老人ホームで死ぬほどモテたい|上坂あゆ美
読書スランプのときに俳句と短歌が気になって、少しずつ触れるようになった超初心者。
俳句にちょっと感情や皮肉をのせたりするのが短歌なのかな、とか。
好みか好みじゃないかの浅い表面をなんとなくで触っていたら、渡辺祐真さん(スケザネさん)のコラムにであう。
『葛の花踏みしだかれて色あたらし』
足元の踏まれた葛の花、そう時間は経っていない、少し先を行く人がいたんだなと思いを馳せて、さて、と歩みを強くする。
自分ひとりの世界。
ここに「肉体の気配」。
『この山道を行きし人あり』
おや、とちょっと顔をあげるだろう。
この道の先に誰かいるというのは心強い。
急いだら追いつけるだろうか。
いや、自分のペースを守って着実に進むか。
気配だけでも、そこにもうひとりの存在が大きく立ち上がる。
最近出会った衝撃的な短歌は、これでもかの肉体だった。
夜勤明けでも一度も休まずお弁当を作り続けてくれた私の母という人。
ありがとうもごめんねも申し訳ないも心配もケンカしてムカつくも頭痛なら寝てていいよもたまには友達のようにパンを買って食べたいのにも全部全部ひっくるめて。
母という人。
春夏秋冬台所に立つ母の背中。
当たり前の光景だったけれど、これが当たり前にできる凄みは子供の頃は気づかない。
ぐっときた二首。