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Withコロナ時代に2021年新卒の方が心がけること(前編)

・想定する読者
2020新卒の方及び新卒社員と関わる指導員の方々
・本記事を読むメリット
2020新卒を取り巻くマクロ環境を理解できます。また、新卒社員が会社から何を期待されているのか理解できます。最後に新卒社員が身につけるべき基本姿勢を学べます。

そろそろ2020年新卒の入社時期ですね。2013新卒で私は東証の某IT企業に入社したのですが2013新卒と言えば2008年9月15日に端を発したリーマンショックの時期です。私も就職氷河期だったことをよく覚えております。恐らく、現在29歳~31歳くらいの方々がこの就職氷河期の中、新卒入社して現在に至るのではないでしょうか?

そして、2020年新卒の方は新型コロナウイルスに端を発する未曾有の不況の中、新卒として入社をすることと思います。世界の国々で都市封鎖を行うことで経済活動が著しく停滞することで、対象の都市の経済麻痺が起こるのと同時にボーダレス経済である世の中は各国が相互依存の関係にあるため、その経済麻痺は世界にすぐ伝播します。結果的に業態としては外食・小売・エンタメ・観光関連の企業の業績は軒並み悪化しており、日経平均を見ても悪化は顕著です。それ以外にも中国を中心とした国々に部品供給依存が大きい自動車産業、半導体などの精密機器、アパレル、耐久消費財などもタイムラグがあるだけで軒並みアウト。そう言った意味で鴻海精密工業に部品の多くを委託しているAppleも大ダメージを受けるでしょう。また、前回記載した記事のように、個人経営のお店や中小企業は資金繰りが厳しくなり倒産が増えてくることと思います。私の友人が経営する企業も既に何社か手仕舞いの話を進めていると聞いております。

また、上記のような業態の大手企業でも内定取り消しの動きが出てきております。このような状態の中で2020新卒として入社する方々が心がけることをテーマにお話したいと思います。これは私も2013新卒として似た境遇で入社したため、2020新卒の方と同じ目線に立ってお話が出来ること。そして、ある程度経営層にも近くなり、この新型コロナウイルスに端を発する不況時に経営層が何を考えてビジネスをしているか把握できるようになりました。ですので、採用側が2020新卒の方々に何を期待しているのか?を私なりにまとめてアウトプットすることでキャリアスタートの1歩を上手く踏み出すきっかけになればと思います。なお、私は人事経験は全くございませんので、あしからず!w

現状分析

本noteはマーケターの方向けに様々な記事を書いております。ですので、マーケターたる者まずは四の五の言わずに現状分析を行います。立ち返れる原理原則を頭の中に叩き込んでおくことがマーケターには求められます。

上記の通り、ざっくりマクロ経済のお話は記載しました。言葉選ばずに言うと、新型コロナウイルスのワクチンが早期に開発でもされない限り、世界各国の経済はダウントレンドが続くと想定されます。このあたりをマクロ経済とひとくくりにするのではなく、PEST分析という切り口で何が起きているのかを見てみるのも良いかも知れません。PEST分析とはPolitics/Political(政治面)、Economy/Economical(経済面)、Society/Social/Cultural(社会/文化/ライフスタイル面)、Technology/Technological(技術面)のイニシャルをとった分析のことで、マクロ環境分析をおこなうマーケティングフレームワークです。

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参照元 https://www.sbbit.jp/article/cont1/29171


PEST分析

上記フレームワークに当てはめてマクロ環境を分析すると、

【Society】新型コロナウイルスショックが無くとも、日本の人口動態は合計特殊出生率が上がることも無く、移民も中途半端は入管法のせいで増えず、結果的に生産年齢人口が増える見込みもほぼゼロ。人口動態だけは平均寿命の非連続な変化やドラスティックな社会変化でも無い限り予言できます。ですので、経済観点で申し上げますと先進国中、最悪な人口動態であることは間違いないです。

【Economy】こちらに関しても詳細な分析をせずとも、前述の通り、新型コロナウイルスの影響で実体経済に悪影響が出ているのは自明です。

【Politics】上記の結果として、各国では首相や大統領、各州知事の権限のもとロックダウン等の政治的な政策が行われており、その結果グローバルにつながった経済が分断され、相互依存している経済を中心とした様々な機能が不全に陥っております。

