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「Will」と「会社方針」が合わない問題への処方箋

こんにちは。グッドパッチで人事責任者をしているチャッカマンこと井出です。

人材開発シリーズの2本目の執筆です。今回も先日登壇させていただいた際にたくさんの方から頂いた以下の質問について考えてみたいと思います。

・自律型人材育成を推進するため個人に対して自律的なキャリア開発を促していますが、「個人のWill」と「会社の方針」が合わなくなることが心配です。
・自律した結果で辞めてしまう人が増えるのではないかと懸念してます。

確かに個人が自律すればするほど、中には「私はこのままで良いのだろうか?」と考える人も増えるでしょうし、その結果、やりたいことを求めて転職に動く人も出てくることは考えられます。

Willと会社方針の不一致がなぜ起こるのか?

Willと会社方針のすれ違いは、Willを浅いレベルで捉えているケースで多く発生します。ここから詳しく紐解いていきましょう。

Will(キャリア)を構成する要素

実はWill(キャリア)を構成する要素には3階層があると言われています。以下の図を用いながら解説していきます。

村山昇 著「働き方の哲学」より

第1層は「何を持つか」でスキルや知識、人脈などを指し、わかりやすく、自分の努力次第で手にすることも可能です。

第2層は「どう行うか」で行動特性や思考特性が当てはまります。
1層目に比べて簡単には変えられませんが時間をかけて修正していくことも可能です。

第3層は「どうあるべきか」でマインドや価値観です。
この領域はいちばん深いところにあり、自分自身でも認知していないケースもありますが、元々持っているものであまり変化しない領域とも言われます。

そして階層が深いほど抽象度が上がるというのも特徴です。

Willがどの層の話をしているかを探る

ここからは実例で違いを見ていきましょう!
1つ目のケースはこちらです。

【ケース①】
これまでゼロイチフェーズのプロダクトでのUXデザインを多くやってきたので、次はグロースフェーズでの仕事に携わりたいと思ってます。

第1層はグロースフェーズの仕事がしたい話なので経験の獲得「何を持つか」の話をしています。やりたいことは明確で具体的のため、このまま話を進めるとグロースフェーズの仕事に携わる機会があるのか無いのか、ということ以外に話は発展しなさそうです。

次に以下の例だとどうでしょうか?

【ケース②】 
ゼロイチフェーズの仕事をこれまでやってきたのですが、実は同じ仕事の繰り返しが苦手で、新しいことにチャレンジしてないとパフォーマンス出なくなる傾向があります。なので経験のないグロースフェーズの仕事に携わりたいです。

このケースでは個人の思考性(2層目)が理由になっていることが分かります。新しいことに常にチャレンジしたい、が理由なので、必ずしもグロースフェーズ出なくても新しいチャレンジ機会であれば他でも良いかもしれません。

もうひとつケースを見てみましょう。

【ケース③】
これまでゼロイチフェーズのプロダクトに携わってきたのですが、〇〇での原体験からわかりやすい結果にコミットして達成した時のやりがいを大事にしていて、クライアントのビジネス数字にインパクトを及ぼせる仕事がしたいのです。なので、グロースフェーズのプロダクトに携わりたいと考えています。

このケースだと、大事にしたいことはわかりやすい結果へのコミットとそれから得られるやりがい(三層目)、であることがわかります。そこに焦点を当てると、様々な選択肢がありそうです。

いかがでしょうか?
意外と皆さんWillを語る時に「何を持つか」の一層目の話だけをしていないでしょうか?
この層の話は具体的で明確です。それがために他の選択肢では代替が効かないのです。

なぜそれをやりたいと思っているかのもっと深いところにある価値源泉に基づく対話をすると、Willの抽象度は上がり、結果、会社内にある様々な機会との接続がしやすくなるのです。

また、会社内の仕事の深堀も大切です。その仕事で得られるのは表層的な経験価値だけではなく、どんなやりがいが得られるのか、どういう価値観を持った人に向いているのか、仕事についても深く価値を探り言語化をしていることが重要です。

最後に

自律型人材育成という言葉が当たり前になりつつあり、多くの会社の中でキャリアについての対話が積極的に行われるようになり、また個人も真剣に自身に向き合い、自らの意思でキャリア開発を進めるようになってきました。

他方で、キャリアとは何か、Willとは何か、などの言葉の理解が浅いまま対話を進めると冒頭の質問にあったように思わぬすれ違いも起きてしまいます。そのためキャリアについての共通認識を揃えておくことの大切さを感じます。
ただし、知識や質問のテクニック以上に大事だと思うことは相手に真摯に向き合い、興味を持って知ろうとする姿勢ではないでしょうか。それがあれば自ずと深いところにある価値源泉を知ろうとするでしょうし、またWillを実現する方法もまた様々な機会を考えることにもなるのではないかと思います。
そういう中で個人のWillと会社方針が深いところで共鳴しあうことができれば、日本人の会社へのエンゲージメントや労働生産性の低さも改善されていくのではないかと思います。

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