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Twitter制限・第2報——Twitterから公式声明が出るが、そもそも制限理由が不可解との指摘


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ここ数日続く大規模なTwitter閲覧制限について、前回記事の後の動きをメモにまとめた。

Twitterから公式声明が出るも、疑問は解消されず

7月5日、Twitterが公式声明を出した。

英文 Update on Twitter's Rate Limits 
日本語  Twitter Rate Limitsに関するアップデート

「スクレイピング(Webサイトから機械的にデータを取得すること)などのボット(機械的な操作を行うプログラム)対策のため、無警告で"排除"する場合があります」と説明。この"排除"の内容はRate Limits=1日あたり取得ツイート数の制限を指すと思われる。重要な点として、この措置は「ごく一部」のユーザーだけに影響し、「広告への影響は最小限」と主張している。

この公式声明は、Twitterの弱体化した組織の中で、対外的なアカウンタビリティ(説明責任)を果たそうとする部署がいちおう機能していることを示している——とは言える。

しかしながら、この公式声明は今回の措置に対する説明として非常に不十分な内容だ。「影響が最小限」であることを広告主に納得してもらうには、その証拠となる数値指標の開示が必要ではないか。Web広告ビジネスで求められるのは、まず数字だ。

さらに興味深い点は、イーロン・マスク氏の当初の説明とは異なり、一律の制限ではなく、特定のアカウントだけを対象にしていると説明していることだ。それにしては、あちこちで「Twitterが使えない」という悲鳴があがっている。「誤爆」が多すぎるのではないか。

Twitterの弱体化のため、スクレイピングなど機械的操作で負荷をかけているとされるボットの特定にも排除にも成功せず、ただユーザーと広告主に迷惑がかかっている状態を招いているのではないか——そのような疑惑がある。

日本で防災情報発信に実害が

アクセス制限に伴う実害はすでに日本でも出ている。

時事通信の7月4日付け記事「自治体防災情報に影響 大雨時、投稿できないケースも―ツイッター閲覧数制限」は次のように伝える。

先週末の大雨で被害を受けた山口市では、市内の川の水位などをツイッターで発信しているが、同市防災危機管理課によると、6月30日から1日にかけて投稿ができなかったことがあったという。同課担当者は「ツイッターはよく見られていると思う。解決してもらわないと困る」と訴えた。

自治体防災情報に影響 大雨時、投稿できないケースも―ツイッター閲覧数制限

日本では、2011年の東日本大震災のさい、電話も使えず停電が続く中でTwitterが情報のライフラインになった経験がある。Twitterは災害時に強い情報インフラとして認知され、日本の政府機関や自治体はTwitterの利用に積極的だった。その信頼がひっくり返った。

ログインしなくてもツイート閲覧が可能に、しかしスクレイピング対策あり

前回の記事に記したように、Twitterでは6/30頃からログインなしのツイート閲覧を停止していた。7月5日に入ってからTwitterのWebサイトでログインなしにツイートを表示できるようになったことを確認した。ただし、連続ツイートや対話のツリーなどを一覧することはできず、単独のツイートだけしか表示しない。これは、Webサイトのリンクを次々とたどり機械的にデータを取得する操作——つまりスクレイピングへの対策だと思われる。

元社員から閲覧制限の理由への疑義

Twitterの元社員から、「AI企業などによるスクレイピング対策のため閲覧制限を実施した」というイーロン・マスク氏の説明への疑義が出ている。

7月4日付けのBBCの記事(Confusion at Twitter continues over Elon Musk's tweet limits)で、データサイエンティストで元ツイッター従業員のRumman Chowdhury博士は、スクレイピングが問題だったという説明に異議を唱えている。「正直なところ、私は彼が(クラウド企業などへの)支払いを怠っているせいだと考える人が多数派だと思う」と述べる。エンゲージメントを必要とするSNSプラットフォームにとって投稿を制限することは逆方向に進むことを意味する。これは「非常に極端で前例のない戦術」であり、「すでに失敗している」とChowdhury博士は言う。

また、ツイッター社の前信頼・安全部門責任者である Yoel Roth氏は、7月1日のBluesky投稿で次のように述べた。

「突如としてスクレイピングがこれほどまでの著しいパフォーマンス問題を引き起こし、Twitterが全てを要ログインにする他ない状況に追い込まれたとは、直感的なチェックを通過するものではないように思える」
「スクレイピングはTwitterのデータアクセスの公然の秘密だった。私たちはそれを知っていた。それは問題ではなかった」

Yoel Roth氏のBluesky投稿


「AI企業が商業的に利益を得るモデルを訓練するために、無料でソーシャルデータを吸い上げる行為に対して、TwitterやRedditが不満を持つことにはある程度の正当性がある。しかし決して忘れてはならないことがある。それは、そのデータが彼らのものではないという事実だ — それは私たちのものだ。寄生的なAIへの解決策は、利益中心ではなく、ユーザー中心であるべきだ」

Yoel Roth氏のBluesky投稿

Twitterの閲覧制限の理由として、イーロン・マスク氏は「AI企業らによるスクレイピングによる負荷増大」を挙げていたが、Twitterではそんな現象は以前から続いており問題ではなかったというのである。

むしろ、「他のAI企業にデータを無料でやるのは癪にさわる」というイーロン・マスク氏の個人的な思いと(ちなみにイーロン・マスク氏はChatGPT対抗のAIを構築中で、Oracle社から大量のGPUリソースを調達済みとの報道がある)、「アクセス制限によりデータインフラの負担を減らし、サーバー代を節約したい」という台所事情が背景にあったことが疑われている。

ロイターが、Web広告の常識をわざわざ伝える記事を掲載

7月4日、ロイターが「ツイッターの閲覧制限、新CEOによる広告強化の妨げに=専門家」と題した記事を掲載した。

ツイッター運営会社のイーロン・マスク会長が、利用者が1日に閲覧できる投稿数を一時的に制限したことについて、マーケティング専門家らはリンダ・ヤッカリーノ新最高経営責任者(CEO)による広告事業立て直しの取り組みに支障が出る可能性を指摘する。

ロイター

ほか、利用者や広告主にとって閲覧制限は「非常に悪い」「ヤッカリーノ氏が埋め合わせるべき広告主からの信頼喪失がむしろ大きくなった」との指摘や、閲覧数制限が広告事業に「壊滅的」影響を与える可能性があるとの指摘を記事で紹介している。

率直にいって、ここで紹介されている話はWeb広告業界の常識の範囲だ。逆にいうと、常識を改めて伝える記事が必要になるほどに、今のTwitterの迷走、弱体化は異常なのだ。

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星 暁雄(ITジャーナリスト)
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