

第1講 「豊かさ」について
第2講 「友だち」について
第3講 「歴史」について
第4講 「どう生きるか」について

別冊100分de名著 池上彰 特別授業 
君たちはどう生きるか より


という内容で中学生を対象に、吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」をもとにした池上彰の特別授業

2017年7月7日に、東京の武蔵野高等中学校で行われた「君たちはどう生きるか」を使用した「池上彰 特別授業」を、加筆を施したうえで構成し、一冊の本にまとめたもの。

ただし、番組(100分de名著)として放送はされていない。
 
内容的には、小説の重要点を池上彰が説明しながら進行する。

小説を読んだ直後だったので、知っているというか、私が小説の感想を書いた際に心に響いた箇所と重なり、まさに思い出すことが多かった。

それでも小説が世に出た時期(1937年。その4年後に真珠湾攻撃)の日本の情勢や、文章に込められた「静かなる戦争批判」といったバックグラウンドも知ることができ、「著者の想い」を客観的な視点から垣間見ることができた。

さらに、要所で「池上流」の解説を聴くことができ、より深い小説の理解と、その延長線にある、広い観点で物事を考えることの重要性を感じた。

例えば 

第2講 お母さんの石段の思い出より

どんな過ちや苦しい経験も、その後の生活に活かすことができれば無駄にはならないということです。

大切なのは、自分が犯した過ちときちんと向き合い、自分はどうすべきだったかということを考えて、心に刻むこと。

それが人間的な成長や、よりよく生きることにつながるのです。


 
 第4講 読み方を深めるスキルより

なぜ、この『君たちはどう生きるか』が八十年も読み継がれてきたかといえば、いろいろな読み方ができ、読むたびに新たな発見があるから、それだけの深みがあるものだからです。

時代が変わっても、読む人の心を動かし、また読みたい、ほかの人にも読んでほしいと思えるような作品だからこそ、「古典」としていまに残っているのです。

――コペル君の叔父さんのような、深い知識を身につけるにはどうしたらいいのでしょうか?

それは経験を積むしかありません。

第一段階として、みなさんのそれぞれがコペル君の叔父さんのような存在を見つけてみてはどうでしょう。

親戚や知り合い、学校の先生など、身近な大人とたくさん話をして、探してみるといいと思います。

相談に乗ってくれたり、自分にはない知識やものの見方を教えてくれたりする、いわゆる「メンター(優れた指導者・助言者・相談相手)」と呼ばれる存在は、意外に自分の‶斜め上〟にいるものです。

たとえば、会社であれば、直属の上司や先輩ではなく、ほかの部署の先輩や、社内サークル活動で一緒になった先輩。

大学でも、同じゼミの先生や先輩ではなく、ほかのゼミの先生や先輩のなど。

コペル君にとっての叔父さんというのも、まさに斜めの関係ですね。

親子だと話しづらいことも、叔父さんになら話せるという人も多いのではないですか。

斜めの関係にある年上の人で、良く本を読んでいる人を探してみてはどうでしょう。



「君たちはどう生きるか」という作品のよさと、あらためて「よい本との出会いは、人生の宝物」という豊かな読書体験の価値を学んだ。

今後の参考にしたい。
 
今回小説を読んだ後にこの本を読んだが、この本を先に読んで、小説を読むきっかけとしてもよいだろう。



まとめ 私たちはどう生きるか

「後編」の「君たちはどう生きるか」特集、予想以上に長文となったが、いかがだったろうか。

池上先生も「よい本との出会いは、人生の宝物」と述べている。

一冊の本が、ときに心の支えとなり、あるいは道しるべとなって、人生を大きく変えることもある。

「前編」と合わせて、今回紹介した本をまだ読んでいない方がいたら、ぜひこの機会に読んでみようと、思い立つきっかけになれば幸いである。

そのときは気づかなくても、豊かな読書体験は、悩んだり迷ったりしたときに効いてくるものなのだから。


そして、長い長い投稿も、ひとまずこれで終わりです。

そこで、最後に皆さんにお尋ねしたいと思います。  

私たちは、どう生きるか。





最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

今後も有益な情報発信をしてまいります。

ぜひ、読んでやってください <(_ _)>



追伸 「前編」で「次回は人気映画の原作を紹介したい」と書いてしまいましたが、正しい表現ではなかったことをお詫びします。





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