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CXについて考えるために私がこれまで読んできた7冊の本

こんにちは。先日書いたnoteの記事には思いのほか多くの反響をいただき、驚きとともにとても嬉しく思いました。
読んでくださった方&スキをくださった方&拡散してくださった方、どうもありがとうございます!

書いた当初は周囲の知り合い+αに届けばいいなくらいに思っていたのですが、この記事をきっかけに、カスタマーエクスペリエンスやカスタマーサクセスについて同じように課題や悩みを持っていたり、試行錯誤しながら思いを持って取り組んでいる方が他にもたくさんいることを知ることができ、私自身がとても勇気をもらいました。

何よりも、同じ思いを持った方々とつながることができたことが、記事を書いた一番の嬉しい収穫です。noteとtwitterでつながる世界、素晴らしすぎる!世界は広いけど狭いし、人間は孤独だけど一人じゃないんだよ!やっぱりアウトプットファースト大事!(しょっぱなからテンション上げめで。でも本気で思ってます!)

さて、前回の記事にいただいた反応を見ていると、おおむね以下のポイントでコメントをいただくことが多かったように思います。

0→1:導入事例の作り方
1→10:ユーザーの声をどう活かしてサービスを発展させていくか
10→100:既存のユーザーをマーケティングの中心に据えて、新規ユーザーの獲得につなげていく

反応を見ながら思ったのは、このあたりのトピックって、マーケティング手法の中でまだまだノウハウの蓄積やシェアが少ないんだってこと。

必要性を認知していたり、実践している人はそこそこにいても、まだまだ手法として確立されておらず、頼りたい先人のノウハウが見つからない。
たとえば、「カスタマーエクスペリエンス」「顧客体験」についての本を探して読んでみると、カスタマーサポートをメインのトピックとする本だったり、顧客のロイヤリティを上げることにフォーカスした本だったりする。これはこれで大事だと思うんだけど・・・うーん、私が求めてるのはちょっと違うんだ・・・!

なので、「これを読んでおけばOK」みたな教科書って、たぶん無いと思うのです。

とはいえ、部分的にであっても、参考にできるものはしたい。そしてそれを探すのもなかなか大変。

ってなわけで、次に何を書こうかと思いあぐねていたのですが、私自身が他の方に聞いてみたいテーマとして、今回は「みんなどんな本読んでます?どうやって勉強してます?」ということについて書いてみようと思います。
ここでは、私的に参考になった本をご紹介します。
これ以外にも色々あると思うので、皆さんもぜひ教えてください。

0:ユーザーの声を傾聴する

最初に何の本を挙げようか迷ったのですが、何をやるにせよ、必ず必要になるのは「自社のサービスを使ってくれているユーザーの声を聞く」ことだと私は思っています。
ユーザーの声を聞くといっても、事例のインタビューや、顧客のフィードバックを得るためのヒアリングなど、色々な場面があるわけですが、いずれにしても大事だと思うのは、「相手との関係性を築いて、(期待した、あるいは想像以上の)インサイトを引き出す」こと。仮説検証はもちろん大事ですが、あらかじめこちらで想像していた以上の何かを得られれば、それが新しい価値や課題の発見につながります。

すでに何回か会ったことのある相手であれば、徐々にお互いのことを知って、信頼関係を築くこともできると思う。
が、事例の取材などでは、インタビューが初対面というケースも少なくない。そのために必要なのは、初対面でいかに相手に心を開いてもらい、安心して言いたいことを言っても大丈夫だと思ってもらえる場を作ること。そのために、一番役に立ったのがこれでした。

この本が素晴らしいのは、「目の前にいる相手に好感を持ってもらい、話を聞き出す」ためのテクニックにフォーカスしているところ。
あいづちの打ち方やいい質問の仕方、態度やしぐさの注意点、難しい相手のパターン別の対応方法など、とにかく感じよく話を聞き出す方法が、これでもかというくらいに書かれている。

上手にインタビューをするために、こんな準備をしてこういう段取りで・・・というような「インタビューのテクニック」について書いた本は他にもあるのですが、一番大事な「話を聞く」姿勢について書かれた本は意外とあまりなく、この本が一番参考になりました。たとえば、こんな感じ。

