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会社生活というコト ー不適切な昭和時代から令和までー


はじめに

 今年、サラリーマンは卒業させていただきましたが、40年に渡って会社組織に属して、給料を頂戴してきた経験から、仕事に対するスタンス、心掛けていたことを書かせて戴きます。現在現役の皆様に、少しでも参考になればと期待しています。

不適切な昭和時代

 新入社員の時代は、昭和の真っただ中でしたので、正に不適切にものの時代でした。不適切の端的な例から述べさせていただきますと、現在と比べると喫煙者の割合が非常に多く、業務机に灰皿が置かれており、喫煙者の方々は、業務中にスパスパと煙草を吸っていらっしゃいました。当時は、パソコンの普及率も低く、机の上は高く書類が積み上げられており、吸い殻一杯の灰皿と隣接していましたから、健康と安全が脅かされている状況下での新入社員の始まりでした。
 まずは、配属面接の場面での生き残りのお話です。当時、大手電機メーカへ就職し、1,000人を超える新入社員が居た次第であり、5人程度の複数人によるトップマネジメントとの面談が実施されました。同時に面談に参加したのは、有名大学の博士や修士の方々で、口を合わせて「研究所希望」と表明されていました。そこで私は、製品開発や技術の実用化に貢献したいと言った希望を述べさせていただいたところ、幸運にもデバイス開発本部に配属され、研究に極めて近い開発業務の部署に配属されて、楽しい会社生活をスタート出来ました。自慢では無く、何を申し上げたいかと申しますと、企業で重要なのは、技術の実用化とそれに伴う製品リリースですから、この業務で、希望とマッチ出来れば、最高ではないかということです。
 当時、従事した技術の実用化では、黎明期でしたので、若輩の私でも結構自由に進めさせていただきましたし、学会への発表や、海外企業への派遣等、貴重な経験を積ませていただきました。一方、技術の実用化の場面では、残業時間で月100時間を超えることもざらで、独身寮に帰れない時には、事務所で一夜を過ごしたり、近くのサウナに泊まったりも一回や2回ではありませんでした。勤務管理はタイムカードによる打刻ですので、会社に居ても勤務実績をカウントしないことは、やり放題でした。やり甲斐を感じられる業務があれば、幾らでも進めることが出来ましたし、業務が立て込んでいた場合には、終わるまで逃げられない状況でした。現在のオフィスでは、セキュリティが完全に整備されており、在所しているデータをごまかし様がないでしょうから、健全な勤務管理が必須となるでしょう。
 当時は、組織単位の飲み会によるコミュニケーション醸成は必須でした。年末年始、年度末、新入社員配属等の定期的な開催は必須でした。若手社員は、飲み会の幹事を行うことが必然で、次期新人が入るまで、少なくとも1年以上はこの任から抜けることは出来ませんでした。また、この幹事役の腕前が、社会人としての資質を印象付けるものでもあり、悪く言うと「使える」or「使えない」のチェックであったことは否めません。また、その飲み会では、多くの場合、飲め飲め攻勢や上司へのお酌は恒例でした。飲みが進むと、仕事への姿勢や成果に対して、叱咤激励があることも常で、上司の叱責から泣かされる場面もありました。

