3.11から5年

3.11について書く。東日本大震災から、今日で5年が経った。

もう、3.11が起こらなかった世界を考えることができない。昔のことを振り返る時、あれは3.11の前、とか、あれは3.11の後、とか、あの日が基準になってしまっている。


5年前のあの日、私はまだ19歳で、大学1年生になって初めての長い春休みを過ごしていた。珍しく自宅に居た。明日からのサークル合宿の準備をしていたのだ。

奥の部屋で姉が「地震!」と叫んだ時は、まだ地震に気付いていなかった。和室の入口で、天井から吊り下げられている照明が揺れているのを見て、やっと地震と認識した。

すぐ止まると思っていたのに、どんどん横揺れが増して、照明もぶらんぶらん揺れて、母が慌てて玄関のドアを開けに行った。

ますます揺れが激しくなり、小学生の時の避難訓練を思い出して、ダイニングテーブルの下に身を隠した。棚の上に積み上げられていたお洋服がどさっと落ちるのが、テーブルの下から見えた。椅子にちょこんと座っていたダッフィーとプーさんのぬいぐるみが目の前に降ってきたから、思わず彼らを抱きしめる。

リビングには大きな食器棚と大きな本棚があり、それらがガタガタ音を立てて揺れ始め、つっぱり棒もしてないし、これが倒れてきたら死ぬかも、と思った。そう言えば、「地震があった時にリビングに居たら危ないね」なんて話、いつもここでしていたじゃないか。

机の下から飛び出して、散乱した荷物を避けながら廊下を走る。まだ激しい揺れは続いていて、何度かよろけて、壁に激突しながら走った。

母が「えぬちゃん! リビングは危ないから!」と玄関から叫んでいた時、私は玄関に辿り着いて、向かいの自室に飛び込み、勉強机の下に滑り込んだ。

姉と同じ部屋なので、姉も自分の机の下にちゃんと潜っていた。玄関を通り過ぎた時、確か地面に座り込んでいた母を認識した。

どうにか揺れが収まった、と思ったらすぐに2回目の大きな揺れがきた。それが落ち着くまで、勉強机の下でぬいぐるみを抱きしめながら悲鳴をあげていた。

……と、思う。


2回目の揺れがおさまった後、また来るかもしれないと、マンションの人たちと少しだけ外に避難した。9階の住人が「食器棚が倒れて、全部割れてしまった」と言っていた。

私の家は、本棚が少しずれたのと、玄関のドアベルが落下して壊れたくらいにおさまったのでラッキーだったと思う。


それ以降は報道の通り。コンビニやスーパーには何もなくなって、テレビからは悲惨な映像が流れ続けた。

私たちは事態が落ち着くまで、家族揃ってリビングでテレビを見ていたけど、すぐに耐えきれなくなって、ラジオに切り替えた。ラジオからは励ましの言葉と、明るい音楽と、子どもが喜ぶ童謡が聞こえてきて、少しだけ気が紛れた。


3.11の翌日、余震の度に目が覚めて、あまり深く眠れなかったけれど、携帯にはたくさんメールが届いていた。それは全部大学の友人や先輩、良くしてもらっていた大学の職員さんからのメールで、私たちはお互いの無事を知って、本当に喜んだ。

12日から予定していた合宿はもちろん中止。合宿先は茨城県の神栖市だった。幸い、津波に襲われることはなかったけど、液状化現象とかが起こった地域だったと思う。友達の故郷だったので、大事に至らなくて本当に良かった。

3.11から一週間、私は家を出れなかった。先輩と遊ぶ約束をして、やっと重たい腰をあげた。電車を乗り継いで大学の最寄り駅まで行って、先輩の家でコードギアスを観ただけだったけど、ああやって連れ出してもらわなければ、もっと外に出るのに結構時間がかかったかもしれない。

震災からすぐに、東京は日常を取り戻した。でも、これまでにはなかった“自粛ムード”が起こり、大学の卒業を控えていた姉は、卒業式が中止になったし、もちろん私の通っている大学でも、入学式は簡易的に行われた。4年間の中で最も大事と言っても過言ではない卒業式を、生涯の友人と祝福し合えなかった姉は、本当に残念だったと思う。


この間ニュースで、あんまり詳しく思い出せないのだけど、被災地の方が5年経つことに対して「ただ5年が経っただけ。復興は進んでいない。我々はスタートラインにすら立てていない」というようなことを仰っていたのが印象に残っている。

確かに“ただ”5年が経っただけなのかもしれない。

私も、3.11に対して自分の中で上手く処理し切れていないことがたくさんあって、3.11に纏わるニュースを見るのを避けてしまう時がある。3.11の被災者ではないし、幸いにも身内や大切の人を誰も亡くさなかったのに、だ。

そんな私でさえそうなんだから、被災地の皆さんや、大切な人を喪った人の多くが、まだ3.11に対して気持ちの整理をつけられていないんじゃないかと思う。

それなのに、毎日、なんとか、懸命に、生きていて、本当に偉い。尊敬する。


あの日のことを忘れないように書いてみたけど、自分の中で上手く整理ができてないから上手く書けない。だから、続きはまだ今度にしようと思う。

もしかしたらこれを読んで不快になる人もいるかもしれないけど。でも逃げずに書こうと思う。私は、書くことしかできないから。

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