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2-7 悩ましき治療方針

麻酔科医に思いを馳せてベッドで待機

麻酔科の受診の月曜日を迎えた。看護師さんからは、正確な受診時間はわからないので待機してくださいと言われた。麻酔科医は激務らしい。ふと漫画「医龍-Team Medical Dragon-」のワンシーンを思い出した。阿部サダヲさん演じる麻酔科医の荒瀬がなかなか強烈なキャラクターなのだが、外科手術の成功は麻酔科医が握るといっても過言ではないという印象を持った。阿部サダヲが「お立ち台~」といって踏み台に上り、患者の血圧、呼吸、脈拍などすべてを管理したうえで麻酔の追加量などを決めていて、麻酔科医が変わった瞬間にチームが変わるというシーンに鳥肌が立った。そんな麻酔科医はあらゆる外科手術に引っ張りだこなわけで、脳神経外科のみならず、消化器外科や呼吸器外科などの手術にも立ち会うことを考えると、トイレに行く時間などないのではなかろうかと思ってしまう。

本命のブラットパッチに対する麻酔科の診断

午後3時頃、麻酔科医師団が3名ほどでベッドまで診察に来てくれた。問診と治療についての説明が行われたが、諸々のリスクを考えるとかなり悩ましい。麻酔科として強くお勧めはしないが、処置は可能とのこと。本日であれば1時間以内希望するか否かを判断せねばならず、難しい場合は金曜まで処置が延期される。既に入院が2週間を超えているため一刻も早く退院したいという気持ちはあるものの、そんなにすぐには決断できなかった。リスクがあるにしても、納得の上で治療に踏み切らないと絶対に後悔すると思ったからだ。

入院中にできる3つの治療の選択肢

①保存治療(神経内科)
点滴による水分補給を続けながら、安静を保ち髄液の生成を促す。(入院初期から継続中)
②ブラッドパッチ(麻酔科)
髄液の漏れている箇所を自身の血液で塞ぐ。
③外科治療(脳神経外科)
背中を開いて骨を取り出し、幹部を縫合する。

②も③も可能だが、リスクもあるので、現在の症状だと強くお勧めは出来ないので①が良いのではないか、というのが、麻酔科と脳神経外科の共通の見解だった。

まず③は命に関わる疾患でない限りは、無闇に手術するものではないという大前提があるらしい。たしかに、脊髄に傷がついて麻痺が残ったらそちらの方がおおごとである。

大本命であった②は、リスクがあるうえに、治癒率の低さがネックだ。事故や怪我などによる外傷がある場合や、検査や手術の麻酔による腰椎穿刺が原因で低髄圧になった場合は90パーセントの効果があるらしいが、私のような原因不明の場合は治療後の改善は20パーセント程度だそうだ。

そもそも、症例数が少ないためにパーセンテージが低く見えるのでは?とか、原因不明の場合、髄液の漏出箇所を明確に特定できない場合と、特定できた場合で治癒率が違うのでは?など、データの精度には多少の疑問が残るところではある。

また、②を選択した場合のリスクで私が最も気になったのは「癒着」だ。仮に癒着した場合のデメリットは「硬膜外麻酔」が使用できなくなること。頻度不明な上に、私は患部が2箇所あるので、どちらも無事な確率はいかほどかと不安になる。

硬膜外麻酔は術中や術後の痛みの緩和ケアに使用されるらしく、腰椎から細い管を入れて、麻酔薬を注入し、痛みがひどい時は自身で手元のスイッチを押すことで、麻酔が増量されて、痛みをコントロールできるらしい。実際に同じ病室で術後の患者さんが利用していたようだ。

自分が今後手術が必要な疾患になるかどうかは正直わからない。もちろん、他の麻酔もあるらしいので、手術が出来ないわけではない。しかし、もし2人目の子供を授かったら、あわよくば「無痛分娩」にしたいなぁと考えており、無痛分娩では硬膜外麻酔が使われるようなので、この選択肢を自ら潰す恐れがある治療には積極的にはなれなかった。

保存治療の継続を選択

最終的には家族同席のもと、主治医の先生とも話して、②は急ぐ必要はないので①でもう少し様子を見る事になった。というのも、点滴を続けたことで症状の改善が見られているからだ。そこで、下記のようなトライアルをしてみることにした。

■点滴の生理食塩水の量を徐々に減らし、その分水を飲む量を増やす。点滴と飲水合わせて1日2リットルが目標
■午前30分、午後30分、継続して座っている時間を作る
■リハビリの先生とも相談しつつ、歩く時間を増やす

これで、痛みが再発したらその際は②に踏み切っても良いのではないかということだ。少しずつ慣らしていき、出来ることを増やすのが当面の目標だ。

千里の道も一歩からである。

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【バックナンバー】
0)疾患についての概略
0-1 その頭痛、低髄液圧症候群ではないですか???
0-2 患者偏差値を上げる行動をする

1)発症から入院まで
1-1 発症 1回目の緊急搬送と誤診
1-2 迷走 原因不明の状態に苦しむ日々
1-3 脱出 迷走終了!入院決定!

2)入院中の出来事
2-1 入院開始 低随圧三大面倒な行動
2-2 検査結果① 低髄圧の勝利をつかむ
2-3 点滴と血管に纏わるお話
2-4 回診で緊張、リハビリでほっこり
2-5 検査結果② 髄液駄々洩れ
2-6 検査結果③ 治療への希望

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