見出し画像

広告主が絶対聞けない代理店の本音①

本記事の想定する読み手
アプリ領域でWEB広告出稿に携わるデジタルマーケター

読み手が得られるメリット
業界をリードする意思決定レイヤーのマーケターがぶっちゃけ何を考えているか知れます。思考プロセスを盗み、実務に応用できます。

今回は、以前投稿しましたコチラコチラの広告不正に関する記事を広告代理店の意思決定レイヤーの方々に「自分の名刺(=利害)は横に置いておいて、一人の人間としてこの記事についてどう思うか」をインタビューするという企画です。何故、この制約条件を設けたかと言うと、利害関係から開放されるとポジショントークがなくなりやすくなるためです。ビジネスモデルや名刺という利害を背負うことで本音が言えないのが会社員。であれば、このインタビューのタイミングだけは丸裸になって話してくれよ!という趣旨なわけです。

少し余談。かくいう私も広告代理店で営業をしていた時期があります。それこそアプリマーケティング黎明期にゲーム・非ゲームアプリのプロモーション支援のための営業を行ってました。何を間違えたかAppsflyerやadjustのような海外SDKの超ハイスペック版のツール(たしかSDKの管理画面上から任意のセグメントでIDFAやADIDを抽出してfacebookやTwitterのカスタムオーディエンスとして入稿できるという今考えたら過剰スペックな機能満載のツール)を売ったりもしてました。当時は成長市場であったことも相まって、広告不正なんて気にもされずイケイケドンドンだったアプリマーケティング市場。しかし、それも過去のことなので、今一線で戦っている広告代理店の意思決定レイヤーの方々が本記事を読んでどう思うか?を自分の名刺(=利害)は棚上げした状態で話してもらいましたw

記念すべき第一回目は株式会社ナイル坂井直人さんにインタビューをさせていただきました。(下の写真の右の方が坂井さんです)

画像1

・インタビュー記事

森下:本日はよろしくおねがいします。第一回目となるインタビューにお付き合い頂きありがとうございます。インタビューのコンセプトは「自分の名刺(=利害)は横に置いておいて、一人の人間として各テーマについてどう思うか」ですので、そこのところよろしくです!

坂井さん:わかりましたww

森下:まず簡単にどのようなキャリアを歩んでこられたか教えてもらえますか?

坂井さん:前職は大手結婚相談所で新規事業の立ち上げを行なっていました。昔ながらの“近所のお節介おばちゃん”の主観でアドバイスするというビジネスモデルを変えたくて。株式会社ナイルでは、ゲームメディア事業のApplivGamesと広告事業の責任者を兼務しております。マーケターとしてのキャリアではなく、事業運営側のキャリアです。

森下:おー、異色なキャリアですねー。何故、昔ながらのおばちゃんに相談している大手結婚相談所のビジネス慣習に問題意識を持ったのでし・・・

坂井さん:(間髪入れず)ちなみに、このあと広告不正や代理店の立ち位置的な話をすると思うんですが、僕はゲームが好きでゲームメディアをやっているので、楽しくゲームをやることが考えの第1にあるんです。なので代理店事業をやってますが、広告不正を発生させてゲーム会社が衰退していくこと、それを通じて利益を圧迫することはしたくないってここは本気で思ってます。

森下:(結婚相談所の話が気になる・・・)そういうマインドの方が代理店側の意思決定レイヤーレベルでいらっしゃるって素晴らしいですね。そんな中で私が書いた身も蓋もないコチラコチラの記事読んでどう思いましたか?

坂井さん:「読み手を選ぶ記事だな」という印象が1番強いです。ゲームディベロッパーの中でも営業利益や、成長率などの事業にコミットしたポジションの人でないと、ハッとしないだろうなと。

森下:なるほど、ご指摘ありがとうございます。勉強になります。

坂井さん:その上で代理店としては、やはり「緩い」「知識がない」クライアントの方が楽で、この森下さんの考えで立ち回られると利益が薄くなったりフラウド検知や除外作業の工数が多くかかるということは事実だと思います。

森下:まぁ、ぶっちゃけそうなりますよね。

坂井さん:やはり、代理店としてはグロスで見てもらってCPI達成してるなら、こちらの目標は達成してるって認識ですし、そうゆう契約になっていますからね。これはとくに大手代理店は顕著です。

森下:(こちらが深掘ろうとしてないのにスラスラ出てくる。。。。)

画像2

坂井さん:広告代理店は体育会の世界なので、上司のパワーが強いです。これは商談していて感じます。で、上司が売上って指標でやってきて、会社もデジタル広告市場の拡大とともに成長してきたので成功体験もあり、これが正解と思っている。だから、広告代理店の体質自体を変えないといけないと思ってます。

森下:おっしゃるとおり、その体質は感じます。ただ、ボトルネックがもしその体質だけなのであれば、その体質をトップダウンで直せる代理店が現れたら市況は変わるかも知れないですね。市場の成熟化やそれに伴う広告不正の話題性など様々な要因で、広告主側も売上を伸ばすというよりも実利に結びつく広告運用の視点がより重視されてきつつあるのではと感じております。そういった意味で、モバイル黎明期に作られた低CPIボリューム主義みたいな固定観念は崩れつつあるのではと思っております。ちなみに広告不正を防ぐために代理店としてどんな取り組みをしてますか?