新入社員

 昔の話はさて置き、今でも新入社員は、入社の段階で、やりたい事、即ち、担当業に関してある程度の希望があり、抱負を持って、新しい職場に着任されると思います。しかしながら、実際の業務と、この思いには、大なり小なりギャップを感じることでしょう。多くの場合、このギャップを抱えてのスタートであると思います。また、経験の浅い入社1年程度は、多少の経験、知識のある分野の業務に配属されたとしても、与えられる業務は、その意味も良く分からない簡単な仕事であったり、単純な作業だったりすると思います。マネジメント的な言い方をしますと、「具体的な指示」に伴う業務で、先輩の業務の一部を担う程度の仕事であることから、仕事の意味を疑ってしまうことも少なくないでしょう。最悪、パシリ的な仕事であることも多いでしょう。唯、マネジメントを経験した立場から述べさせていただきますと、これはショウガナイことなのです。なぜなら、新人の能力、気質が分からないことから、上司、先輩も関係性を手探りでの状態でのスタートなのです。新人の社員に申し上げたいのは、意に沿わないお仕事でも、ご本人の創意工夫を生かしてこれにあたり、本人の理解で結構ですが、高いパフォーマンスを目指し、これに当たるという姿勢が重要なのです。上司、先輩は、そのパフォーマンス、業務に対する姿勢を見ながら、新人の気質や能力を計っていくわけです。意に沿わない業務だったり、能力を活かせない単純な仕事だったりでも、持てる能力を発揮して、創意を工夫して取り組むことがやる気を起こすためにも必要であると思います。
 私にも何人かの新入社員の育成を担当した経験がありますが、十人十色であることは間違いがありません。上司としてもある程度経験を積んで来ると、それぞれの色に合わせての対応の仕方の引き出しが増えてきますので、もしあなたが新入社員の方でしたら、下手な指導員もいることを理解していただいた方が宜しいかと思います。私が担当させて戴いた優秀な新入社員の一人が、入社後一年を待たずに辞めてしまったこともあります。当人に担当して貰った業務は、技術的には重要な課題でしたが、その技術の評価一端である単純評価の繰り返し業務でした。数多くのサンプルを準備して、同じ評価を繰り返して行いデータ取りを行うものでした。この様なデータ取りは、技術開発には必須ですが、これを単純作業と感じたのか、退社の意思を固めてしまった様です。実は、この単純作業で積み上げられたデータから次の展開が見えて来るハズでしたが、そこまで我慢出来なかった様です。近年、若者の間では、「タムパ」を重視している様であり、同じケースが増えているのでは無いかと危惧されます。
 多くのケースで、新入社員時代は、修行という風に理解して、与えられた仕事に対して真摯に向き合い、これを遂行する中で、会社の経営方針、自部署の役割、自分がなすべきことを理解していくことであろうと考えています。その際に、決してご自身の意思を殺すのではなく、向き合いながら努力することが重要です。見えてきた、矛盾、課題及び改善点は、関係者に説明すべきで、周りの上司、先輩、牽いては経営層が、その新鮮な意見を求めていることが多いと思います。私の知り合いも、若いころから意見を具申することを躊躇せずに言い続けてくることにより、最終的には役員の地位に上り詰めた人を知っています。但し、文句ではダメです。

担当者という役割

 通常の会社組織では、ピラミッド型の組織体制を形成していると思います。社長一名、経営層数名に本部長、部長、課長、主任と人数が増えて、それを支える多くの担当者で形成されていると思います。会社の方針は、社長以下の経営層により決定され、それ以下で、設定された方針を実現するための戦略を策定して、部長以下の組織で実行して行かれていると思います。担当者は、決められた方針を達成するために策定された戦略に則り、実際に行動するわけで、一人のアクティビティは小さいのですが、これの積み上げが方針達成に結び付く分けで、一人のアクティビティが非常に重要であると言うことです。一方、全社の方針と担当一人の目標の間には、大きなギャップがあることから、やる気を醸成することは簡単ではないことは理解しています。労働者である担当者のやる気の根源は、究極的には、給料やボーナスである会社から受ける報酬であるので、個別に設定された目標の達成度を報酬に反映させることで、経営層と担当者の間を埋めていっていると思います。会社に所属する社員の契約上の定義から来る要求と奉仕の概念では、とてもドライな捉え方ですが、この説明で完結されます。一方、社会生活は、無数の他者と出会いで構成され、その中で、幸福と感じるために必要な要件は、自身の生命の安全、家族の幸福、そして他者への貢献であると言えるでしょう。まず、自身の生命の安全のために、会社に貢献してその対価として報酬を得ることを論じました。食事や睡眠、健康な体を維持することが必要最低限の要件ですが、現在社会では、これを維持向上するために、報酬を得ていると定義できると思います。その意味で、与えられた業務に対して真摯に向き合う必要性を述べました。一方、家族の幸福も、人間が社会的な存在として生きて行く上で重要な要素です。家族とは、血縁関係だけでなく、深い絆で結ばれた人々を指します。彼らとの関係性を大切にし、互いの幸福を願い、支え合うことで、人間は社会の一員としての役割を果たし、幸福を感じることができます。それも、会社への貢献により得られた報酬があってのことであると考えます。次に、他者への貢献は、人間が自己を超えて大きな幸福を感じるための要件です。これは、自分のスキルや知識を活かして社会に貢献することから始まります。他者への貢献を通じて、人間は自己の存在価値を認識し、幸福を感じることができます。これが、会社、大きな意味では社会の一員として、報酬以外に、仕事を進めている上での動機の大きな部分でしょう。必要な要件は、自身の努力と良好な上司、先輩との関係であると思います。上司、先輩の資質は、社会通念に照らし合わせて問題の無いことが前提ですが、担当者としての最善の努力は、常に求められます。

