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『子鬼のつぶやき』

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「クラブBA」会員、にぎた/BAがお届けする短編ミステリー小説。中学3年生の主人公、半田圭司が進める”推理”の行方は—
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#秘密

『子鬼のつぶやき』 第六話

『子鬼のつぶやき』 第六話

(→第五話)

小さな争い

 帰り際に、男性社員が圭司を呼び止めた。

「どうして事故物件だと思ったの?」

 圭司は喉元まで出掛けた「お化け」のことをグッと堪えて、「夏休みの自由課題」と嘘をついてみた。

 男性社員もそれ以上は突っ込まなかった。圭司が何かを隠していることくらい、気づいてるに違いない。だから、「何かあったら連絡して」と最後に名刺を渡してきたのだ。

 滝川ホームズ営業部 
 服

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『子鬼のつぶやき』 第四話

『子鬼のつぶやき』 第四話

(→第三話)

推理

 部活は昼過ぎに終わった。
 校門の前で、母の車を圭司はひとりで待っていた。

 他のチームメイトたちは「この後どこで遊ぼうか」と、駄弁りながらさっさと帰ってしまっていたのだけれど、タイミングを見計らったようにして、しょうちゃんが声をかけてくれた。

「じゃあ……帰ったら調べてみるね」

 自分たちの他に誰もいないか確認してから、用心深く言った。真っ白なヘルメットに太陽が反

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『子鬼のつぶやき』 第二話

(→第一話)

部活

 目が覚めると、圭司はすぐさま昨晩のノートを見直した。

 数学の宿題のノート。その隅っこに書かれた一言。
――ぼくはころされた

 僕は殺された、とつぶやいてみる。それからようやく、圭司はホッと胸を撫で下ろした。いつの間にか書かれていたそれは、また消えてしまうのではないかと、正直ヒヤヒヤしていたのだ。
 けれど、確かにそれは見間違いではなかった。

 季節は夏の盛り。昨日

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『子鬼のつぶやき』 第一話

(→あらすじ)

発見
 
 半田圭司がお化けを見たのは、実は2度目のことであった。

 1度目は彼が小学五年生のとき。苦手な社会の時間中、ふと――本当にたまたま窓の外に目を向けると、反対の校舎の屋上に立つ、1人の人影を見つけたのだ。

 ドキリとした。その人影は、フェンスを乗り越えて飛び降りたのだから。気がつけば立ち上がり、授業もお構いなしに教室を飛び出していた。「戻りなさい!」という先生の声も

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