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中原中也詩集|大岡昇平編
SNSでふと目に留まった中原中也の詩。
トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです
さっぱり意味はわからないが、「です」がなんだかとてもかわいらしい。
調べて全文読んでみたら、ますます意味がわからなかった。
中原中也との出会いはこんなきっかけ。
屋外は真ッ闇 闇の闇
夜は劫々と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
歌うようなリズム。
宮沢賢治とも違う、独特なオノマトペ。
宮沢賢治は生きてきた土壌が近いこともあって、私のDNAにすうっとなじむのだが、中也は新鮮でなんともかわいらしい。
その時よ、坊や見てありぬ
その時よ、めぐる釦を
その時よ、坊やみてありぬ
その時よ、紺青の空!
中也が愛息子を連れて出かけた博覧会での楽しい思い出。
詩の冒頭は、ささいな場面をいくつも切り取って列挙している。
小さな子の手を引いて笑っている親子のスナップショットように。
その思い出ひとつひとつを「かなしからずや」でとめている。
親子三人で遊具の飛行機に乗り込んだ夕方。
最も幸福であった空間。
広がっていた紺青の空。
最後の『!』が、私には涙と悲痛な叫びに聞こえて、きゅっと締めつけられる。
長男文也を2歳で亡くし、その1年後、中也は30歳の生涯を閉じる。
ゆやゆよんとのギャップが苦しい。
でも、最期までピュアな中也が、私にはかわいくてしょうがない。
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『月夜の浜辺』もよい。