蓮舫さん3位で、とりあえず共産党のせいにしておけば幸せになれる世界線【都知事選2024】
とにかく6月くらいから耳鳴りが止まらない。深夜、耳鳴りで目が覚めるくらいだ。地元の耳鼻咽喉科を受診したのだが、右耳が聞こえにくくなっているのはわかったものの、原因は究明できず。とりあえず、2種類の疾患を前提に薬を出してもらったが、あまり効果はない。ようやく都知事選が終わったのだから、耳鳴りも治まってほしいものだが。
いや、いいのだよ。共産党のせいにしたければ、それでいい。党派色が強い。左翼っぽい。共産党との連携が失速の原因だ…。SNSに限らず、報道機関もそんなことを言っている。いいのだよ。それが一番安易で、ゆっくりと眠れる世界線だ。そういう世界線で共産党に石を投げるのが、おそらく最も簡単で、気楽な政治批評になる。痛い思いまでして政治をやることはない。存分に悪者をつくって、みんなで石を投げれば気持ち良くなれる。共産党に石を投げるのが最も簡単で、スッキリする。それが日本の政治の空気なのだ。
それを否定する気はいっさいない。
しかし、私は拒否する。断固として。
なぜなら、共産党が蓮舫さんを支援せず、独自候補を立てていても、蓮舫さんは当選できなかったからだ。
そもそもの話として、都知事選の勝者は蓮舫さんでもなければ、石丸でもない。勝者は、小池百合子である。
蓮舫さんが何位、石丸が何位、どっちが良くて、どっちが悪かったというのは、あまりにもむなしい議論だ。どちらも負けたのだから、どちらにも何かが足りなかったことは明らかだ。
なぜ我々は、小池百合子に勝てないのか。
そういう本質的な議論がないのに、稚拙な蓮舫論や石丸論を展開しても4年後に何も残せない。
しかし、それはとても難しい。議論するのが苦しい。息が切れそうになる。つらいのだ。だから、私は共産党のせいにする人たちを否定しない。そして、ゆっくりと眠ってくれと言いたいのだ。
私だって、単純に共産党のせいにすれば楽になれる。強烈な耳鳴りも消えてくれるかもしれない。ゆっくりと眠れる。
しかし、それはしない。ぜったいにしない。
1999年に石原慎太郎が都知事になってから、もう四半世紀にわたって私は都民に裏切られ続けている。「負けたじゃん!」と言われても、いや、なにを言ってるんですか、少なくとも私は四半世紀、ずーっと負け続けていますよと言うだろう。負けたことしかない。しかし、いつも勝つにはどうしたらいいのか考える。
①共産党を切れば蓮舫さんは勝てたのか
今回の蓮舫さんの街宣で気になったのは、次々と立つ弁士だ。枝野幸男、野田佳彦、長妻昭……あの旧民主党政権を支えた重鎮たち。有権者からどう映っただろうか。正直、うーんと首をひねった。
正直に話せば、石原都政下における民主党は、実質的に石原与党だった。2009年に都議会第1党だった時期、自民党と民主党との対立が激化したが、民主党は基本的には石原知事が提出した予算に賛成し、築地市場移転と新銀行東京の2点を除けば大きな対立もしなかった。
しかも、旧民主党にはバリバリの右派が含まれていて、むしろ石原を信奉していた。
当然、そういう旧民主党勢力が都知事選で対立候補を立てても都民には響かない。実際、民主党系の候補者は負けるか、もしくは民主党自身が候補者を擁立できないという都知事選が続いた。
どうしても、旧民主党のイメージが払拭できないのだ。
蓮舫さんは「新しい民主主義」と言った。その言葉には共感するが、旧民主党時代の重鎮たちのイメージとあまりにもかけ離れている。
共産党が独自候補を立てたらどうなるだろうか。三上満、吉田万三、小池晃…「革新都政をつくる会」が擁立した候補はそろって60万票を獲得している。これは都議選で共産党が獲得する党派票と同じくらいで、基礎票と言っていい。以前も書いたように、都知事選で勝つには250万票が必要だ。最初から60万票というハンデを背負うのは、かなり厳しい。
実は立憲民主党も2021年都議選で60万票弱しか得票していない。60万票しか持っていない政党が、60万票を捨てて、新たに190万票を獲りに行く。さて、果たして現実的なのだろうか。
②だれも暴こうとしなかった石丸伸二の虚像
石丸はもう都知事選の次に進んでしまっている。
https://nordot.app/1182672062935924970?c=39550187727945729
