分かりやすい物理学のお話~佐古昭博 編~
僕は東大、旧帝大のような名門大学には出ていない。ただの一介の地方国立大学工学部生だ。
ではこのひしめくnoteのメンバー達と学問で闘うに僕は何が出来るかと問われた時、それは分かりやすく説明することだと思った。
だから少しでも物理を分かりやすく説明できるよう努力しようと思う。
物理の基本はやはり数式なので、出来る限りそれを分かりやすく使おうと思う。
時間と変位と質量
この三つ無くして物理は語れない重要な概念だ。一つずつ紐解こう。
(1) 時間
これは日常でよく使うので、あまり説明は不要だろう。
ただ物理学の世界では秒[s]を基準に考えるのが一般的だ。
(2) 変位
これは数学でも習ったと思うが復習しよう。まず勘違いしやすいのは、移動距離との違いだ。
移動距離はA地点からB地点まで移動した距離だ。
そんなの簡単だよ。
そうだな。そして変位はA地点からB地点までの最短の距離となる。
ん? なんか違いが分かりにくいな。
そうだな。移動距離というのは寄り道したとして、その距離も測るが、変位は寄り道したとしてもそれを無視して初めから終わりの線分の長さのみを測った距離なのだ。
(3) 質量
物理を習ってまず始めにつまり易いのはこの質量だ。重量(=体重)との違いでこんがらがる。
大体日常で質量として実感する機会がない(まぁ、あると言えばあるので後で説明する)。
これは正直に(後で説明する)運動方程式を見て実感した方が良い。
ma = F
上式が運動方程式であるが、mが質量でFがここでいう重量である。aは加速度というこの2つとはまた違ったものだ。
これじゃあイメージが分かりにくい? よし、なら現実で実感出来る話をしよう。
台車に人を乗せる。それをそのまま押してみる。押す力がいわゆるFで、その人が質量m、そして徐々に移動する距離が速くなるのが加速度aだ。
ではなぜ重量と質量が混在しやすいのか。それは体重計が厄介の元だ。体重計はその人の質量ではなく、重量という力から9.801を割った値なのだ。
は? 何言ってんだ、体重50kgから9.801で割ったら5.1しかないだろうが?
そう、確かに体重計の数字をそのまま計算したらそうなる。
しかし実は物理学の考え方では体重計の単位は[kgf]なのだ。
ここで単位の説明をするが、mは[kg]で、Fは[N]または[kg・m/s^2]と表す。
いやいや、重量の単位めっちゃ質量の単位の形似てるやん。同じ違うんか?
それが残念ながら似て非なるものなのだ。
さっきも言った通り重量は力なのだから[N]≒[kgf]なのだ。
は? “≒”はなんだ? 何で同じなのに“=”じゃないんだ?
正確に言うと、力[N]=9.806×重量[kgf]だからだ。そして9.806というのはただの数字なので、単位は変わらないのだ。
つまり、力[N]/9.806= 重量[kgf]となるのだ。
なるほど、じゃあ力はどう出す訳?
それはさっき説明した運動方程式になる。(ここで重量の時は加速度aではなく重力加速度gと書く)
例えばm=53kgの時、g=9.806[m/s^2]なので、
53kg×9.806[m/s^2]=519.718[N]
となる訳だ。
そして519.718÷9.806=53[kgf]となる訳だ。
なんだ。結局同じ数字になるじゃないか。
確かに今回の場合の数字は同じだが意味は違うし、時には数字が変わるのだ。それはなぜか。それはgは地球からのいる高さによって値は変わるからだ(ただし、ただの数字の9.806は一定)。
どういうことだ?
実は高度が高くなるほど、重力加速度の値は変わる。例えば高度2000km(富士山の7合目辺り)だと、重力加速度は5.6895[m/s^2]になり、さっきと同じ計算をすると、
53kg×5.6895=301.5435[N]
となり、これを9.806で割ると30.751[kgf]となる。だから、質量は同じでも重量は変わるのだ。
だからこれで質量と重量が違うのが分かるだろう。
は? 何言ってんだ。富士山の七合目に行ったって体重は変わんねーだろ?
そう、それが物理学のいう質量なのだ。変わらないのが質量で、変わるのが重量なのだ。
その人の身体の量自体は変わらない。これが質量だ。力は重力加速度で変化するので、力である重量は変化する。
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