【Technology】その中でもテクノロジーの力を駆使してこの難局を乗り越える企業も出てきております。身近なところでいうとZoomがあります。テレワークや遠隔での学業支援という意味合いで経済・教育などの多方面で貢献が著しいです。ですので以下の通り、この局面でも右肩上がりの株価推移をしております。新型コロナウイルスショックである直近1ヶ月でも株価は107ドル→145ドルと急進しております。同時期のダウ平均やナスダック平均と比べると一目瞭然。

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全て2020/03/26の指数や株価

ですので、2020年新卒の方はこのようなマクロ環境の中、新卒社員として入社することの意味合いを考える必要があります。何故、新卒入社する企業が私を採用したのか?その意味や期待値を考える必要があるということです。

ここからは以前noteにも記載したコチラの記事の通り、アカウンティングやファイナンス観点で現在の自分の価値を定量化してみます。

新卒社員のPLを考える

まず、そもそも自身がもらえる給与どう決まるかというと業界にもよりますがざっくりと自分が獲得してきた粗利益の20%程度が給与として貰えます。ですので、大卒新卒の平均給与が額面で21万円/月ですので、21万円÷20%=105万円の粗利益を生めばいいです。粗利益率20%のビジネスであれば105万円÷20%=525万円の売上を作れば良いことになります。ここまでが前提。

次に、新卒1人を採用するための採用コストが何円かということを考えます。企業も新卒採用するにあたってコストを投下しているわけです。説明は割愛しますが一人あたり53.4万円だそうです。

参照 https://jinji-zine.jp/recruitment-unit-cost

ですので、新卒社員の方々はまずは-53.4万円の負債を背負った状態で入社をするわけです。さらに研修期間が半年や1年程度ある企業も多分にあることと思います。その際に投下される研修費用や給与など全てコストです。一方、新卒社員が売上や利益を研修期間内に上げることは基本的に難しいと思います。研修費用は人数で割れば微々たるものだとして割愛しますが、給与を売上や利益を生まない新入社員に払い続けるということは、新卒社員としては負債が貯まる一方です。大卒の新卒の平均年収は約250万円です。本来は管理会計上の人件費で計算すべきですが、一旦半年分の給与が125万円、1年分の給与が250万円だとすると、研修期間が半年の場合は負債が180万円ほど、研修期間が1年の場合は負債が300万円ほどになるということです。

参照https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/19/01.html

つまり、以下が新卒社員が1年間の研修を経て現場配属された時点でのPLです。

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上記の営業損失✕2020年新卒の人数分の営業損失を生んでいるわけです。それをこの新型コロナウイルスで経済の先行き不透明な状態でも内定取り消しをせずに入社を受け入れる企業が何を期待しているか真剣に考える必要があることが見えてくるのではないでしょうか。

採用側のPLを考える

いままでが3C分析でいう自社(Company)の視点を分析しました。次に競合(Competitor)の視点で物事を考えます。競合というと語弊がありますが、新卒を採用した人事の視点に経ちます。人事の責任は明確でして、人事が採用した2020年新卒のPLがある地点で求めるリターン以上の黒字を叩き出せばいいのです。ですので、人事側で考えているPLとそれに紐づく投資回収シミュレーションを計算する必要があります。

そこで以下の厚労省のデータを参照します。大卒新卒社員の3年以内離職率は32%ですので、2020新卒で同期入社した3人に1人は3年以内に辞めるということです。

参照 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00002.html

ですので、人事側もそれを織り込んで投資回収を測っているので、もっともネガティブにするのであれば、2020新卒で同期入社した3人に1人が1年間の研修を終えて直ぐ=負債が最大のタイミングで辞めるということです。このワーストケースを織り込むのであれば、それ以降残る社員にその負債を背負って貰えばいいです。ですので、先程の作った新卒社員が1年間の研修を経て現場配属された時点でのPLは以下のようにもっと赤字になります。

