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『子鬼のつぶやき』

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「クラブBA」会員、にぎた/BAがお届けする短編ミステリー小説。中学3年生の主人公、半田圭司が進める”推理”の行方は—
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2019年7月の記事一覧

『子鬼のつぶやき』 第七話

(→第六話)

呪い「今日はお祖母ちゃん家に行くよ」

 翌朝。運転する順子に、圭司はそう伝えた。

「……そう」

 バックミラー越しに感じた母の視線を、圭司は代わり映えのしない窓外を見ることで避けた。

 結局、昨日はしょうちゃんから連絡が来なかった。お化けの正体を突きとめるための、最後の道しるべ。きっとしょうちゃんも行き止まりにぶち当たったのだろう。

 ぼくはころされた――。

 お化けが

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『子鬼のつぶやき』 第六話

『子鬼のつぶやき』 第六話

(→第五話)

小さな争い

 帰り際に、男性社員が圭司を呼び止めた。

「どうして事故物件だと思ったの?」

 圭司は喉元まで出掛けた「お化け」のことをグッと堪えて、「夏休みの自由課題」と嘘をついてみた。

 男性社員もそれ以上は突っ込まなかった。圭司が何かを隠していることくらい、気づいてるに違いない。だから、「何かあったら連絡して」と最後に名刺を渡してきたのだ。

 滝川ホームズ営業部 
 服

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