たとえば、話を盛り上げたいときは、「高く、速く」あいづちを打つのが効果的です。
逆に、相手の話の勢いがよすぎて、少し落ち着いてほしいときは、「低く、ゆっくり」あいづちを打ちます。
こうやってあいづちを打つときの「声の高さとスピード」によって、相手の話をコントロールできるのです。
話し手と聞き手の感情は相互に影響を受け合う、「感情はシンクロする」というのが私の持論ですが、エネルギーもまたシンクロします。こちらのエネルギー量を落とすと、相手も下がりますし、こちらが上がれば相手も上がります。
ですから、「声の高さとスピード」を操ることで、高度な「あいづち」テクニックを取得できるのです。

(『たった1分で会話が弾み、印象まで良くなる聞く力の教科書』より)

これなら、来週のインタビューでも使えるし、なんなら明日の社内の打ち合わせでも使える。「相手の話をきちんと聴く」ということを、どういう自分の姿勢や態度、言葉で示すかということにすごく意識的になった本です。

0→1:事例制作の作り方

導入事例のノウハウって、他のオンラインマーケティングの手法に比べると、あまりノウハウがないと感じることが多い。コンテンツマーケティングの一つのバリエーションと見られがちなのか、通常のSEOコンテンツよりもかなり難易度は高いはずなのに、なかなか出回らないのはなぜなのでしょう。

そんな中で、この本は新規獲得のために効果的な導入事例の作り方に特化して、とても丁寧にノウハウを開示してくれている貴重な本。唯一の書籍かもしれません。

2011年発行なのでだいぶ前の本なのですが、同じ著者のより新しい本が2017年に出ていました。
しかもBtoBマーケティングに特化。ざっと読んだ感じ、著者がこれまでたくさんの事例を作る中で蓄積してきた、充実したノウハウが大量に詰まっている感じ。

ちなみにこの2冊はいわば「事例マーケティング」の方法。新規顧客を獲得することをゴールとして事例を制作するための方法が書かれています。
個人的には、「新規獲得のための事例」と「カスタマーサクセス(≒活用促進)のための事例」は求められるものが違うと思っています。後者の方については、まだ手法が確立されていないジャンルだと感じる今日この頃。

1→10:ユーザーの声をどう活かしてサービスを発展させていくか

ユーザーのフィードバックを受けてプロダクトを随時ブラッシュアップしていくことは、特にサブスクリプション型のビジネスを伸ばす上では必須だと言われているものの、実際にどうやってやるのか、はとても難しい。

すべてのフィードバックを拾って実装することが必ずしも正解ではない。ユースケースのヒアリングを通して、個々のユーザーの声の裏にあるニーズJobs to be done的なを拾いながら、実現可能性やプロダクトの方向性とすり合わせてロードマップに乗せていく、というサイクルは、プロダクトの開発そのものと密接に結びついている。そしてそれはスタートアップの成否そのものにつながっているはず。

スタートアップのプロダクト戦略についてはきっとUSのスタートアップ界隈中心に様々なノウハウや手法が語られていると思うのですが、私が読んでみてなるほど!と思ったのはこの本。日本語の新書でさっくり読めるのがありがたい。

特に、このあたり。

作るべきプロダクト体験の要素を、まずはすべて「仮説」として捉えることから始めることをお勧めします。

スタートアップは素早く仮説の検証を繰り返し、現実の世界や顧客から学び取る必要があります。

そして検証と学びを通じて、プロダクト体験やビジネスモデルからリスクを徐々に排除していきます。

顧客にニーズがあるかどうか分からないのなら、綿密な市場調査を行い、顧客の声を聞いた上で製品を作ればいいのではないか、と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかしそれを考える上で難しい問題になるのは、顧客自身も自分が本当に欲しいものが何なのか、よく分かっていないことが多い、ということです。

Appleの共同創業者の一人、スティーブ・ジョブズは「何が欲しいかを知ることは、顧客の仕事ではない」と言い切っています。

プロダクト体験を設計する際には、顧客の声はきちんと聞きつつも、彼らの期待通りのものを作るのではなく、その声の裏に潜む、本当の欲求が何なのかを捉える必要があります。

