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マーケターに必要な分析思考(後編)

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前編の記事はコチラから復習ください。改めまして読者は以下を想定しております。

・想定する読者
これからアプリマーケターを目指す方。或いは、アプリマーケティングに興味のある他職責の方
・本記事を読むメリット
アプリマーケターが分析する際にどのような頭の使い方をするか学べます

後編は以下の通りです。

④比較して考える

前回学んだことは、アプリが達成したい目的に対して、変数をピラミッドストラクチャーに分解した後に大きさで考える。どこにリソースを集中投下すべきか分析を行う。その後にアプリマーケティングにおいて意味の有りそうな切り口で分けて考えることで、どこに改善の余地があるか追跡することを学びました。

分けて考えると同じくらい重要な分析方法に比較して考えるがあります。

恋愛にしろ進学にしろ就職にしろ、人生における「意思決定」の殆どは何か複数ある選択肢を比較して選択するという行為だったのではないでしょうか。

では、アプリマーケティングにおいて比較して選択するとはどういうことだなのでしょうか。それは競合アプリと売上に関わる指標を出来るだけ定量的に比較するということです。具体的例を挙げます。

仮にあなたが既にリリースされているアクションRPGゲームCの責任者だったとします。その場合やるべきことはまず、以下の雛にアクションRPGゲームCと競合他社タイトルAとBのKPIをぶっこんでみることです。※雛はあくまで一例です。

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そこで自社タイトルが競合他社タイトルと比較してどのKPIの数値が劣っているのかを比較します。比較した上で何故、そのKPIにおいて自社が劣っているのか理由を分析します。UXが原因かも知れませんし、マーケティングが原因かも知れません。また、その市場におけるIPの相対的な好意度に差があるかも知れません。いずれにせよ、競合タイトルと比較することで何が相対的に勝っているのか、劣っているのかが可視化できます。

次に選択のための分析です。先程、「比較と選択」はワンパッケージだとお伝えしました。つまり、比較して浮かび上がってきた問題点のどれをテコ入れするか選択しなければなりません。選択するとは言い換えると優先度をつけるということです。ですので、以下のピラミッドストラクチャーの最上位にある利益に対して、最も貢献するであろう対象を絞る必要があります。

ストラクチャー

ただし、そのテコ入れ対象を選ぶに当たって注意すべき点があります。それは、テコ入れしたときの利益への貢献度がどこまで伸ばせそうかを推測するということです。つまり感度分析です。しかし、どこまで伸ばせそうかを正確に予測することは難しいのではないでしょうか?そこで先程作った以下の表に戻ります。

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例えば、対象の変数をどこまで伸ばせそうかを競合タイトルの最大値で仮設定するというアイデアです。例を挙げます。

自社のCアプリの1dRRはAアプリのそれと比較して7pts低かった。それをCアプリ同様の水準に上昇させることが出来たら、他のどの変数を改善するよりも利益貢献が大きいとします。その場合、アプローチのアイデアとしてAアプリで行っている1dRRに対するアプリーチを要素分解します。そして自社のそれと比較して、どの要素が欠損しているからか双方のアプリをプレイしながら現象を追跡して仮説を立てるということです。これを行うことで選択の精度が上がります。そのためには比較して考えるという当たり前のスキルが必要です。

⑤時系列で考える

上記の「比較して考える」でお伝えした際にアプリA~Cの現時点でのKPIにしか触れませんでした。しかし、アプリは日々運用されているため、過去からの運用の積み重ねで現在があるわけです。ですので、現在のKPIを正しく理解したいのであれば、現在の状況だけでなく、過去と現在の関連に目を向ける必要があります。わっかりやすい話でいうと「対前年度比」とか「Q on Q」とかがこれに該当します。ですので、今まで用いてきた競合比較を時系列でトラッキング出来るデータが必要です。

ここでポイントなのが競合アプリA、Bの過去から現在までの運営をなんとなく「こんなことやってきたのでは」で済ませず、しつこくどのような運用を行ってきたのか、時系列で現象を追跡する必要があります。