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つまり、現場配属時に辞めずに残った新卒1人当たり460万円ほどの負債を背負った状態でスタートします。次に投資回収です。つまり、いつまでに研修後に現場配属された2020新卒に投資した費用460万円以上の利益を生み出すかです。この計算を人事がどうやっているかを考えます。まず、いつまでにという部分ですが、ここはキメで石の上にも3年という諺があるように3年で転職をしてしまうシナリオを想定します(実際もっと早そう)。つまり、現場配属後~転職まで2年で投資回収を行うということです。この先ネガティブシナリオ、ノーマルシナリオ、ポジティブシナリオを考えます。


ネガティブシナリオ

現場配属後~転職まで2年でちょうど投資回収できたケースです。粗利益率20%のビジネスで月給は3年間据え置き21万円の前提です。(途中の推移を省きました)

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ここで「え?赤黒トントンだったらノーマルケースではないのか?」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、それは間違いです。一般的に社員数の5%の新卒社員を採用することが相場と言われております。社員数1,000人の会社であれば50人です。50人✕300万円=1.5億円の投資なわけです。投資ということはリターンが必要です。リターンが無い投資はステークホルダーに説明が付きません。どの程度の利率を求めるかは各社それぞれですが、年利0%はでは話になりません。年利の計算の基本的な考え方はコチラの記事の会社から期待されているリターンレートを勝手に設定しようを参照ください。また、これに加えて1点補足があります。それは今ある1万円と3年後の1万円どちらの方が価値があるか?ということです。答えは明らかに現在の1万円です。なぜならば、3年後に1万円を貰えるのであれば、今もらってしまって何かしらの投資を行うことで1万円の原資を増やすことが出来るからです。もし年利3%が複利ではたらけば、現在の1万円は3年後の1.09万円です(計算式は1万円✕1.03✕1.03✕1.03)。ですので、仮に社員数1,000人の会社で50人の2020年新卒を採用したとして1年目は研修にあてるとすると、50人✕300万円=1.5億円の初期投資を残り2年で回収しなければなりません。また、仮にこの1.5億円を他の投資、例えば設備投資や新しいアプリの投資なんでもいいです。それにあてると見込まれるリターンが年利3%以上であれば、それと同等以上のリターンを出す必要があります。仮に年利3%が複利で2年働くとすれば1.5億円✕1.03✕1.03=1.62億円なので2年で1,200万円の営業利益を生む必要があります。その観点でいうと上図の2年間で赤黒トントンだと投資としてはまるで意味がないということです。このように何かしらの投資によって未来生み出されるキャッシュフローの現在価値に割り戻した総和をNPV(正味現在価値)といいます。今回の例でのNPVは1,200万円です。つまり、お金の価値に時間軸を組み込むことです。


ノーマルシナリオ

自社のWACCをリターンレートとして適応するケース。コチラのnoteで記載したとおりWACCとはWeighted Average Cost of Capitalの略称で銀行などの金融機関からの借入や融資にかかるコストと株式調達にかかるコストを加重平均したもの。もっと簡単に言うと、単位金額を調達するために必要なコストを表します。銀行から金利1%でお金借りてるなら、本業でやっているビジネスの利回りは最低でも1%は越えようよという見方です。セグメント別の事業ごとにWACCを計算している企業もあれば会社全体のWACCのみ計算している企業もあると思うので、気になる方は財務経理の担当に「うちのWACCって何%ですか」と聞いてみても良いかもです。


ポジティブシナリオ

その組織全員の給与を回収できるハイパフォーマーが2%出現する。つまり2020年新卒50人のうち1人こんなハイパフォーマーが出てくるということです。仮にハイパフォーマーが10人の部署にいたとするとして、10人全員の管理会計上の人件費をリクープする売上・利益を1人で持ってくるという前提に立ちます。それ以外の新卒社員は2年間リターンレート3%の並な感じだったとしましょう。そうすると1人とそれ以外の投資回収結果がでます。

2年間リターンレート3%の投資回収

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これが50人中、研修が終了するまで生き残った50✕(2/3)=33人が生み出す営業利益だとすると、33人✕278,981円=9,206,373円の営業利益を33人で生み出します。