中間管理職としての仕事

 私の経験からも、部下を数人持った中間管理職であった時代が最も仕事を楽しめた時代であったかもしれません。人や会社によりますが、20代後半から30代半ばがこの時期に当たると思います。中間管理職では、予算執行責任は薄く、実務を行いながら、部下の指導を行う印象です。組織や業務によると思いますが、部下の仕事も含め成果としてアピールできる立場であり、最もコスパの良い業務遂行が可能な時期であったような気がします。この職務では、数年に渡って担当業務の経験を積んできているので、業務遂行能力は高く、その分野での、少なくとも会社内でのエキスパートとなっており、場合によっては業界のリーダーに躍り出ている可能性もあります。新入社員は、まずは、この担当分野でのエキスパートを目指すべきでしょう。もし、業界のリーダーになることが出来ていれば、転職による飛躍も思うままかもしれません。さて、この中間管理職に求められる資質は、専門分野での知識・経験に加え、人材育成能力、コミュニケーション能力、課題解決能力、情報収集・分析能力が必要と思います。人材育成能力は、当然、部下のサポートやモチベーション醸成の能力で、適切な指導や業務配分を通じて部下の成長を促します。コミュニケーション能力は、 正しく、上司と部下の繋ぎ役として、円滑なコミュニケーションを築くことが求められます。昨今では、リモートワークの増加に伴い、積極的にコミュニケーションの場を作り、部下のフォローや指導を行う様な能力も必要となっているでしょう。課題解決能力は、日々発生する課題に対し、豊富な経験に基づいた視点から、根本的な解決策を見つける能力です。多数の課題が同時に生じた場合、優先順位を見極めることも重要です。また、情報収集・分析能力とは、経営の指針や計画に沿って業務を遂行するために、関連情報を収集し分析することが求められます。市場、技術の動向や他企業の事例を調査して、担当業務に生かしていく戦術を考えることです。
 以上のように、中間管理職として求められる能力は、企業人として必要な資質をすべてモーラしているという点で、ある意味、会社生活で能力の一つ頂点を迎えていると言っても良いと思います。ここから先、予算を持たされてマネジメント層に入り、経営責任の一端を担って行った場合、別の能力が必要となるでしょう。

部長クラスへ

 立場的に経営層とのコミュニケーション場面も増えることになります。実質、実務からは離れ、それまで担当者時代に経験が無い業務に関しても、そのマネジメント範疇に入ってきますし、求められる物が予算達成という数字のみと言って良いような責務を担います。よって、それまで培ってきた実務の経験や知識と違った能力が必要となってくる点で、難しい立場であると思います。
予算達成という意味で、経営者視点で部門に責任を持ち、組織経営の中核を担う存在となりますので、現場の最前線で管理とサポートを行ってきた課長級から、全社を見通し、部門の最終決定を行う役割に変化しますし、経営層の指示を直接受けることから、それまでと異なったマネジメント能力が必要となります。
 まず、上級管理職である部長は、経営者の視点を持つことが求められます。その一つが業績拡大への戦略を持つ意識です。現代は先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代となっています。部長クラスは、経営者視点を持ち、部門や部署の責任者として、時代の変化に応じ、業務拡大や業務改善に取り組む姿勢が必要です。現時点における人的資源を活用し、業務の成果を具現化出来るかが重要となります。次に、リスク管理の考えが必要で、部門、部署、そして会社全体が社会的責任に配慮した活動をしているか監督することが必要となります。リスクに対する知識を学び、組織的なリスク回避や予防策の講じ方を学び、対応することが必要とされます。また、同時に、新しい事・変革への対応力も求められて来ます。変化する社会や経済の動きを見据え、時代に対応した事業展開を考える立場となります。組織の成長を維持し、企業価値向上への貢献が期待されます。新しいことへ挑戦し、新たな価値とビジネスモデルを見出す力が求められます。加えて、実際にはこれが重要なスキルとなりますが、上記の目標を達成するための組織デザインの力が必要です。部門の経営者として、組織が合理的かつ生産性を向上して仕事を行い、組織としての成長を止めないために、自社に相応しい組織デザインを行うことが重要です。組織がストレッチするために、未来のシナリオに沿った動きを取れるようになる様な組織デザインの設計が重要なポイントだと思います。
 経営層は、往々にして、無理難題を想起します。実務を行って来た経験者からは、途方もない目標、戦略を提示されることがありますが、それを受け止めるのが部長クラスです。実際に経営者の発する言葉は、哲学的な内容に思われる文言であり、やり取りは、仏教の押し問答の様に感じられました。部長クラスは、このやり取りの中から、自部門の進むべき方向性を模索し、組織運営方針や日々の指導方向に焼き直す必要がありますことから、ある意味伝道師的な役割ではないでしょうか? 非の無い人柄と部門員を意識付け出来るような強いアクションの両立が必要であり、ちょっと難しい役割であることは間違いありません。

