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サステナブルで使い捨てない広告を真剣に考える。

この夏、オリンピックの中継やニュースにチャンネルを合わせながら気付いたことがありました。
間に流れるオリンピック期間の広告が、過剰な程に立派だと感じてしまったのです。言ってしまえば、ちょっと白々しいなという。
開催に関して賛否両論あっただけでなく、その裏側も立派とは言えない状況であることを連日のように目にしていたからでしょうか。

私は昔から、このちょっとした白々しさを広告というものに感じてきました。そして、仕事として広告制作に関わるようになってからは、白々しさをどうすれば視聴者の中に生まないで済むのか、極端にいえば、それだけに注力してきたように思います。

企業の想いを直接聞けば、過剰な立派さを感じるようなものはほとんどなく、地に足のついたものだと実感できるのに、なぜ広告にすると紋切り型で白々しくなってしまうのか?

地に足のついた企業の想いをどうすれば、白々しさを感じさせずに伝えることができるのか。広告の企画や演出においてあの手この手を使ってはみましたが、どうしても納得のいかない部分が最後まで付きまとってくる。

そもそも、この白々しさが広告の仕組みそのものに付いて回るもの、というのが、最近になってようやく分かってきました。
フリーの映像ディレクターから経営者へと転身しつつ、20年以上も広告に携わってきて、ここに今更気づくというのも何なのですが。

でもそれだけ、自分の中では悩みと言ってもいいほどのものでした。
広告では、本当の意味で企業と世の中をつないだ気持ちになれない
どこか、翌日には嘘だと思われたり捨てられたりしてしまうものを、自分は作り続けてるんじゃないかと。そういう気持ちが消えませんでした。

フリーのディレクターから経営者となり、クライアント企業の想いを聞く機会がずっと増えたこと、また経営者としてインナーブランディングに取り組み、企業の何を伝えるべきで、それがなぜ伝わりづらいのかを自分ごととしてよく考え始めたことにより、ますます広告の仕組みそのものへの疑念が強くなってきました。

もしかすると私の中には、この広告という仕組みに対するアレルギーがずっと存在してきたのかもしれないなと、そのように気付いたのです。



オリンピック期間の広告を見ながら、この夏に私は強く思いました。
広告は今、大転換期のまっただ中にいる
そして今までのやり方の広告は、近いうちに終わるのかもしれない。
そう思えたのは、もしかすると私と同じように感じている人が世の中に増えてきたかも、という淡い期待からなのかもしれません。

こんなにも動画を流す場所が増えたのに、広告というコンテンツだけが硬化し、行き場をなくしている。
私だけでなく広告を打つ企業の方々だって、どこか納得のいかない思いを抱えているのではないかとも思います。
これは作る側、受け取る側、どちらにとっても不幸な状況です。

この不幸な状況を終わらせるために、何ができるのかを考えてみました。
具体的には次の2点です。

・どうしても馴染めなかった広告の仕組みの、どこが問題点だと私が思っているのか?

・そしてそれに代わる手法について、SUGOIはどのように考えているのか?

この2点について話していきたいと思います。

ぜひ広告について興味のある方、また今までの広告の表現や作り方に不足や迷いを感じていた方。「広告から抜け出たこれからの道」のことを具体的にお話ししていきますので、最後まで読んで頂けると大変嬉しいです。


⒈ 広告はおそろしく持続可能性が低い

これほどまでにSDGsが注目される昨今において、広告にまったくその香りがしないというのはどういうことなんでしょう。

SUGOIでは、あるクライアント企業にこのように提案したことがあります。

「作った映像を、この先ずっと使えるようにしましょう」

これ、実は広告業界では御法度なんですよね。
広告だけでなく、あらゆる業界で御法度かもしれない。家電製品だって車だって、ある時点で買い替えを促すような仕組みになっています。

一度作った映像を捨てて、新しいものを作り続けなければいけない。
広告というのは、身も蓋もない言い方をすれば、使い捨てを推進することで成り立ってきた側面があります。

その「作り直し」の理由は、空気として古くなった、時代に合わなくったというもの。
その感覚は、確かに映像やグラフィックを見る限りわからないでもないですが、そもそも古くなってしまう理由が仕組みの中に最初からあるんじゃないかなと、実際に作ってきた私はそう感じていました。

最初から長く使ってもらう前提でないため、メンテナンスの余地もそこにはなく、結果使い捨てて当然となってしまう。


広告というのは、商品との接点をユーザーとの間に増やすために存在します。
身も蓋もない言い方をすれば、「撒き餌」のイメージがぴったりくるのだろうと思います。たくさんの魚が泳いでいる中で、何割かの魚が食いついてくれたらいいなぁという。
この考えでは消費者は魚ですので、心の通い合う対象ではないイメージを抱いてしまいます。広告におけるマーケティングやセグメントの思考で、どこか冷たさを感じるのはそこが理由かとも思います。