坂井さん:代理店としては、各ネットワークとハードKPIを握るってことだと思います。自分がローデータを見て「これはフラウドだ」と思うデータを除外出来ないというネットワークはもう不正って言ってるようなもんです。これで信用できるところ、出来ないところを選んでます。

森下:素晴らしいフィルターだと思います。私も広告不正の具体的例とその解決方法で行ったことは、配信面やsiteID非開示の媒体を全ストップでした。少し抽象度高い質問なのですが、このようなトレンドの中で代理店側がすべきことって何なんでしょうか?

坂井さん:最近思っているのは、代理店feeは運用する広告出稿量に応じて定額だったり、テーブル型にできないのかなと考えています。これ冒頭でも森下さんのおっしゃっていただいてますが、ナイルって看板は抜きにしてです。

画像3

森下:非常に興味深いです。具体的には?

坂井さん:現状の代理店fee一律20%というビジネスってビジネスモデル的に売上を上げる=広告消化を沢山すれば手数料が沢山もらえるビジネスモデルなので、そりゃ広告予算を最大化する力学が働きます。3,000万円/月の広告費を運用しようが1億円/月の広告運用をしようが固定費=人月費用って正比例するわけではないですよね。なので、差分の7,000万円の手数料分は代理店からしてみると利益率が高い。なので、「最低限これだけの広告出稿費を頂けたらPJT人月費用を控除しても黒字にならってクオリティ担保しながらまわせるよ」というが固定費ビジネスができれば、利害は広告主と一致するはず。なので、代理店側がコンサバに人月費用を計算した上で、固定で頂戴するfeeをお互い納得して設定できるのであれば、森下さんのおっしゃるビジネスモデルの一致が叶うのかなと。もし、それで利益がでないのであればテーブル制を敷くかかと思います。そうやって、クライアントのビジネスモデルに極力寄り添いながら、お互いが利益をだせる状態にできればいいのではと考えております。

森下:テーブルって何に対するテーブルをイメージしてますか?

坂井さん:広告出稿費用に対するテーブルです。3,000万円/月の広告費を運用しようが1億円/月の広告運用をしようが固定費=人月費用ってそんなに変わらないと言いましたが、全く同じではない。キャンペーンの作成であったり、フラウドの排除やローデータを見る分量は増える。

森下:つまり各テーブルの差分額は上記のような追加工数を担保するための労働コストだと言うことですね。

坂井さん:そうです。あとはぶっちゃけ、マージンを削られてもまぁまぁ利益はでるんですよ。実は。

森下:そうなんですか!?

坂井さん:はい。広告代理店の決算書見ればわかるはずです。あとは負荷がかかるのは圧倒的に初期設定なんです。慣れる=運用フェーズに入ると初期フェーズと比較して運用工数は減ってくる。そうなると実稼働が減り、ものすごい高い利益率となっているという例も聞きます。

森下:たしかに。。。。激アツですね。。。。

坂井さん:なので、そのあたりの代理店側のフェーズごとの利益のとりやすさとかも加味した上でテーブルの設計を行えるってお互いWin-Winなスキーム作れればいいなと思ったりします。

森下:ありがとうございます。とても示唆に富んだインタビューになって楽しかったです。このような聡明な方がいらっしゃる組織で働ける人たちは素晴らしい経験をしてると思います!引き続き、今後ともよろしくお願いします!

坂井さん:はい、こちらこそ広告主の本音が聞けて学びになりました。

・まとめ

個人的に坂井さんのおっしゃっている広告主のビジネスモデルに寄り添う代理店のビジネスモデル変更は小規模~中規模の代理店であればチャレンジできるのではと感じました。大手代理店は社内政治やビジネスモデル変更時のリスクを回避したいため踏み出せないかなと思います。

このような完全に棚上げはできないものの、自分の利害を出来るだけ棚上げして本音に迫るというギリギリバランスとれた記事を書いてければと思います。これを通じて新たな発見があれば幸いです。第二回も近日公開予定です。

また、このようなテーマ取り上げてほしい等の要望も随時受けておりますので是非コメント頂けますと幸いです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?