都知事選の開票結果が出ないうちに、もう衆院選の話をしている。こんなせっかちな候補者を初めて見た(笑)
しかも、新党結成の可能性は「あるんじゃないか」と。
彼に投票した165万人の有権者はどう思っているのだろうか。東京を変えたいと言っていた人が、もう東京から離れて「広島1区」に挑戦するというのだ。自分なら呆然とするしかない。
案の定、マスコミと論破ごっこで遊んでいる。基本的に政治家というより、政治ヲタクなのだ。それでも、こうやって〝実績〟をあげれば、名を売ることができる。都知事選がこういう舞台になっていることに以前から憂慮をしているが、なかなか伝わらない。根本的には石原慎太郎が残した負の遺産なのだが、東京都を「首都」と勘違いしているうちは、こんなことは続くのではないか。
「しんぶん赤旗」が投票日の2日前になって、ようやく石丸批判を入れてきた。石丸の選対本部長は、TOKYO自民党政経塾の小田全宏塾長代行である。なんで?と思うかもしれないが、経緯は東京新聞が文字にしている。
石丸から小田塾長代行に相談したという。「政治屋の一掃」を掲げていた石丸が、政治屋・小田に選挙を相談したというのだから、この選挙はいったいなんだったのかと思う。
何が言いたいのか。
石丸はしっかり選挙をやっていたんだ。私は石丸が出馬表明した時点では海のものとも山のものともつかぬ存在で、正直、そのときは過小評価していた。ところが、選挙の告示前後になってそれが間違っていたと気づいた。
思いのほか、しっかり選挙をやっているからだ。街宣の場所や時間、回し方、いずれも素人の選挙ではない。
そんなことは現場を取材していればすぐにわかるはずだ。ところが、選挙戦序盤、明らかにどこの陣営も石丸を過小評価していた。
赤旗ですら、投票日の2日前にようやく石丸批判を書いている。
しかも今回、自民党都連が小池百合子を「支援」。当然、それに反発する自民党支持者はわんさといるわけで、そのガス抜きが石丸となった。だから、石丸は自民党支持層の10%台後半の支持を得ている。
「選挙ドットコム」が石丸をヨイショして以来、石丸旋風は明らかに選挙のプロによって〝作られていた〟。そのことに対する蓮舫陣営の過小評価が、今回の事態を招いている。
③市民運動は〝眠らない〟〝眠ってはいけない〟
課題として一つ感じるのは、リベラル層の「東京政策」の欠如だ。
立憲民主党や共産党の都知事選公約は、基本的には現自民党政権&小池都政に対するアンチテーゼでしかない。では、自らが政権の担い手になったときに、どんな東京をめざすのかが、意外に薄い。
私は、都知事選で小池都政、あるいは1999年以来続く〝石原的都政〟からの転換を本気でめざすなら、例えば今回石丸に1票を投じた無党派層や、小池百合子を支持している保守・中道層も含めて一致でき、少なくとも東京はこうあるべきだというビジョンと、東京都はどうすべきかという政策を、もっと早く確立すべきではないかと思う。
その前提として、「東京都は首都」という定義の誤りを是正すべきだ(東京都は首都にある」なら正しい)。
1兆円以上、23区に配っている財政調整交付金は、思い切って23区に権限と財源を移譲し、都が「広域自治体」として身軽になるべきである。それによって、東京一極集中の原因となっているばかげた巨大開発ができなくなる。
そのうえで、都心開発に規制を加え、海外からの投機のタネになる大規模開発をやめさせるべきである。
そういう鳥瞰図からの視点での「東京政策」づくりと市民運動を、まずは構築してはどうか。
政党はあくまで、そこに乗っかる。蓮舫さんであれ、だれであれ、候補者をお貸しする。主体は市民運動、都民である。
政党主導の都知事選から市民主体の都知事選への転換。
4年後に向けて、そこから始めてはどうか。
だから、私は都知事選の敗北を共産党のせいにしない。眠らない。眠りたい人は、そうすればいい。心地よい眠りに沈むことができる。
市民運動は眠らない。いや、眠るべきではない。とてもきついけれど、4年後に勝つために、眠らずに前に進むのだ。
だから、私の耳鳴りは治らないだろう。きっと4年後も耳鳴りは続いている。
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