でも、どんな企業人も、仕事を離れればいち消費者なわけです。心の通い合いに充実感を覚えて当たり前なんですよね。

私は、性格的にプライベートと仕事の間の気持ちに線を引きたくないというタイプです。なぜかというと、必ず持続できなくなるから。
自分の中の持続可能性を高めるためには、そこに線は引けないんです。そんなことについて、以前渾身の思いを込めて記事を書きました。


私は、これまでもずっと持続可能性、つまり自身のサステナビリティを高く持つことを意識して生きてきました。

この意識は今まで広告の仕事をするに当たり、「邪魔なめんどくさいもの」であり、「水が合わない」ものであり、それゆえアレルギー的に私自身も不器用に葛藤してきたのですが、サステナビリティについて真剣に考えざるを得ない時代に突入していく中、ついに自分の身を削って考え続けてきたこの感覚やノウハウを、広告に生かす時が来たんじゃないかと思ってしまうわけです。

⒉ これまでのチャレンジ、代理機能を抜いてみた

広告に納得できないと言いながら、SUGOIではこれまで広告を多く作ってきました。創業した時に私が心がけたのは、できる限り、クライアントと制作者が直で結びつく仕組みでした。

CM制作で言いますと、当然と言ってはそうですが、ホームビデオを回すように簡単にはいかないんですよね。
まずは広告の枠を確保する、広告プランを企画しプレゼンする、制作や運営を管理するという目に見えない仕事があります。ここがこの夏のオリンピックにまつわる各種報道で、大きく話題になりましたね。

現場でタレントの方をカメラマンが撮り編集するというだけでも、目に見えない仕事を請け負う会社が、数多く関わっています。

そんな中で、私の経験上シンプルで気持ちがいいなと思ったのは、個人看板で仕事をしているタレントさんや芸人さん、モデルさんと現場をご一緒した時でした。非常にコミュニケーションがスムーズで明朗会計であり、気持ちが良かったことを覚えています。
これは当然ですが、結果的にはクライアント企業の利益につながってきますので、SUGOIのモットーとしても、コミュニケーションや見積もりが明朗であるということは大事にしています。

なのでSUGOIでは起業当初から、よく精査するとこれは自分たちで出来るなというものは、ルールを少しずつ崩して全て自分達でやるようにしました。コストを抑えるためでもありますが、一番大きいのは曖昧で複雑な意思疎通によるストレスを減らすためです。

私は経営者でもありますが、日常的にスタイリングや小道具の調達も簡単なものなら自分でやります。カメラだって自分で回すこともあります。
なぜなら、プロフェッショナルにこだわり過ぎるよりも、現場でクライアントを始め色んな人が意見を言えたほうが風通しよく、良いものが仕上がりますので、そこを重視するようにしています。その一方でプロに依頼する必要を感じた時にはもちろん、相応な企業や個人に外注します。

SUGOIのこのスタンスによって、クライアント側からしたらよくわからない経費や何重にも重ねなければいけない連絡の手間やコストを、抑えてこられたと思っています。
広告を作るならかなりの予算をかけなきゃという不安は誰もが持ち合わせていることかもしれませんが、こういうものって、工夫の余地さえあれば何とかなるものなんです。

ただ枠組みから飛び出す勇気がないから、お金で安全を買うことになってしまいますよね。

これ、日常の消費行動に置き換えてみても誰もが思い当たることだと思います。お金で丸っと任せてもいいし、ちゃんと手をかけて話し合いながら納得いくものを作るのもいい。
要は、広告の作り方にもニーズに基づいた選択肢を増やしたかったのです。


⒊ 次への助走、「答え」を簡単に出してはもったいない

そうやってSUGOIは広告を作ってきたのですが、やはりアウトプットする制作物は広告なのですから、既存の枠というルールに則ったものでした。

クライアント企業の商品やサービスにかけてきた想いを細かく伺うたび、そして企業のブランディングというものに携わる機会を頂くたびに、私はこの広告的なアウトプットではその大事な想いが表現しきれないことに、もどかしさを感じてきました。

広告って、先ほど書いたように一種の「撒き餌」ですから、パッと見た瞬間に「おっ、食べ物だ」「いい匂い」「美味しそう」というイメージが伝わる訴求が正しいとされています。
つまり、短い時間でなるべく強い「答え」を言う

