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はにわのひとりごと/短編

✕✕県〇〇市の△△博物館に、一体の石人が展示されていた。

石人とは軟質の石に人体の彫刻を施し、古墳の墳丘に並べられたものである。

ただし、くだんの石人は、実は「ただの石」である。
たまたま人の形に似ていて、顔っぽい部分に三つの穴が開いているデカい石が転がっていた。それを見つけた古墳建築現場責任者が、

「あっこれ忘れるとこやったわ、入れとかな」

といって、古墳に並べたのであった。

だから、この石人には「霊」は宿っていない。
ただの石だから。


この石人の五体東に展示されている馬型埴輪の「霊」は、毎日悩んでいた。
隣の鶏型埴輪の「霊」が、しょっちゅう歯ぎしり・貧乏ゆすりをし、独り言をつぶやくからである。
しかも、馬型埴輪の「霊」が休み時間中、ぼーっとしていたいのに、

「なあなあ、佐々木朗希が8回で降板させられたの、どう思う?」

とか訊いてきたりする。

めっちゃウザい。

ある日とうとう耐え切れなくなった馬型埴輪の「霊」は、馬型埴輪を遊離し、五体西のからっぽの石人へと憑依した。

ここ、すごい静か。あーすげえ快適!


と思ったのも束の間、隣の猪型埴輪から、クッサい足の臭いが流れてきた。




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