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山頭火句集【700句・イラスト付】|久永堂書店編/冬の部

頼んだラーメンがくるまでの間、種田山頭火の句集をながめてみる。
ビジネス書や短編集を読むこともあるが、ちょうどいいものがたまたまなかった。
たまたまだったが、そのちょうどよさにあらためて気づく。
すぐ中断できるし、再開もしやすいし、どこからはじめてもいい。
外が寒かったので【冬の部】を開く。

種田山頭火は、孤独を詠む俳句として有名。

誰か来さうな空が曇つてゐる枇杷の花

何を待つ日に日に落葉ふかうなる

よびかけられてふりかへつたが落葉林

落葉ふみくるその足音は知つてゐる

落葉ふんで豆腐やさんが来たので豆腐を

誰か来さうな雪がちらほら

『誰か来さうな』って、二回もでてきたし。
よびかけられた気がして「はい」とでも返事して振り返ったら落葉林が広がっているだけ、って。
いやいやこれは。
誰を待っているのかわからないが、お願い、誰でもいいから誰か来て。
できることなら豆腐やさん以外で。

ほつかり覚めて雪

雪が降ってる気配って意外とわかるもの。
布団の中でほっかり目が覚める。
あ、雪降ってる。
障子越しのまぶしい陽の光。
子供の頃、私の部屋は窓に障子だった。
階下の台所では朝ごはんの準備のカチャカチャ食器の音。
その音を聞きながらすうっと二度寝。
山頭火とは真逆なイメージで申し訳なく。

洗へば大根いよいよ白し

愛犬を軽くあしらいながら、抜いてきたばかりの大根を次々と井戸で洗う母。
「ほらー、まっしろだよー」
声高らかに愛犬に自慢する。
そんな昼下がり。

おとなりもをとこやもめのかさこそ寒い

かさこそ。
物音と気配。
現代でイメージすると壁の薄い安アパート。
男やもめで慎ましく暮らしていたら、きっとそんなに大きな音はでないだろう。
お互いに、かさこそ。
なんとなくかさこそって寒い。
ごそごそよりも。

くすっとしたところでラーメンがきた。

「孤独」は、孤立無援で淋しいという感情ではない。「孤独は山になく、街にある」とは、哲学者・三木清の言葉だが、これは孤独とは自分が個性を持つひとつの存在であり、自分を曲げてまで人に合わせる必要もないということを伝えている。孤独というのは人間のもっとも本質的なものであり、孤独だから自分自身でいられるし、強くなれるのだ。

孤独の俳句「山頭火と放哉」名句110選
はじめに

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