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泡沫候補の石丸伸二を有力候補にしたのはだれか?【2024都知事選】

 ところで、広島県安芸高田市ってどこ?(爆)

 広島市の外れにある、町が合併してできた人口25000人弱の田舎町。本来、「市」にふさわしいのかどうかも怪しい。「平成の大合併」で無理やり「市」にしてしまった典型的な衰退する地方都市である。

 そんな市の首長が1期で仕事を放り出して、7月7日投票の都知事選に立候補するというのだから、笑っちゃうよりほかない。

 本来なら即刻、「泡沫候補」扱いだ。ところが、ネットを中心にメディアがまるで小池百合子を追い落とすくらいの勢いの「有力候補」として祭り上げている。

 アホじゃなかろうか。

都知事選に出たいなら東京で会見しろ

 ああ、また始まった。都知事選のお祭りが。あいつはどうだ、こいつはどうだと、その気のない人や素質に欠ける人の名前まで出して、メディアが大騒ぎする。都政そっちのけ。都民そっちのけである。そうやって、細川護熙も、鳥越俊太郎も撃沈し、だれも望んでいなかった猪瀬直樹や小池百合子が都知事になってしまった。

 本当に、懲りない、学ばない人たちである。

 その辺のばか騒ぎの顚末は、上記のエントリーで論じた通りである。

石丸市長は17日、広島市で記者会見し、「私が都知事を目指し、実行していきたいのは東京の発展、そして地方の発展、すなわち日本の発展だ。日本の総人口は次の20年間でおよそ1300万人減少し、多くの自治体が消滅に向かっている。46の道府県と密にコミュニケーションをとって多極分散を実現し、東京の過密を解消することで東京を世界で一番住みやすい街にできる」と述べ、7月に行われる東京都知事選挙に無所属で立候補する意向を表明しました。
 

NHK2024年5月17日

 そもそも、都知事選に立候補する表明を、広島でやっている時点で、終了のゴングが鳴っている。「東京一極集中の是正」は都知事としてやるべき仕事だと思うが、「46の道府県と密にコミュニケーションをとって多極分散を実現」としているところが意味不明である。東京のコレいらないから、そっちにあげる。コレもいらないから、あっちにあげる。そんな交渉を他の道府県とするつもりなのだろうか。

報道陣約30人が集まった中、登場した石丸氏。ネクタイは普段緑色だが、都民ファーストの会や日本維新の会のイメージ色と重なるため、この日は紫色で臨んだ。会見中には自身をめぐる過去の報道に対し、複数の地元テレビ局記者に「逆質問」。そのうち1社との押し問答が続き、「他社に迷惑になる」と記者が途中退席する一幕もあった。

東京新聞2024年5月17日

 てっきり広く開かれた会見かと思ったら、そうではないらしい。

5月19日の石丸伸二のX投稿

 これは驚いた。小池閣下と発想が同じだ。石丸は記者会見から気に入らないメディアを閉め出し、しかも選挙に立候補する公人としての発言なのに会見動画の転載は許さない。小池閣下が都庁記者クラブの会見で、自分にとって都合の悪いメディアやジャーナリストを排除するのと同じである。

 彼は市議会の議員との論戦での「論破」で有名になったが、実態は安全地帯から好き放題、悪態をついて、相手が黙ったのを見て、論破したと気持ち良くなったいただけだ。それを、都知事候補になってもやろうというのだから、あきれてしまう。

 そもそも、安芸高田市議会でどんな議論をしていようが、全国のほとんどの国民には興味のないことだ。それがYouTubeを通じて広がったのは、彼の論破ごっこが一部ネットユーザーにとって「気持ち良かった」だけで、彼の実績でもなんでもない。

 今の時点では、ネットカルトとしか言いようがない。

 今、石丸に求められているのは、東京にちゃんと出てきて、公の場で、具体的には都庁記者クラブの会見室で、公約をしっかり掲げて記者会見することである。もちろん、この会見は一部のメディアを勝手に廃除することはできない。石原都政時代、都庁記者クラブはどのメディアも、もちろんアホみたいなことしか質問しない記者であっても、申請さえすれば自由に参加し、質問することができる。大いに「論破ごっこ」をやっていただきたい。

 そういう最低限のこともしないで、メディアが「有力候補」扱いしているのは、非常に無責任である。

田舎侍が都知事選で勝利したことはない

 小池閣下が3選出馬する限りにおいて、石丸伸二が当選する確率は非常に低い。本人だってわかっているはずだ(わかっていない可能性もあるので怖いが…)。彼にとっては都知事選は転職活動の一環でしかない。そういう本質を取材を通して明らかにし、批判するのがメディアの仕事ではないか。有力な対立候補がいないからといって、彼の根拠のない自己承認欲求を満たして、なくてもいいプライドを肥大化させることに意味があるだろうか。

 とりわけ、「選挙ドットコム」の石丸礼賛ぶりは異常で、この媒体の悪い癖がまた出てきたと思い、ひたすら落胆するばかりだ(知り合いもいるので、あまり言いたくないが…)。

 この記事で、2000年以降の他県知事の都知事選立候補者を3人しか上げていないのは、ただの勉強不足か、何らかの意図があるのか、どちらなのだろうか。


都知事選に挑戦した他道府県の首長経験者一覧

 知事だけに絞ると、宮城県の浅野史郎を筆頭に、東国原英夫、松沢成文、細川護熙、増田寛也の5人もいる。そして、ここが大事な点だが、一人も当選していない。それどころか、いずれも当選者に惨敗している。

 2000年以降とは、都知事選がエンタメ化したのと重なる。そして、自民党をはじめ有力政党が「勝てる候補」探しに必死になり、都知事選が人気投票と化したのも同じ時期である。石原慎太郎が「東京から日本を変える」というスローガンを掲げたのがよほど鮮烈だったのか、政党を問わず、みんなが使うようになった。

 しかし、皆さん、すっかり勘違いしているようだが、東京都とはただの広域自治体である。たまたま、首都に存在する広域自治体であって、それ以上でもそれ以下でもない。

 にもかかわらず、他府県の知事が都知事を目指すのは、石原都政時代に「都知事」「東京都」という位置付けが変わってしまったからだ。そういうドヤ顔自治体としての東京都を是正すべきだと、私はこのnoteで繰り返し主張してきている。

 メディアが石丸伸二ごときで大騒ぎしているのは、都民の小池都政に対する、何となく重苦しい不安や不満が背景にある。にもかかわらず、これといった有力候補も現れない。「野党共闘」はいまだに候補者選定が終わらない。そういう間隙を縫って、自らを「泡沫候補」と気づいていないダークホースを「有力候補」に押し上げてしまったのだ。

 都政にかかわる関係者、そしてメディアは大いに反省してもらいたい。

250万票獲れる候補を

 さて、石丸伸二は何票獲得するだろうか。

 取材もしていないし、そもそも他の有力候補が出そろわない段階ではなんとも言いようがないが、あえて妄想してみるとする。

 MAX50万票。

 これがオイラの見立てである。

 以前にも書いた通り、都知事選で現職に競り勝とうとするのであれば、250万票が必要だ。今、小池閣下の有力な対立候補として求められるレベルは、250万票獲れる候補だ。小池百合子は4年前の都知事選で、コロナ禍を理由に一度も街頭に出ずに360万票を獲得した。そういうクオリティーの選挙を求められているのである。

 広島の山間部にある地方都市、16人しかいない市議会で「論破ごっこ」にいそしんでいたおじさんに、果たして東京で250万票獲れるだろうか。冷静に考えてもらいたい。

 っていうか、いい加減にしろ。


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