星 暁雄(ITジャーナリスト)

日経BP社で編集長を経て、フリーランスITジャーナリスト。技術と社会のジレンマ、インタ…

星 暁雄(ITジャーナリスト)

日経BP社で編集長を経て、フリーランスITジャーナリスト。技術と社会のジレンマ、インターネットと人権の関係に興味を持つ。得意分野はIT全般でエンタープライズ、ソフトウェア開発、インタビュー、スタートアップ取材なども。好きなものはイノベーション、嫌いなものはフェイク、Scam。

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  • シリーズ「インターネットと人権」

    人権(Humen Rights)とインターネット、Techに関する論考、ニュース、資料などを載せていきます。

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自由と平等のブロックチェーン──倫理、人権と技術を接続する

次のような状況を考えて欲しい。ある日あなたは、社会的影響が大きなサービスを作るプロジェクトの設計と運用の方針を作る必要に迫られた(このサービスはクラウド上で動いているかもしれないし、パブリックブロックチェーンにデプロイされたWeb3アプリかもしれない)。プロジェクトには高いコストパフォーマンスが求められるが、一方で設計や運用を間違えれば、多くの人々がプライバシーを侵害されたり、資産を失ったり、健康を害したり、暴力の脅威にさらされる可能性がある。このようなプロジェクトでの設計と

    • 世界はMECEではない

      「世界はMECEではない」というお題で、物書きの仕事論について考えてみた。 MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)は、「漏れなく、ダブりなく」を徹底した完璧な分類を指す言葉だ。あるいは、ツリー構造による問題記述ともいえる。マインドマップの基本はMECEといえる。 いま企業Aが、課題Bを解決したいとする。課題Bの内容は、b1、b2、b3、b4に細別できる。これこれの理由により、最も効果が高い施策はb2に注目す

      • AI規制を進めるEUは、OpenAIにとっても手強い相手

        〜OpenAIのサム・アルトマンCEOのヨーロッパ・ツアーと、ブルトン欧州委員の訪米で見えてきたもの〜 2023年5月から6月にかけ、「ChatGPT」の開発元であるOpenAIのサム・アルトマンCEOと、ヨーロッパ各国のリーダーたちが会談した。その結果、AI革命を信じるOpenAIと、民主主義と人権を重んじるEU(欧州連合)の立場の違いが浮かび上がった。 AIによる革新的な生産性向上に楽観的なシリコンバレーの起業家と、ナチスの記憶を共有し民主主義と人権を重視するデジタル

        • 提言:Twitterのコミュニティノート協力者になって「背景情報」掲載のための評価に参加してみませんか。非常に手軽です。

          今回の記事は、皆さんへの提案です。Twitterで日本のユーザー向けに最近公開された機能「コミュニティノート」の協力者として手続きし、まだ掲載されていないノート候補の評価・投票に参加しませんか。 Twitterユーザーなら、下記リンクから参加できるはずです。 https://twitter.com/i/flow/join-birdwatch 手間はほとんどかかりません。協力者は匿名なので、あなたが協力者になったかどうかも含めて、他のユーザーには分かりません。協力者になる

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        自由と平等のブロックチェーン──倫理、人権と技術を接続する

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        • シリーズ「インターネットと人権」
          6本

        記事

          Twitter、Threads、そしてBluesky、Mastodonの印象・7/6付け

          2023/07/06、Metaの新SNSであるThreadsがローンチしました。この機会に4種類のSNSの感想を一言ずつ。順番は「7/6時点で自分が推す順番」です。 Bluesky 現状は要・招待状のベータ版。ユーザー数はまだ20万人台で、今のところエンジニア比率が高い。筋は悪くないと見ています。小さくてもいい、未来を感じさせるSNSに育って欲しい・・・ 星暁雄のBluesky https://bsky.app/profile/akiohoshi.bsky.social

          Twitter、Threads、そしてBluesky、Mastodonの印象・7/6付け

          Twitter制限・第2報——Twitterから公式声明が出るが、そもそも制限理由が不可解との指摘

          [ 星暁雄の仕事はこちら ] ここ数日続く大規模なTwitter閲覧制限について、前回記事の後の動きをメモにまとめた。 Twitterから公式声明が出るも、疑問は解消されず 7月5日、Twitterが公式声明を出した。 英文 Update on Twitter's Rate Limits 日本語 Twitter Rate Limitsに関するアップデート 「スクレイピング(Webサイトから機械的にデータを取得すること)などのボット(機械的な操作を行うプログラム)対

          Twitter制限・第2報——Twitterから公式声明が出るが、そもそも制限理由が不可解との指摘

          Twitter機能不全の背後には何が?——セルフDDoS、支払い停滞、組織弱体化の疑惑

          [ 星暁雄の仕事はこちら ] 2023年7月1日、日本でもTwitterの不調、不具合を訴えるツイートが増える様子を見た。「API制限のメッセージが出て閲覧できない」「自分のツイートも見られない」などの内容だ。今回の機能不全に関して、メモを残しておきたい。一言でいえば、Twitterの経営判断ミスと技術的ミスの積み重ねにより、ユーザーに迷惑がかかる結果となった。その背後には組織の弱体化があると考えられる。 Twitterのオーナーであり、CTO(最高技術責任者)を名乗るイー

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          精神を病んだ人を介護する家族が考えていたこと(妻のマンガへの補足)