商品の売れる数をただ増やしたいならそれでいいんです。ですが、この「答え」はすぐに古くなります。世の中の気分はものすごいスピードで移り変わりますし、競合する相手も当然ながら同じような訴求をするので、消費者は油断するとすぐに離れていきます。それを振り向かせる新しい「答え」を、すぐにまた用意しなければならないんですね。
これが私の思う、広告のサステナビリティの低さ。使い捨て文化。


なぜ早々に捨てなければならないものを作る必要があるのか。
実際には、企業の中には商品やサービスにかけた熱い想いや社内風土というものがあるわけです。そういう価値あるものに、映像一本を作るたびに私達は触れるわけです。
けれど、アウトプットとしては広告なので、一瞬でわかる訴求ポイントしか盛り込めない。もっと企業やブランド自体に惚れさせる要素がそこら中に転がっているのに、表現のしどころが、現実には無い。まるで素晴らしい食材のほんの一部だけを皿に載せて、あとは捨ててしまうような罪悪感があります。

「新しい仕組みを、私たちと一緒に考えませんか?」

そんなことを思っても、それをクライアント企業に広告の打ち合わせの場で伝えることは難しいものでした。
実際に何度も口にしましたが、私の力が及ばなかったようです。なぜなら、今は事実として誰もが既存の仕組みしか知らず、それを作るというマインドセットになっているのですから。

「なぜそんな理想論を語るんですか?」

こんな反応で片付けられてしまうこともよくありました。それに対して、伝えきれない自分の不甲斐なさを悔いるばかりでした。

⒋ ここからのチャレンジ、使い捨ての「答え」を出すのはもうやめないか?

冒頭でも話しましたが、私は広告そのものが悪いと言ってるわけではありません。
ただ、私の中には広告を作る際にアレルギー反応が出てしまいます。
一般的にアレルギーがあると、食事や日々の活動を気持ちよくできません。
なのでアレルギーの原因を突き止め、なるべく除去することがとても大事になってきます。
自分の場合、アレルギーの対象は今までのやり方で広告を作ることでした。
ここにで気付けてよかったと思っています。

私の性質に合っているもの。それは、広告よりももっとブランディングに近いもの。企業の想い、商品やサービスにかけた想いや葛藤、試行錯誤、努力のプロセスに触れてもらい、そこから商品への購買へとつなげていく・・・これが大事だと思いました。

そのような仕組みでないと、自分の中の持続可能性という尺度には、作るもの、そして普段の仕事の内容が合わないな、ということです。

アパレル業界は今、変化の突端にあると聞きます。
広告のように古い映像をお蔵入りさせるのとは違って、衣料の廃棄は大きな環境負荷を目の前に突きつけてきます。
だからこそ、サステナビリティへの意識や取り組みが広告よりもずっと進んでいる
大量に作ったものに安値をつけて大量消費させ、その回転で業界を成り立たせるという仕組みを変えることが必要と、生産者と消費者の想いをカギとして結びつける取り組みが、そこかしこでチャレンジされています。

私はこういう取り組みが、当然ながら広告で起きてもいいと思うのです。いや、起きるべきだと思っている、の方が正しいかもしれない。

テレビCMが全盛期だった80〜90年代に比べると、今は広告の価値が下がり、広告をスキップする権利をお金で買う、その状態を「プレミアム」と呼ぶことも日常となってきました。

では、企業の想いはどのように届ければいいのか。
消費者は、どのようにして良い商品やサービス、自分が心惹かれるブランドに出会っていけばいいのか。
今まで以上に真摯なコミュニケーションを、今までとは違ったやり方で生み出していく必要が、喫緊に生じてきています。
特にこの夏の混乱を国中が経験し、まだそれが続いている、今だからこそ。


そう考えたSUGOIは、この秋から新しい手法へと飛び込み、これをサービスとして展開していこうと決めました。

もう一時的な「答え」を世の中に発信し、古くなったら捨ててまた新しく作るやり方とは、全く別の発想や手法が生まれてもいいんじゃないか?
これは広告を否定しているのではありません。選択肢を増やすのです。
我慢して既存のやり方をなぞっている人がいるならば、自分はこうしたい、という想いにフィットするやり方を一緒に作りませんか?

SUGOIはこの秋から11期目に突入します。
ここからは、「答え」を出すのでなく、「約束」を表現するムービーを作りたい。今、心から自信を持って、そう思っています。

「約束」のムービー。分かりづらいですよね。

ブランドムービーという言葉に変えればもう少しイメージが湧きやすいでしょうか。次の記事でその具体的内容についてしっかり語っていきますので、ぜひ楽しみに読んでみて下さい。


続編はこちらです ↓  


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