AppAnnieSpicemartなどのツールを使えば絶対値が正しいかはさておき、時系列での変化を定量的(割合)に捉えることは可能です。これで過去から現在への時系列でのトラッキングは出来ます。改善点の優先度を付けた上で然るべき改善を行えば、想定されたKPIのリフトが発生して利益が上がる或いは減衰している売上に歯止めを掛けられる等、状況は改善するかと思います。しかし、場合によっては改善しないどころか劇的に利益を落とすこともあります。それが次のビジネスモデルで考えるです。

⑥ビジネスモデルで考える

前章で競合他社の改善プロセスから学び、改善を行うことで収益改善するというプロセスを学びました。これらのアプローチは言い換えると戦後の日本がとった「アメリカを追い抜け、追い越せ」というアプローチと同じです。つまり、答えのあるものに対して、いかに最短で回答を出すかという文部科学省が大好きなジャンルのアプローチです。センター試験で求められる「いかに最短で決められた答えに到達するか」と同じアプローチです。

アプリマーケティングにおいてはこのアプローチすらまともにできていないタイトルが多いので、このアプローチをしっかり行えれば一定割合勝てますが、そうでない場合もあります。それがビジネスモデルを根本から変えられる場合です。もっとも文部科学省の教育を受けた日本人が最も不得意な領域です。具体例を挙げます。ソーシャルゲーム市場では

・IPという別市場で培ったブランド力を活かして今までソーシャルゲームをやらなかったユーザーを巻き込んだ

・中国韓国企業のハイクオリティゲームの日本進出

がそれに該当するのではと思います。前者はIPを搭載したアプリをソーシャルゲーム市場に投入したことで先行していたゲームと似たゲームシステムだけれどもIPの持っているブランド力。言い換えると、ユーザーを掴んで離さない吸着力を活用することで、多くの先行していたゲームユーザーがリプレイスされました。それによって収益は非連続に低下した企業が何社もあったことは記憶に新しいと思います。

後者に関しては、日本で開発したら100人月以上運営に掛かるようなハイクオリティなオープンワールドMMORPG等が良い例です。中国韓国企業はこれらのハイクオリティなゲームを人件費や労働環境をレバレッジして日本市場に投入しました。この戦い方は日系企業の場合、日本の労働単価や労働者スキルではほぼ戦えません。

上記2つの例に共通することは、戦わずして勝つビジネスモデルを構築したということです。ビジネスモデルとは戦略そのものであって、戦略とは言葉の通り「戦いを略す=戦わずして勝つ」という意味です。最近ではIPを使ったアプリの投入やハイクオリティなアプリを単に投入するだけでヒットはでなくなりました。

このことから分かることは、その市場のルールを根本から変えるビジネスモデルの地殻変動を起こすトリガーは移り変わるということです。ですので、今我々の置かれている市場環境に置いて、どのようなビジネスモデルの変更が自社にとって最良の一手かを考え続ける必要があります。

まとめ

他に話したいことは山程ありますが一旦、前編・後編の2回に分けてお話しましたアプリマーケターに必要な分析思考終わりです。分析ということもあって少々抽象的な話になってしまったところは申し訳ございません。前編・後編と読んでいただき疑問・質問などある方いらっしゃいましたら是非、コメントください。なお、このあたり真剣に勉強したい方は以下の2冊がstrongly recommendです。

意思決定のための「分析の技術」

色々分析に関する書籍を読みましたが、私はコチラが最もしっくりきました。分析の枠組みを体系的に学べますし、本質的な内容が多いので汎用性が高い内容になっております。ですので、様々な業務で応用が効きます。文章表現が非常にとっつきやすいので、マーケ初心者にもオススメです。

確率思考の戦略論

対象市場におけるIPの持つ相対的な好意度(プレファレンス)について深く議論されています。全くと言っていいほどアプリマーケティングでは好意度の議論はされませんが、私はこの議論は非常に重要だと考えております。ここの議論を行わないからアプリマーケティングに失敗する企業が多いのではないかと考えております。理系の方や統計処理等深く学びたい方にオススメです。著者の森岡さんですが、私とは業種が全く違いますがあるべきマーケター像で意識している方の一人です(追いつくの途方も無いです涙)。


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