自然派ワインって何なんだ (2)

ローマ市内にあるの有名なエノテカが、イタリア農業警察当局の指導を受け、「自然派ワイン(Vini Naturali)」と銘打ってワインの販売ができなくなったのは2012年のこと。

「自然派ワイン」に定義も、明文化された決まりもない。法律もない。それなのに、「自然派ワイン」と書いて販売するのは、明らかに消費者を惑わせるし、そのカテゴリに入らない生産者へのダメージとなりうる。
というのが、農業警察当局の指導の理由です。

全くその通りだと思います。

自然派ワイン(ナチュラルワイン)という言葉に法律的な定義は一切ありません。

欧州内のいくつかのナチュラルワイン生産者団体が、その団体への参加規則を持っています。それを持って、自然派ワインの定義としても良いかもしれません。私たちも数年前まではそれらの団体に所属していました。おおよそは、野生酵母使用、培養酵母NG、フィルタリングNG、農家からの購入した葡萄NG(自社栽培のみ)、二酸化硫黄添加NG....などなど、団体により様々な定義があります。

でもね、その団体には法的拘束力なんてないんですよ。
その団体は、生産される全てのワインを検査するんですか?---しません。
その団体は、ぶどうが栽培される畑で化学肥料が使われていないことを誰かが検査するんですか?---しません。
団体に参加すると、セラー内の立ち入り検査があるんですか?---ありません。

じゃあ、何を持って、その造り手が自然派ワイン(ナチュラルワイン)を造っていると言えるのでしょうか?
ナチュラル好き業界によくある、、「雰囲気」?

ジーパン履いてネルシャツ着て、試飲会に登場したら、自然派ワインの造り手ですか?
机を庭に並べて、地元のパンやオリーヴを並べた昼食でお客様をもてなしたら、自然派ワインの造り手ですか?
本人が「自然が好き、サステーナブルな農業を目指す」と言ったら、自然派ワインの造り手ですか?
バイオダイナミックの真似事を部分的にしてたら、自然派ワインの造り手ですか?
畑の病気対策にボルドー液だけを使っていたら、自然派ワインの造り手ですか?

考え方は人それぞれですし、自由です。

ただし、唯一の法的拘束力のある(つまり、嘘をつけば処罰を受ける)のは、ワイン界隈では有機認証だけです。有機認証では、二酸化硫黄添加量、および畑での重金属散布量(ボルドー液は銅と亜鉛でできてます)などが制限されています。書類だけの審査ではなく、抜き打ちで審査員が訪問してくることもあります。

小規模な生産者の中には、有機認証はお金がかかるし、拝金主義的だと批判する人もいます。大手ワイン生産者も近年では有機認証取得をしようとしている会社も多くあります。本当に拝金主義なんでしょうか?

正直、「ナチュラル」志向の小さな生産者の曖昧さを目にしてきて、疑問に思うことが何度もありました。私自身の感覚でしかありませんが、むしろ大きな企業の方が嘘をつきづらい環境にあるような気がします。監視の目がありますから...

次回の記事

---

前回の記事


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?