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石ころだらけの葡萄畑と石塚

エトナ山北山麓のぶどう産地をドライブしていると、突然ピラミッドか遺跡のような石の建造物や石ころを積み重ねた山に、あちらこちらで出会います。

ぶどう畑が連なるところに、いきなり出現するので、一体どんな歴史的建造物なのかと疑問を抱く人もいるようですが、これは、ぶどう畑で拾った石でできた石塚です。

この石塚、地元ではエトナのピラミッド、トゥレッテ(Turrette)などという名で呼ばれています。200年以上前、この地方の子供達の仕事はぶどう畑の石拾いでした。石は、小さなものから、10kgはゆうにありそうな大きな石の塊まで。畑で拾った石を少しずつ集めてできた石の山。

常に噴火を続けるエトナ山、その土壌に有機層は比較的少なく、表層は石だらけ。今でこそ、時代が変わってしまい、石拾いの子供達の姿をみることはないけれど、昔は畑作業に忙しい大人たちの横に、石拾いをする子供達の姿があったのでしょう。

石といえば、エトナ山のぶどう畑の多くはテラス状の段々畑。テラスをつくるのは、セメントなどを含まない石壁で、その特性からイタリア語ではムーロ・ア・セッコ(Muro a secco)と呼ばれています。

これも1つ1つ手作業。エトナ山の火山石を組み合わせ、時には大きな岩を都合の良い大きさに砕き、パズルを完成させるように様々な形の石を積み上げ、壁にしていくのです。

セメントなどで接着しないため、当然、雨や時間の経過によって崩れる部分もあります。寒い冬の間、ぶどう畑では、ぶどう樹の剪定作業を進めるその一方で、この石壁の補修をします。

段々畑を所有するワイナリーは、そのテラス状の美しいぶどう畑を次の世代に残すべく、毎冬のこの作業が必須。全て手作業で行うため、時間もコストもかかります。しかし、自分たちの伝統を守り、エトナの風景を守っていくことは、私たちの仕事の誇りのようなものでもあるのかもしれません。

(2018/9/21の記事)

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