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N|道尾秀介

眉間にしわを寄せながら、読んでいる本は逆さま。
なんてシュールな姿。

『読む順番で、世界が変わる』
読む順番が自由とは重圧でしかない。
選択を誤ったらせっかくの物語が台無しになるかもしれない。
うんうんうなって最初の章を決める。
そしてまた、うんうんうなって次の章を決める。
これは神の遊びか。

すべて読み終えて言えること、それは、
私が選んだ順番こそが最高だ!

私の究極の順番。
笑わない少女の死

飛べない雄蜂の嘘

名のない毒液と花

眠らない刑事と犬

消えない硝子の星

落ちない魔球と鳥

最高だとはいいつつも、おそるおそる、順番を変えて二周目を試みる。
やっぱり神の遊び。

『消えない硝子の星』を読みながら、中原中也の詩を思い出す。

月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちてゐた。

中原中也
月夜の浜辺

誰かの服からちぎれ落ちたボタン。
手にしたボタンを捨てるに忍びなく、そっと袂にいれる。

月に向ってそれはほうれず
なみに向ってそれはほうれず
(略)
月夜の晩に、拾ったボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?

この詩が発表されたのは、中也が息子を亡くしたあとだという。
月夜の浜辺に落ちている小さなカケラに、誰もが命を重ねてしまう。

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