トップマネジメントの役割

 経営者は、組織の経営に責任を持つ存在であり、多岐にわたる役割を担います。経営者に求められる資質は、やはり高いリーダーシップでしょうか? 会社を率いるリーダーとして、ビジョンを示し、社員を鼓舞する能力が求められると思います。社員を引っ張り、どんな窮地にあっても共通の目標に向かって進むことを言い続けることが必要です。また、先見性が求められます。当って様が、間違って様が、将来を見越し、戦略的な判断を下す必要があります。市場の変化やトレンドを予測し、適切な方針を立てる能力が求められます。次に、高い人間性が求められます。社員やステークホルダーとの良好な関係を築くために、コミュニケーション能力や対人スキルが必要で、決して社会から誹りを受けるような考えや行動を示すことは許されません。最後に、高い責任感は必須です。多少の批判を受けても、会社の成長や利益、社会的責任を担う責任感が求められます。常に、組織全体の健全な運営を実現するために努力することが必要だと思います。
 ちょうど松下幸之助さんのインタビュー記事  (https://president.jp/articles/-/79991)
を見つけました。それによると、出世する人は、「頭は関係ない。むしろ頭がいい人間より頭が悪いほうがいい……」とお考えだった様です。その上で、人間的な明るい人が良いとしています。更に、運が重要としています。加えて、スタンドプレーの自己主張を否定し、人を喜ばせるグラウンドプレーの出来る人が望ましいと推奨したと書いてありました。
 確かに、私の周りにも、運動会系のパフォーマンスをした方で出世した人が居りました。お一方は、宴会で応援団パフォーマンス披露が恒例で、会社幹部で目立っていました。もうお一方は、飲む会での物まね芸が抜群で、衣装まで自前で準備され、周りを笑いの渦に巻き込んでいました。この様な人材は、同じ能力の中でも目立ち、引き上げられる感じを持っています。私も含め、上司は、元気な人が好きなのです。上記の様なパフォーマンスが出来るかどうかは別にしても、受け答えがハッキリしていて、常に元気そうな人材は、こちらとしても、気持ちが楽に指示が出来ます。一方、暗めの方は、パワーハラスメントが気になり、中々突っ込んだ指示や議論が出来づらいということになってしまいます。結論から申し上げると、会社生活は,出来るだけ明るく振舞いましょうということになります。
 次に、運ですが、出世時期に、上司が突如会社をお辞めになったりする機会で、同期から早めに伸びていく方がいらっしゃいます。これも運が良いことに繋がります。また、担当する分野や、業務が数年で躍進するといったことも起きえるでしょう。昨今は、社会情勢の変化も激しく、技術革新のスピードも速いことから、業務の浮き沈みも激しく、ちょっと前までは日の当たっていない業務が、突然脚光を浴びることも多いと思います。これが、運ではないでしょうか?

演じるというコト

 私は、経営者も含めてマネジメントを行う人は、『演じる』ことしかないのではないか考える様になりました。即ち、実際に感じる好き嫌いとか怒りとかとは別に、マネジメントを遂行するために役を『演じる』ことにより、より高い指導力を発揮するというものです。自分の意にそぐわない会社の方針でも、これを消化させて、部門の成果達成のために部門員を奮起させるために『演じる』ことにより、目標と方針を共有するのです。時には、喜怒哀楽の感情表示も必要ですが、それは、出来れば、その表現の効果を意識しながら発揮するというコトが必要です。例えば、賞賛を与える時に、別室でOne by Oneで相対するのか? その場で、関係者に聞こえるように言い渡すのか? この判断を瞬時に行っていくという裁量が必要です。但し、反対に注意の場合は、周りに聞こえるような指導は、ハラスメントに繋がりやすいですし、メンタルヘルスの点で推奨はされていません。

まとめ

 私が会社生活で意識してきたことは、『サラリーマンなら出世して、自分の意思を反映できるような立場にならないと』でした。サラリーマンでは、とにかく上司の存在は大きく、考えが異なり、意に沿わないことを要求されることは、多くあると思います。その意味で、確実に意思を全うし、やりたいことをやるためには、より高い地位に就くしかないという思いでした。一方、出世は社長になるまで限りはないし、出世して部長や経営者になれても、実務からは離れていることが一般的で、本当の意味でやりたいことが出来るかというとそうでもないかもしれません。入社の初めから将来を心配しても大きなプラスには起こらないので、結論としては、与えられた業務を、真摯に進められる人材で、明るく元気な人が、運よく脚光を浴びた場面で、出世街道を踏み出すということだと思います。


#仕事のコツ


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