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選挙ポスターをめぐるバカ騒ぎを放置すれば、日本の民主主義は〝詰む〟【都知事選2024】

 衆院東京15区補選で、輩が大暴れして醜態をさらしたのは、まさに都知事選の前哨戦だったといえる。都知事選は、掲示板をジャックして選挙とは無縁なポスターを張りまくるという暴挙によって、いったい都知事選がなにをやっているのか有権者にわからなくなってしまった。せっかくの主要3候補の論戦は、そういう醜態のなかに溶けて消えている。泡沫候補の分際でメディアの勝手な〝推し〟により「有力候補」入りした石丸伸二がやけにまともに見えてくるから不思議だ。

 当初YouTubeで遊んでいた石丸が都知事選告示以降、実にまめに都内を街宣で回っている。これが選挙であるべき候補者の姿で、だからこそ蓮舫を追い上げている。「公務」を無理やりつくって、フリージャーナリストがなかなか近づけない離島や山奥に「演説」に出かけ、自民党や創価学会の動員でなんだか街宣をやっているように見せつけている現職と比べれば、石丸ははるかにまともだ。

 それですら、今回の都知事選でのポスターバカ騒ぎで霞んでしまう。

 ネトウヨたちが蓮舫さんの些細な言葉につっかかり、公選法違反だの事前運動だのと騒いでいるうちに、立花孝志らはそれをせせら笑うかのように、掲示板ジャックをやってしまう。ついに日本の選挙は、こんな地平まで落ち込んでしまったのかと呆然とする。

死者を冒涜する選挙ポスター

 そして、もう目を覆うばかりの惨状が今日になって届いた。


 三浦春馬のファンにとっては、屈辱でしかないだろう。実際の画像も入手したが、とてもここには載せる気になれない。探せば出てくるだろうから、ネットで検索してみてほしい。画像などなくとも、事務所のコメントで想像できるはずだ。

 選挙の公営掲示板を私物化することは、日本の選挙制度に対する冒涜だ。公営掲示板が税金の無駄という主張があるなら、国政選挙に立候補し、堂々とそういう公約を掲げ、まともなポスターをルール通りに張り、主張すればいい。

 これは法の抜け穴を狙っているわけではない。選挙管理委員会事務局が事前にポスターの中身に文句をつけたり、警察が少なくとも選挙期間中に候補者やその陣営を公選法で逮捕したり、任意同行することはまずない。それは選挙という神聖な場を汚さない先人たちの最低限の配慮で、仮にチンピラの場外乱闘であっても現在進行中の選挙の中身に踏み込まないことは、彼らにとっての矜持であろう。そういう弱みを知っているから、無茶なこともできてしまう。

 モラルダウンが落ちるところまで落ちて、メルトダウンし、底を破ってしまった状態だ。

 人権を蹂躙するポスターが乱立。

 そして、ついには死者の冒涜。

行き着く先は政党法の制定

 秋の臨時国会では、公職選挙法の改正が議論になるのではないか。一番最初に公営掲示板が弾圧されるのだろう。掲示板に罪はない。デジタルにすればいいとか言う人がいるが、醜態がデジタル化する以外の効能があるのだろうか。

 要するに、これはおそらく、公選法の問題ではない。

 公選法を改正しても、そのたび新たな炎上を起こし、ただのイタチごっこにしかならない。

 行き着く先は、そんなシンプルなことではない。

 民主主義(制度)をあざ笑えば、我々の足元が崩れる。崩される。この問題は公選法改正のイタチごっこではなく、おそらく最終的には政党や政治団体という存在そのものを問われることになる。つまり、政党法の制定に行き着くだろう。

 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、ちょうど政治とカネの問題がクローズアップされている。彼らは企業団体献金をもらいながら、それを適正に処理せずに裏金にして事務所の金庫で〝タンス預金〟にしてきた。にもかかわらず、政党助成金を満額で受け取っている。

 そして、立花らが自分たちの活動資金として悪用しているのも、政党助成金である。

 自分が権力の中枢にいたら、公選法改正なんていう無駄はやらない。

 政党法の制定に動くだろう。

 国家が政党としてふさわしい団体を「政党」として認証し、認証された政党のみが政党助成金を受け取ることができ、選挙で公認候補を擁立することもできる。

 といえば聞こえはいいが、国にとって邪魔な政党は認証せず、都合の良い政党ばかりが政党として認められる。NHK党など論外だが、共産党や社民党などは政党として認められず、「政治団体」扱いされ、選挙から排除されるのではないか。つまり、憲法で認められた「結社の自由」が根底から覆される。反権力を掲げたら政党にはなれない。国家に従順な政党だけが、国を支配する社会になる。

 そうなれば、日本の民主主義は〝詰む〟。

 そういう危機感のあるメディアがいない。相変わらず、モラルや人権というレベルで終わっている。

 立花が弾圧されている分には、みんなで笑って観ていればいい。しかし、事はそんなにシンプルではない。国が静かに丸ごと終わるのだ。

良識ある陣営は正式に声明を出すべき

 蓮舫さんはもちろん、小池、石丸の陣営も、こういう選挙に対してしっかり警鐘を鳴らすべきである。できれば、良識ある陣営が連名で、立花らがやらかしているバカ騒ぎを今すぐやめるよう声明を出してほしい。陣営でなくても、主要政党でもいい。

 この掲示板バカ騒ぎで得をする陣営はいない。これを放置しておけば、結局、公選法改正のイタチごっこが続くだけで、どんどん息苦しい選挙になっていくだろう。有権者にとってはわかりづらくなることは間違いない。国民から選挙が遠ざかる。

 そして、政党法ができて、「反権力」は排除される。もう選挙には出れなくなる。

せめて我々は政策論戦しよう

 この週末、マスコミ各社が最後の世論調査を行うだろう。そこで出る情勢が都知事選の結果を運命づける。

 現状では、投票日の午後8時にゼロ打ち確定だろう。せめてもっと開票を楽しもうではないか。それにはもう、選挙ポスターのバカ騒ぎに振り回されないことだ。しっかり政策論戦しよう。みんなが石を投げているからといって、自分も投げる必要はない。どんなに荒れ果てた景色でも、冷静でいよう。都知事選の勝ち負けより、それはとても大切なことだ。


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