スーパーマン1人の投資回収

10人の管理会計上の人件費を80万円だとして、10人✕80万円=800万円の粗利益を一人で叩き出すとすると、以下の2年間での投資回収になります。

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この1人のハイパフォーマーに研修など含めて458万円の投資をした結果、1.8億円の利益でお返し頂いたことになります。550%のリターン!今日の1万円が2年後には550万円になっているような投資商材ですw でも、そんな敏腕営業マンって新卒の中に誰か1人いませんか(私が新卒の頃は毛色が違えどいましたw)?そうなんです。こういうハイパフォーマー1人いることで2020新卒で投資した採用費1.5億円なんて余裕で回収します。ハイパフォーマー1人と他33人が生み出した利益は、

182,379,000円+9,206,373円=191,585,373円

1.5億円の投資が3年後(研修後2年)で1.9億円になりました。投資対効果としてはそこそこ悪くないのではないでしょうか。また、ハイパフォーマーが1人ではなくもし2人生まれていたらよりポジティブな結果になっていたでしょう。このように人事側の各シナリオ別にどんなシミュレーションをしているか思いを馳せることは重要です。つまり、そのハイパフォーマー1人になるためにはどうすれば良いかということを常に考えて仕事をすれば良いわけです。

新卒に求められる仕事への取り組み姿勢

ここまで、PEST分析を通じてマクロ環境は日本・世界共に最悪な状態であること。3C分析を通じて、新卒社員はよっぽどな高スキルが無い限りはコストでしかなく、研修終了後に現場配属されるタイミングでは負債を背負った状態でスタートするということ。また、人事側の視点からすると投資回収を様々なプランで想定しており、より大きなリターンを得られるように研修等を組み込んでバックアップしてくれるということを理解しました。

そこから具体的に新卒社員が企業からどのような期待値で見られているか、どのような振る舞いをすべきかを記載していければと思います。

誰しもがハイパフォーマーを目指さなければならない

まず、結論から申し上げると、企業側は上述のスーパーマンのような新卒に全員なってほしいと思っております。そうなれば、採用した側は多大なリターンを得られるからです。しかし、新卒社員には新卒社員の価値観や幸せの相場感があるので、全員が全員そんなスーパーマンになりたいと思わないだろうし、人生そんなに努力もせず、そこそこで終わりたいと思っている人もいるのではないでしょうか。しかし、PEST分析でも触れたとおり日本のマクロ環境がそれを許してくれないと考えております。言い出せばきりがないですが4つデータを記載しておきます。


①名目賃金推移(世界比較)。アメリカ、ヨーロッパが伸びる中、日本はむしろ減少。ここには記載が無いですが、中国も右肩上がりの成長です。

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参照 https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf

②現金給与総額の推移。右肩下がり。

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参照 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/seirousi/dai2/siryo3.pdf

③現金給与総額の推移(世界比較)。なんと現金給与総額が下がっている国は図中日本のみ!失われた20年(30年?)を定量化すると恐ろしいです。

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参照 https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf

④相対的貧困率(簡単に言うと、普通と思われている生活ができない人たちの割合のこと)。日本は相対的貧困率でワースト11位(15.7%)にランクイン。

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参照 https://data.oecd.org/inequality/poverty-rate.htm

以上のことから日本において、人生そんなに努力もせず、そこそこで終わりたいと思って仕事をしていると、世界と相対比較した時に上記のような賃金の減少。それに伴う相対的貧困率の上昇により拍車が掛かります。人間誰しも貧困は嫌だと思いますが、上記のような「人生そこそこ」の生活をするためにはなんとなく仕事をしているとむしろ貧困に拍車がかかります。ですので、どうせ1日の1/3の時間を費やす仕事なんだから楽しく働き、貢献した利益の対価として給与を頂戴して、その給与で自分や家族の幸せを実現した方がよいのではないでしょうか。


まとめ

2020新卒が入社するこの4月が各企業にとってどれだけつらい状態かPEST分析を通じて理解しました。その後、新卒社員が入社して配属されるまでの負債総額をざっくり算出すると同時に企業をそれをどう回収するかを複数のシナリオを通じて学びました。そして、最後に誰しもがハイパフォーマーを目指し仕事に取り組まなかればならない理由を統計データを通じて記載しました。

後編はハイパフォーマーを目指すためのファーストステップである基本的な仕事への姿勢についてお話しようと思います。


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