(『逆説のスタートアップ思考』より)

インタビューやアンケートを繰り返していると、「顧客自身も自分が本当に欲しいものが何なのか、よく分かっていないことが多い」というのは本当にその通りだなあと感じる。「こういう機能がほしい」「ここをこうしてほしい」という声の裏側をきちんと理解しないと、間違った形の機能追加ばかりが行われて、結果的にニーズにマッチしていないプロダクトになってしまいかねない。この塩梅が難しい。

そして多分、教科書はこの本。厚さゆえに全てを読破できていないので恐縮ですが、PMF(Product Market Fit)の手法についてはこの本に大変詳しく書かれています。

スタートアップがプロダクトを世の中に出すに当たり、作ったプロトタイプに対してユーザーにインタビューを実施し、ユーザーの声からプロダクトの機能を絞り込む。
未完成の状態でマーケットに出し、アーリーアダプターからの生の声からプロダクトを磨き込んでいく。そのサイクルを高速で回すことで、早い成長を目指すリーン・スタートアップの手法についての教科書。

そして、ユーザーが増えてきて、声の可視化をプロセスとして仕組み化するときに役立ったのがこちら。

この本は、一般的に「カスタマーエクスペリエンス」と言われるものの王道の本だと思います。
カスタマージャーニーを設計して、NPSや定性調査で顧客の声を集め、顧客のロイヤリティを上げるために改善していく。
その全体論と方法が体系化されているので、NPS調査を走らせる時にとても役に立ちました。(実際にこれを見ながら調査設計しました。ありがたい)

NPSなど、定量的な意見の収集を行う際に難しいのが、「数値化はできて現状把握はできたけど、実際に何を改善していいかわからない」という点。
自由回答などでたくさんの要望やご意見をいただいても、個別の意見の集合体なので、大量に集まるとどれを優先して対応していいかわからない、ということになりがち。
一つ一つの意見をどのように分類して、優先順位をつけ、実際のアクションに落としていくか。さらには、アクションに落とすためにどのように調査設計をすべきか。
それを考える上で、とても参考になりました。

10→100:既存のユーザーをマーケティングの中心に据えて、新規ユーザーを獲得していく

長い見出しになりました。この課題感を表現するのはなかなか難しい。言葉遊びは良くないけれど、カスタマーサクセスをマーケティングの活動として取り組む、いわば「カスタマーマーケティング」というような考え方です。

サービスを使い始めたユーザーが成果を出して成功したら、その先にあるのは「リテンション」「クロスセル、アップセル」だけでなくて、「新規のユーザーの認知や獲得」にもつながるというのは、カスタマーサクセスに関わる人であれば誰もが感じているところだと思います。それを手法として、再現可能な形で戦略的に目指すにはどうすればいいか?について考えるのにヒントになりそうな本を、いくつか挙げてみたいと思います。

ちなみに、カスタマーサクセスについては最近どんどん日本語で読める書籍が出てきていて、王道的には青本黒本ピンク本が挙がると思います。これは私が紹介するまでもなく色々な方が紹介されていると思うので、ここでは特に詳しくご紹介はしません。

熱心なユーザーを支援し、外部に発信してもらうことで、情報を必要としている人に届け、新規ユーザーの獲得を目指す、という手法について、私が一番感銘を受けたのは、やはり前回の記事でも紹介したこの本。

マーケティングのプロフェッショナルとして長年BtoB企業のマーケティングをリードしてきた方が、メディアの力で大多数にリーチすることで認知をあげ、ファネルの上の層を増やすことを目的にする従来のマスマーケティングに対して、「製品を売る人が、自らをレコメンドするのは、もはや全然響かない」と言っている。このことは、とても大きなマーケティングの考え方の転換ではないでしょうか。

ベンダーではなく、同じ立場の他のユーザーからおすすめたり、情報をもらうことで、「自分ゴト化」させることができ、そして活用してもらうことができる。私自身がこのことを、コミュニティのミートアップを主催したり、他のコミュニティに参加することで実感しています。