          うちの妻は精神の病気を患っている。その様子を描いたマンガをTwitterで紹介したところ、思いのほか多くの人々が読んでくれた。 マンガのツイートはここ。2つの連続ツイートで合計5ページの作品。 https://twitter.com/masapon_com/status/1350830759330758658 私は、このマンガの登場人物なのだけど、このマンガで描かれていることはぜんぶ実際の出来事だ——マンガ的に消化/昇華された表現になっているけれども。 読んだ人は、「

          精神を病んだ人を介護する家族が考えていたこと(妻のマンガへの補足)

          TikTok対アメリカ、出来事と報道のタイムライン

          中国発のショートムービー共有スマートフォンアプリTikTokに対して、米トランプ大統領は「禁止する」と脅かし、Microsoftとの買収交渉に口先介入もしている。この件に関連する出来事を時系列で俯瞰できる資料を作ってみた。ITmediaビジネスオンラインのコラム記事「なぜ? 中国アプリTikTokに米トランプ大統領が異例の圧力」の執筆のために作ったものだが、記事には全ての情報は盛り込めない。そこで手を加えて公開することにした。 (タイトル画像のライセンスはCC BY-SA

          TikTok対アメリカ、出来事と報道のタイムライン

          2017年7月23日、ビットコインに起こったこと

          クレジット:画像はMarco Verch氏の作品"Bitcoin-Fork"。ライセンスはCC BY 2.0。 今日の日付で思い出したことがあるので、書きとめておく。ちょうど3年前の2017年7月23日、「ビットコインが分岐する可能性」をめぐり、仮想通貨取引所によって対応が分かれるという出来事があった。日本のbitFlyerは通常通りビットコイン入出金を受け付けた。一方、日本の他の取引所はビットコイン入出金を一時停止したのである。 この日に起きたことを専門用語を使うと「B

          2017年7月23日、ビットコインに起こったこと

          星暁雄への仕事依頼について

          「星暁雄に仕事依頼をしてみようかな?」と思われた方へのご案内です。今まで星暁雄が書いてきた記事については「星暁雄の仕事」をご覧ください。 取材記事の仕事の打診にすぐお返事しますIT分野でインタビュー取材から記事を書く仕事の打診に対しては、すぐにお返事いたします。お気軽にご連絡ください。 もし取材対象や記事内容が固まっていて筆者を探している場合、以下の情報をお知らせ頂ければ、お受けできるか否かをすぐにお返事いたします。連絡先はこのページの下の方をご覧ください。 (1)記事

          星暁雄への仕事依頼について

          星暁雄の仕事

          フリーランスITジャーナリストとして、星暁雄がいままで書いてきた記事、登場したメディアなどを挙げていきます。 SNS Bluesky @akiohoshi.bsky.social Mastodon https://mstdn.jp/@AkioHoshi Twitter @AkioHoshi メールアドレスなどは「星暁雄への仕事依頼について」をご覧ください。 メディア出演、協力 テレビ出演 ・協力 TBS 「NEWS23」2022年11月7日放送(コメント大意「イーロン・

          キース・エマーソンの音楽を演奏し続けるレイチェル・フラワーズ

          今日は趣向を変えて音楽のお話を。 キース・エマーソンといえば、1970年代にプログレッシブ・ロックの最高峰バンドの一つに数えられていたエマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)のキーボード・プレイヤーで、作曲家としても多くの曲を残した。キース・エマーソンは主にロックミュージックという商業音楽ジャンルのアーティストとして活動していた訳だけれども、その音楽性に注目し、彼らの音楽を後世に残すべく演奏活動を続けている人たちがいる。今回の記事では、その中からアメリカ合衆国在住のミ

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          Huaweiめぐる米中対立、新たな焦点は台湾TSMCの半導体

          ●米国は新たな経済制裁を発動、半導体製造大手の台湾TSMCからHuawei(ファーウェイ)への半導体チップ供給を絶つ構え ●台湾TSMCは120億ドルを投資し、米国内に半導体製造の新工場を建設する計画 ●中国は反発、報復措置をほのめかす 気になるニュースが入ってきたので書き留めておく。中国Huaweiを狙い撃ちした米国の輸出制限、それに続く新型コロナウイルス感染症の大流行をめぐって米国と中国の緊張が高まっている中で、米国は半導体のサプライチェーンを抑えにかかってきた。半導体

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          「人権と、パンデミック対応の行動制限は矛盾しない」と私が考える理由

          人権の概念には、「他者の人権(公共の福祉)を守る場合に限り、個人の人権が制限される」という考え方が含まれています。この考え方は、必ずしも常識とはなっていないようです。 「人権があるからロックダウンができない」は本当か? Twitter上のつぶやき、その他で、次のような趣旨の書き込みを見ることが何回かありました。 「日本国憲法は人権を重んじるので、日本ではパンデミックでも行動制限(ロックダウン)ができないのではないか?」 これは特定の方の発言そのものではありません。この問

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          新型コロナが暴いた社会の現状に憤るマーク・アンドリーセン、「ビルドしよう!」と檄を飛ばす

          平時の冷静な呼びかけというより、戦時の檄文だ──これがマーク・アンドリーセンが4月19日に発表したエッセイ"IT’S TIME TO BUILD"への第一印象だ 。 アンドリーセンは、ご存知のようにNetscapeブラウザの開発者、起業家、そしてベンチャーキャピタル アンドリーセン・ホロウィッツの協同創業者である。そしてこのエッセイは、アメリカ合衆国や他の先進国で新型コロナウイルス感染症対策がうまく機能していないことへの憤りから始まる。先進国の社会は実はパンデミックに脆弱で

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