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1-1 発症 1回目の緊急搬送と誤診

前触れのない頭痛

私はもともと痛みに強いほうだと思っている。昔からよく怪我はしていたが、取り立てて騒ぐことはせず、ひたすらじっと我慢するタイプだ。また、いわゆる「頭痛持ち」でもない。肩こりがひどいときに何となく頭が重いと感じることはあるが、鎮痛剤の必要性は感じない。ひどい頭痛といえば、飲みすぎた翌日の二日酔いくらいだろう。そんな私が動けなくなるレベルなのだから、低髄圧による痛みは本当に強烈なものだ。

2019年2月14日(木)の夜のことだった。その日は夫が飲みに行くというので、初めて近所の「こども食堂」を利用したのだが、娘の機嫌は頗る悪く家でご飯を食べたほうが良かったのではと後悔するくらいだった。そんなこともあり、食事中もなんとなく軽い頭痛を感じていたが、店を出て歩き出すと頭痛に加えて耳の違和感があった。飛行機などに乗ったときに気圧が変化して耳の奥がボコっとへこむあの感じだ。「明日耳鼻科に行ったほうがいいかな。頭痛も何か関連しているかな」などとぼんやり考えながら歩き続けた。

今思えばこの耳の違和感が髄液漏れの始まりだったのだ。髄腔内の髄液量が減ると髄圧が下がる。圧縮袋に布団を入れて、掃除機で中の空気を吸い込んでいる様子をイメージしてほしいのだが、この状態と同じように髄腔内の圧力が下がったことで、鼓膜が内側から引っ張られるような状態になったものと思われる。

帰宅後も頭痛は続いたが、なんとか娘を風呂に入れて寝かしつけてからベッドに横になるとすこし頭痛が和らいだので、「大したことなさそうだな」と安易な判断をしていた。この「横になると頭痛が和らぐ」のは典型的な低髄圧症状であるがその時は知る由もなかったのである。

1回目の救急搬送

翌朝起き上がると頭痛は続いていた。整体でコリをほぐすとかいうレベルではなくなってきたので、会社を休み病院に行く判断をした。「なんだかおかしい」と勘付いてはいたが、病名は全くわからない。この日は夫が仕事が休みだったため、娘の支度やら保育園の送り届やらは夫に完全に任せ、ついでに保育園の近くの耳鼻科の予約をとってきてもらった。

予約の時間が近づいたので起き上がって着替えをしたが、頭痛が増している。この時あえてブラトップを着たのは、病院でCTを撮影することを意識したからだ。(男性陣のために補足すると、CTやMRなどの撮影時ブラジャーのワイヤーなどの金属類は外すよう指示されるので、検査がスムーズにできるようにということから。さらにどーでもいい補足情報だが健康診断の時も私はブラトップ派である!)

耳鼻科まで歩いていくことはとてもできそうになく、これは救急車を呼ぶレベルなのではと思い、「救急車を呼ぶか迷ったら」という窓口に電話をして相談したところ、「自分で歩いていけないのであれば呼んでください」と看護師さんから助言をもらった。原因がわからないひどい頭痛というのはそれだけで不安要素が大きく、夫に顔面蒼白で「救急車呼ぶ。迷惑かけてごめん。なんか、ダメかも・・・」といって思わず泣き出してしまった

搬送→病院到着→検査→誤診

特発性低髄圧の悲しいところは「外傷なし・発熱無し・意識明瞭・血圧正常・脈拍正常」という救急隊員からすると「なんで救急車呼んだんだよ」状態で扱いが雑なことだ。当然、しんどいのに救急車まで徒歩で移動させられた。

病院到着後、簡単な問診と検査が始まった。尿検査のために車いすで移動してトイレに行ったが、激しい頭痛により吐き気を催した。その後CT撮影をし、結果が出るまで待合に車いすで待っていたのだが、酷い頭痛で体を起こしていることが辛すぎて、横にならせてほしいと看護師さんに申し出た。ベットに横になると少しは痛みが緩和した。

ほどなくしてCTの結果が出て医師から説明があった。

・腫瘍、血管の閉塞なし→緊急性はなく命に別状なし

・緊張性頭痛か片頭痛もしくはその混合であろう

・片頭痛の薬と吐き気止めを飲んで様子を見よう

とのことだった。ひとまず、「脳腫瘍」と「クモ膜下出血」の可能性が消えたのは良いものの、頭痛持ちでない私が、このレベルの頭痛にいきなりなるのか?という疑問はぬぐい切れなかった。「起き上がると頭痛がひどい」と伝えてはいたが、外傷がないことから医師の選択肢から低髄圧は外されていたものと思われる。薬の効果か吐き気は少しおさまり、頭痛もある程度横になっていることで緩和されたので、さほど快復していないものの渋々タクシーで帰宅した。

TVやネットに流布する「よくある頭痛」

何かわからないことがあると、真っ先にスマホで検索する人は多いと思う。そこで「頭痛」というキーワードを入れると下記がよく出てくる。TVで紹介されるのも下記が多いのではないだろうか?

【命に関わる危ない頭痛関連】→脳腫瘍、クモ膜下出血、髄膜炎など

【よくある頭痛関連】→緊張性頭痛、片頭痛、群発頭痛など

あなたの頭痛はどのタイプ?などでYes/Noに答えていっても、最終的な選択肢に低髄圧はなく、私のように日常生活の中で突如として発生するケースは少ないと考えられているらしい。

また、「起き上がる 頭痛」で検索した場合も上記の頭痛が列挙されるばかりで、なかなか低髄圧にはたどり着かない。「起立時 頭痛」と入力すると低髄圧関連の記述がヒットするが、素人が「起立時」というキーワードを瞬時に思いつくかというとかなり疑わしい。これは病院側も発信方法を変えねばならない点で、簡潔な医学書のような文面だけなく、患者が検索しうるキーワードを織り交ぜて発信することも必要なのではないかと感じる。

◆素人の表現→起き上がると頭痛、横になるとおさまる

◆医師の表現→起立時頭痛、臥床安静により緩和

この言葉の違いで病気にたどり着けない患者は多いのではないだろうか。私もその一人で、低髄圧の可能性を先のnoteで記載した奇跡の人脈の医師たちから告げられるまでは迷走する。

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