シェア
酒井 章文
2017年8月25日 21:26
★★★★★ 2004年、アリス・マンローが73歳のときに刊行された短篇集。翻訳版は2016年。原題は『Runaway(家出)』ですが、映画化された連作短篇に倣って『ジュリエット』にしたそうです(映画のタイトルは『ジュリエッタ』)。 アリス・マンローの小説がいまひとつ好きではないという友人が、その理由として、なんとなく話がぼんやりしているから、と言っていました。 なるほど。そう言う気持ちも
2017年7月21日 18:28
★★☆☆☆ 2014年に刊行されたアリス・マンローの9冊目の短篇集。オリジナルは1998年に発表されたそうで、マンローは当時60代だったそうです。 いつも褒めてばかりいるので、今回は気になったところを挙げたいと思います。マンローの小説には、個人的に気になるところがあるんです。それは登場人物の把握しづらさです。 マンローの短篇にはしばしばたくさんの人物が登場します。それも5、6人が一気に
2017年6月16日 20:24
★★★☆☆ 現在のところ、アリス・マンローの最新・最後の短篇集となっている本作。2013年刊行(その後に出版されたのは過去の作品のようです)。『林檎の木の下で』の帯に「これがわたしの最後の本」と書かれてましたが、その後にも『小説のように』と本作が出たので、これで最後かはまだわかりません。最後であってほしくないですね。 執筆した年齢もあって、遠い過去のことを振り返っているものが多い気がしま
2017年6月2日 13:38
★★★☆☆ アリス・マンローばっかりですやん、という内なる関西弁のツッコミが聞こえます。仕方ないんです。そういう時期なんです。 原題は『The View from Castle Rock』なので、『キャッスル・ロックからの眺め』といった感じでしょうか。林檎、関係あらへん、とついエセ関西弁になってしまいます。 小説の邦題っていまだに意訳がありますよね。音楽のアルバムだと、英語のままがほとんど
2017年5月19日 17:37
★★★☆☆ アリス・マンローの最初に刊行された短篇集。11篇収録。どれも1980年前後に発表されたものだそうです。 いくぶん粗いところも見受けられるけれど、アリス・マンローらしさはすでにできあがっている印象。文体も視座も確立されています。もっと後の作品と比べると、洗練されていないところはありますが(あたりまえの話)、作品の質は高いです。『ターキー・シーズン』の全篇に溢れる郷愁感と、カラ
2017年5月8日 19:00
★★★★☆「短篇の女王」と誉れ高いアリス・マンローの短篇集。10篇収録。2009年にカナダと英国で刊行されたものなので、ノーベル賞受賞前のものになります(ノーベル賞は2013年に受賞)。「現代のチェーホフ」と評されるとおり、雰囲気と読後感に似たものを感じます。短篇というフォーマットの中でどこまでも深い広がりを見せる力量は他に類をみません。 短篇となると、少ないエピソードや短い時間をさっ