以前からCMC Meetupで小島さんの話を聞く機会はあったものの、小島さん自身のこれまでの歩みを含めて、ストーリーとしてまとまった形で知ることができたという意味で、上記の書籍化はとても嬉しい。この本を拠り所にして、これからもたくさんのコミュニティマーケティング実践者が増えていくのを楽しみにしています。

そして、もう一つ、「○○マーケティング」という言い方はしていないものの、間違いなくマーケティングの手法である「ファンベース」という考え方。熱心なユーザーを中心に、外部に広げていくという考え方は先ほどのコミュニティマーケティングと同じ。

一過性かつ瞬間風速的に効果を失っていく「成功キャンペーン」を見るたびに思うのは、「もったいない!」ということだ。素晴らしいキャンペーンを実行したのに、一時的なブームに終わり、効果が長続きしない。サスティナブル(持続可能)ではない。人の気持ちを一瞬は動かしたけれど、あっという間に忘れ去られてしまう。

人は大好きなモノ、コトを、近しい類友に言いたくてたまらない。
ファンは(熱量の多寡にかかわらず)周りにいる価値観が近い類友に、自分の好きな商品をオススメしたくなるものなのだ。「ねえ、この商品、キミにもぴったりだと思うよ!」とオススメしたがるのである。そしてその影響力は絶大だ。
要するに「ファンは周りの類友をファンにしてくれる」のである。

ファンがオーガニックなオススメをするきっかけを作る。言いたくなるような状況を作る。言いやすくなるような環境を作る。
ファンベースにおいてそこがとても大切になってくる。

(『ファンベース』より)

こちらの方が、よりBtoCの商材を念頭に置いているように読めますが(そして本書の中でもそのような言及はありますが)、BtoBでも十分に通用する考え方です。

なぜファンマーケがBtoBでも効くのか。その解がまさに次のように説明されています。

ファンというと、BtoC(Business to Consumer)のものだろうと思われるかもしれないが、実はファンからのオーガニックなオススメはBtoBでも同じように効く。BtoBの場合、決裁者や担当者がキーパーソンになるわけだが、彼らはすでに導入している企業からその評判を聞いて大きく影響を受けている。

(『ファンベース』より)

企業の情シス担当の方がITツールを導入しようとするとき、真っ先に「導入実績」「導入事例」を欲しがる理由はまさにこれ。
私個人の経験としても、大企業ほど、実は同じ業界内で担当者同士がつながり合い、情報交換をしているという印象があります。
最終的な決裁者は役付の方であったとしても、担当者が決裁者に「あのライバル企業がこれを導入してこんな効果が出ているらしいです」「うちの業界だとこんな使い方で、今のこの業務をこう置き換えるとこんな風に便利になるらしいです」と進言したら、決裁者はグッと来ますよね。

情報を必要としている既存ユーザーや潜在ユーザーに対して、提供側が直接リーチできるように全体をカバーするのはとても大変ですが(そしてそれを広告や宣伝でカバーするには、BtoBであってもマスマーケティングに近い方法を取るしか選択肢がありませんが)、すでに使っているユーザーから聞いたり、知り合いに紹介してもらうことで、適切な人に、適切な情報が行き渡る。その結果、自社のサービスに共感してくれる人が増え、新しいユーザーの獲得につながっていく。

この考え方って、企業による広告・宣伝が世の中にあふれ、効果測定がどんどん難しくなるBtoBマーケティングの手法として、すごく納得感があります。私自身が今とても共感していて、今後もぜひ可能性を探っていきたい考え方です。

さいごに

というわけで、これまでカスタマーエクスペリエンスに取り組む中で読んで来た7冊の本を紹介させていただきました。

ここでご紹介した本は、何かの課題に行き当たるたびに悩んで、解を探しながら読んできた本たちです。
改めて、これだけの完成された知見を惜しげもなく披露してくれた先人である著者の方々には感謝!
自分でゼロから答えを見つけなくても、同じことに取り組んだ他の誰かの知恵を拝借できるというのは、素晴らしいことです。
私自身も、自分の試行錯誤の取り組みが他の誰かにいつかどこかで役に立つと良いなと思いつつ、少しずつですが発信していきたいと思います。

これ以外にも良い本はきっとたくさんあると思いますので、ぜひオススメを教えてください。Twitterあたりで待ってます!

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