Aki

シチリア島エトナ山の北山麓に在住。ワインとオリーブオイルを造ってます。

Aki

シチリア島エトナ山の北山麓に在住。ワインとオリーブオイルを造ってます。

最近の記事

エトナとスーパータスカンの類似点?

「いまエトナで起こっていることは、かつてのボルゲリと同じだよね」 1970年代からイタリアの品質の高いワインだけを輸入し販売している知人が、こう言いました。ここで言われているボルゲリとエトナの類似点は、その土地で造られるワインのブーム、その現象についてです。 「ああ、そういう見方もあるよな」と興味深く思いましたので、エトナ山のワインの世界で起きたことをざっとご紹介するのに、ボルゲリの例と比較してみたいと思います。 * イタリアワインをあまりご存じない方でも、サッシカイ

    • コントラーダ・バルバベッキ、マグマのためのブドウの収穫

      今年の収穫は、例年よりもずっと緊張しているかもしれない。このCovid19流行下、近隣の市がロックダウンになり、ある意味、神経をすり減らしました。ブドウの収穫作業を止めることがないように、従業員のPCR検査や抗体検査、さまざまな器具や装備など、ワイナリーの皆が健康に働けるためのできる限りの処置をして、もう数日で今年のブドウの収穫を完了します。やっとここまで来たという感覚です。 10月23日、雲ひとつない晴天。数日前には冷え込みましたが、ここ数日は昼の太陽のせいか、やや暖かい

      • 自然派ワインって何なんだ(3)

        フランスで自然派ワインに関する新しいルールができたというニュースが伝えられました。このルールをクリアしたワインが使えるようになる呼称は「vin méthode nature」。 この呼称に関して書くことで、一旦、現時点での私の「自然派ワインって何なんだ」の結論になるかとおもいます。最後まで読んでいただけば幸いです。 さて、Vin Méthode Nature。フランス農業省、INAO(フランス国立原産地品質研究所)、およびJacques Carrogetを代表とする「自然派

        • 自然派ワインって何なんだ (2)

          ローマ市内にあるの有名なエノテカが、イタリア農業警察当局の指導を受け、「自然派ワイン(Vini Naturali)」と銘打ってワインの販売ができなくなったのは2012年のこと。 「自然派ワイン」に定義も、明文化された決まりもない。法律もない。それなのに、「自然派ワイン」と書いて販売するのは、明らかに消費者を惑わせるし、そのカテゴリに入らない生産者へのダメージとなりうる。 というのが、農業警察当局の指導の理由です。 全くその通りだと思います。 自然派ワイン(ナチュラルワイ

        エトナとスーパータスカンの類似点?

        • コントラーダ・バルバベッキ、マグマのためのブドウの収穫

        • 自然派ワインって何なんだ(3)

        • 自然派ワインって何なんだ (2)

          エトナ山のテロワール: 気候や地質、そしてミクロクリマ

          「エトナは、太陽と寒さが同居する、ヨーロッパ随一のぶどう産地だ」 そう言ったのは、ローマ在住のワイン愛好家でした。特異まれともいえる、欧州最高峰の活火山エトナ山が生み出すテロワールは、欧州唯一といっても、あながち間違いでもないかもしれません。 例えば、あなたがワイン産地を巡る旅をしていて、同じシチリア島内のヴィットーリアやマルサラなどに行き、その直後エトナ北山麓を訪れるとしたら、その違いに驚くでしょう(まずは、その気温の低さに凍えて!!)。 真夏の日中、太陽に照らされる

          エトナ山のテロワール: 気候や地質、そしてミクロクリマ

          エトナワインの熱気とルネッサンス

          2000年初頭から、イタリア・シチリア州にあるエトナ山のワインの世界は大きく変わりました。特にここ10年が顕著です。 放置されていた畑は整備され、新たに開墾されぶどう畑になった土地もあります。あちらこちらで新たなセラー建築が進み、新たなワインバーやワインを取り扱うレストランも増えています。世界各地からのジャーナリストや愛好家、また、北イタリアや欧州、米国などの世界各地のワイナリーオーナーやワインメーカーの訪問は絶え間ありません。そして、ここ数年にかけての過剰とも言える盛り上

          エトナワインの熱気とルネッサンス

          自然派ワインって何なんだ (1)

          ワインの世界で、「コーネリッセン」 という夫の姓であり、私たちの会社の名前を、自然派ワインやそれに近い文脈で、取り上げていただくことが良くあります。 しかし、私個人としては、自然派ワインとかナチュラルワイン界隈で出会う欺瞞、定義がないこと、イメージおよび感情優先の議論が多いこと、データが不確かであること、、等々のさまざまな理由で、「自然派ワイン」という言葉の周りにあるものに、正直なところ、良いイメージは持っていません。 もちろん、日常的に私たちの家の食卓には、沢山のいわゆ

          自然派ワインって何なんだ (1)

          赤い山 ティンパロッサ

          エトナ山麓の北側にティンパロッサ(Timparossa)と呼ばれる山があります。 ティンパはシチリア方言では、「高い所」。ロッサはイタリア語そのままで「赤い」の意。ティンパロッサという名前は麓の村々に住む人たちが、「あの高い所で(秋になると)赤くなるところ」という感じで、名付けたのかな。実際に、エトナ北山麓のソリッキャータやパッソピッシャーロ村からエトナ山の高いところを望むと、ティンパロッサのところだけ、秋になると赤〜オレンジ色に色づくのです。 地元の老人たちは、「ティン

          赤い山 ティンパロッサ

          サフラン

          10月後半から11月前半、運が良ければ、ぶどうの収穫が完了した頃。山に自生する野生のサフランの収穫の時期となります。 写真の花。綺麗でしょ。鼻を近づけると、濃厚でかすかに土っぽい、あのサフランの香り... 感覚的にエトナ山の北斜面よりも北東側の方に植わっているのかな。 これのめしべだけ採取して、乾かして、サフランとして使用できるようになります。

          サフラン

          石ころだらけの葡萄畑と石塚

          エトナ山北山麓のぶどう産地をドライブしていると、突然ピラミッドか遺跡のような石の建造物や石ころを積み重ねた山に、あちらこちらで出会います。 ぶどう畑が連なるところに、いきなり出現するので、一体どんな歴史的建造物なのかと疑問を抱く人もいるようですが、これは、ぶどう畑で拾った石でできた石塚です。 この石塚、地元ではエトナのピラミッド、トゥレッテ(Turrette)などという名で呼ばれています。200年以上前、この地方の子供達の仕事はぶどう畑の石拾いでした。石は、小さなものから

          石ころだらけの葡萄畑と石塚

          エトナ山麓 夏の終わりのバール

          「白ぶどうはいつ収穫する?」 「来週雨らしいから、その前に行こうと思ってるよ」 「ああ、うちも同じ」 「うちはもう〇〇の畑は終わったよ」 なんて会話が、朝のバールで繰り広げられる9月の初め。8月の後半くらいから、収穫の準備や収穫前に終わらせておきたいワイナリーの整備などで、エトナ山麓のワイナリーは忙しくなり始めます。9月に入ると、まだまだ終わらないワイナリーの整備や諸々の事務手続きなどに追われながら、これから始まる収穫時期のために心を整える。そんな時期。 畑の環境(標高や

          エトナ山麓 夏の終わりのバール