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未だに日本には近世身分の残滓が資本主義の階層の中にある

まえがき

 日本は英国と違い特権階級が無く、明治以来四民平等を謳っている。

 そして日本はそれ以来身分制のない平等な国と人々は思っているだろう。

 確かにそういう面はあるが、残念ながらそれは少し違う。

 身分制は残っていなくても、階層の違い、つまりある一定の富裕層という存在だ。 

 彼等の中には江戸時代の身分制と深く関係している者もいる。

近世身分制から近代資本制へ

 日本は幕末から明治時代にかけて西洋の考え方を取り入れ、近代化した。

 その時に身分解放をして、皆は平等な臣民(天皇に仕える民)になったのだ。

 とは言え日本の国家作りを担ったのは結局伊藤博文、山縣有朋等の武士身分達だ。(Wikipedia等で無作為に調べてみたら良い。大体は江戸時代に苗字帯刀を許された一族ばかりだ)

 そして国作りをする人達やキャリアのある人達は基本的に(勉強を含め)賢くなければ出来ない内容ばかりだ。

 となると幕藩体制時代から読み書きを前提に難しい勉強が出来る人達でないと務まらない。

 つまり江戸時代の武士階級の人達になるのだ。

 そういう人達は職業による高収入になり、資本制の上位層になる。

 確かに貧乏な人間でも賢かったら立身出世出来る希有な人達もいた。しかしそういう人達は結局どこかで難しい本を読める環境があった。そうでないと開花も出来ない。

 結局環境に恵まれてないとかなり難しい時代だ。

庶民との資金面での違い

 一代で会社を大きくし、資金を増やす人達はいつの時代にもいる。

 日本の億万長者ランキングを見てもそういう人達が沢山いる。

 いわゆる叩き上げの人達だ。

 しかし逆にこういう人達は一部しかいないのも我々は分かっている。

 なかなか少ない資金から大きくするのは並大抵ではない。

 では叩き上げでもないのに、ある人がそれなりの資金を持っているとして、なぜそれだけの量を持っているのか。それは親が資金を持っていたからだ。

 その親が資金を持っているならその親が持っている。その親が持っているなら……と続く。

 小から大に大きくするよりも親から子へ資金をスライドする方が遥かに一般的だ。

 野村総合研究所にこういうデータがある。

出典:株式会社野村総合研究所

 そしてこのデータから分かるのはそれぞれの層の増加である。

 なぜ増えたのか。引用元の文を要約すると、準富裕層の富裕層化、(超)富裕層の相続や生前贈与による子世帯の(超)富裕層化、自らの企業による富裕層化だそうだ。

 ではなぜその親達が富裕層なのか。

 そこで富裕層のみが載っている『人事興信録』という本が存在する。

 名古屋大学が一般公開している昭和3年の『人事興信録』を見ると全国で39133人が載っているそうだ。昭和5年で全国総人口が64450005人なので、わずか0.0607%である。その半数が会社員だそうだ。(ただグラフや表がないのは残念だ)

 また『人事興信録』の研究内容を読んでいると、事業の拡大による富裕層同士の親族ネットワークを作っていくという話が出てくる。

 つまり富裕層の親戚は富裕層システムだ。

 また昭和の富裕層は旧公卿家、旧大名家、大事業家達(ほぼ平民)に分けられている。

 とはいえ平民も結局先祖は幕藩体制に難しい本を読めた家柄(例えば庄屋等)でないと難しい。

 第一次世界大戦後景気でのし上がった者以外はそういう家柄だ。

 つまり叩き上げの人達以外は元からそういった家柄の子孫達が富裕層になるのだ。

 そして戦後になり財閥解体や農地解放が起き、高い財産税が出来て旧財閥の資産は激減する。そして長者番付では叩き上げの創業者一族がトップになり、世界的に見て富裕層の割合は少なくなった。

 しかし逆に考えれば旧財閥以外の人達は別に財産を急激に減らされてはいないのだ。

 資産を維持しにくくなった現代になったとはいえ、江戸時代から続いている家柄の富裕層達も現在までその子孫達がそれを継承しているのだ。

庶民との教育面での違い

 戦前帝国大学にいけたのは一部のインテリ層しかいけなかった。

 ほとんどの家庭では尋常小学校卒業したら働かなければならなかった。つまり資金に余裕のある人間しか大学に行けないのだ。

 結局はここでも資金の話になるのだ。

 戦後でもそれは変わらない。

 良い大学に行けば行くほど良い給料を得やすくなる。

 そうすれば資金に余裕が出来、教育にお金を回せれるという訳だ。

 資金力がないと、高校卒業したらすぐに働かないとならない。

 だからここでもたたき上げで資金力を溜めた家庭か、元から裕福な家庭かの二択しか高等教育まで資金を回しにくいのだ。

庶民との精神面での違い

出典:株式会社野村総合研究所

 このデータによると、親リッチ(親がリッチ)を持つ人の方が親を精神的に頼っている割合が高いそうだ。

 つまり親に依存しているのだ。

 これは別に悪いことではない。逆に言えば家族との結びつきが強く精神的に信用しているのだ。

 こういう話がある。

 愛知県の名門古橋家では代々『源六郎』の名を襲名し、『公益の為に尽くす』という家訓があるそうだ。

 この家は豪農で知られ、現在は名古屋を中心に色んな業界の要職に就いている。

 だからこう言った人達は家族、家柄、家訓を大事にするのだ。

まとめ

 現代日本は比較的下克上をし易い環境だ。
 
 ベンチャー企業がそうだ。だからのし上がれる。

 しかし資金力がないと、色んなことが出来ないのもまた事実だ。

 だから叩き上げ以外は江戸時代から続く上層身分の子孫の富裕層達がある一定層存在するのだ。

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