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#33 怒らなかった理由

大学4年生の春
新チームでここからスタートという時
悲劇が起きた。

新チーム最初の遠征が終わり、
「明日から練習だ!!」と意気込んでいた夜
グループラインがなった。

『明日は会議室でミーティングを行います』

チームのグループラインに送られてきたこの内容はすぐに察することができるほど不吉な予感をさせた。

翌日、ミーティングへ参加した。
監督から告げられた内容は先が真っ暗になるくらいな悲報だった。

最初の説明では、
後輩3人がやらかした話だった。
しかしそこから関わったことがある後輩が芋づる式のように出てきた。

不幸中の幸いというのだろうか、
そこに私たち4年生は誰もいなかった。

ただ、
4年生が1人もいなかったという安堵と同時に、
いなかったことが今回の出来事の問題とも感じた。

監督からの説明の後、
メインの当事者たちが選手たちの前で話し最後にこういった。

「チームに残らせてください」

何を言ってるんだ?と私は思った。
こんな騒ぎを起こして、残してください?
ふざけるな、と。

少なからず4年生はみんな同じ思いだった。

とりあえず、混乱した4年生は
頭の整理をするため会議室から外へ出た。

そして4年生で今思っていることを話した。

当時何を話していたか明確に覚えていないが、

「終わったよね」
「これからどうする?」
「とりあえずチームをまとめなきゃ」

こんな言葉が何度も発せられていた。

本当は自分たちの感情を抑えるので精一杯だった。
泣きたい人も怒りたい人もいたはず。
それでもチームのことを最初に考えるあたり
さすが同期だった。

そこから数ヶ月、チームとしての活動は停止。
一部大会への参加も辞退となった。

活動停止が終わり、周りの方のおかげで
大学生のメインとなる大会への参加が許された。

結果的に大会では4年間の目標としていた全国大会への初出場を手にすることができた。

結果的に
有終の美を飾ったのだっだ。

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当時のことを振り返って思うことがある。
それは4年生が誰も当事者である後輩たちに
対して怒らなかったことだ。
とはいえ、
優しい言葉をかけることもなかった。

4年生は瞬時に
チームのことを考えたのだと思う。
私もそのうちの一人だが
4年生として、個人としても
チームへの役割というものがある。
それをみんなが行動した結果、
やらかしてしまった後輩に怒る選択ではなく
チームの混乱を収束し、まとめる判断をしたのだ。

誰も怒らなかったことに対し違和感を
抱いた人もいたはず。

当事者の後輩がチームに残る選択をしてくれて良かったということ。

「責任をとって辞めます」

もし後輩からこの言葉が出ていたら
私は激怒していたと思う。

「○○がとれる責任ってなに?」
「○○が辞めても続けても
 チームの活動停止は変わらないんだよ」
「監督しか責任は取れないんだよ、なめんな」

まだ10代だった後輩には
こんなにも大事件になるなんて想像もできなかったと思う。

私も1.2年生の時にはチームのことなんて分かっているふりで分かっていなかったな、と思う。

チームがなぜ今こうやって存在しているのか。
監督や先輩方が築いてきた歴史の重み。
私たちが不自由なくプレーできる理由。

こういうものは口で言っても伝わらない。
どんなに熱く伝えたって伝わらない。
そのチームに居続ける時間が
チームへの愛と変わり、
チームの伝統などを肌で感じ、
4年生で初めて先輩や後輩のために
チームを守らなければ、と思えるのだと思う。


チームに残ろうとした選択をして後輩の当時の想いを察すると容易ではなかったと思う。
周りからみたらなぜ辞めないのか、
と思われていたかもしれない。
私も外部の人間だったら辞めないんだ、と驚く。

ただ、実際にチームの中にいると
やめて欲しいなんて思わなかった。
辞めても辞めなくても状況が変わらないんだったら続けて、私たちに周りの人たちへ誠意を見せて欲しいと思った。

当時のことを振り返ると
未だに怒らなかった自分に驚く。
客観的に見れる今、
普通だったら怒るでしょ、と思う。笑

そう考えるとニュースでみる不祥事も
世間と当事者たちの反応のギャップが生まれるのも理解できる。

初めて先頭にたったときに考えさせられた
チームビルディング。

この経験は、しなくていい経験だったが
できてよかったとも思えた。

春から新しいチームへと行く。
とりあえず楽しもう!!

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