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人は「あ」とともに旅をする。

待っていた本が届いた。

本の名前は「スローシャッター」

田所さんを知ることになったのは、さかうえかおるさんのnoteからだった。

本が届くまえの日にかおるさん手作りの栞も届く。うれしくて完全にお上りさんだ。

たどると長いのであらためることにするが、いろんなことがつながって「スローシャッター」と出会った。

著書は、水産系商社に勤める田所敦嗣さんのnoteに書かれた出張先でのできごとが綴られている。

冒頭のはじまりのタイトルは「アプーは小屋から世界へ旅をする」

アラスカ・アリューシャン列島の先住民のアレウト族の末裔だというアプーという名の少年の…まさに「あ」づくしで物語の旅は始まる。

本はひとりの男性の出張話なのに出張とはほど遠い。

いうなれば、出会いであり、旅であり、小説であり、フィルム映画をみているようなのだ。

どういうこと?とおもわれるかもしれない。
田所さんの上司の言葉をかりるなら「まあまあ、よめばわかるよ」だろう。

田所さんのnoteでも読めるのだけれど田中泰延さんに惚れられてこだわって出版されたのをそこかしこに感じて見えない美しさにたまらなくなった。

表紙の写真はベトナムの繁華街だろうか、裏表紙はランプブラックの夜を思わせる。夜明け前のもっとも暗い黒のようでいて、著書の中の物語のように温かい。

紙のにおいと指ざわりにたまらなく懐かしくて顔をうずめて吸い込んだ。

本にはパスポートのような小冊子も付いていた。
中身は田中さんによる「ふたりのアツシ」というお話があって田所さんともうひとりのアツシさんとここにも「あ」が登場する。

少しこじつけになってしまうけど出版元のひろのぶと株式会社の「と」=「&」アンドの「ア」の音で(あなたと一緒にという)意味をもつ会社名とロゴデザインも「あ」だなぁと「あ」を探すのもたのしい。

と、いろいろ書いてから

本がたくさんの魔法の手によって作られたことを知った。

「あ」といえば「ティッシュと石鹸」161㌻の田所さんの初単独海外の旅と私の初単独海外(仕事)はシンクロしていて驚いてしまった。

ダラス空港は広大でスカイリンクという電車が走っていた。たとえるなら、ディズニーリゾートラインのメガサイズ版といったところだろうか。

すべての搭乗エリアをつなぐスカイリンクはどこまでも果てしなく感じた。

車窓から目にするアメリカン航空の機体はミニチュアのオモチャみたいでとんでもないところにきてしまったと思ったものである。

読んでいて入国審査やセキュリティーゲートであったできごととあの時の緊張感と不安がエンジン排気の咳きこむニオイとともによみがえる。

コックピットがカーテンのみで仕切られたたった30列ほどの飛行機の搭乗はバスで滑走路へ向かいタラップて乗り込む


スローシャッターの冒頭に

「旅をすることは生きること」

スローシャッター

ふと思う。

生きているとたくさんのことに出会う。

「会う」があって
「ありがとう」とともに
「愛」を感じて
「明日」を見つめる。

「安堵」の再会に
「あんしん」したのもつかの間飛び立つ人に
「(ご)あんぜんに」と祈る。

ひとりひとりの暮らしがあって世界はどこかでつながっているのだと思う。


以前、空の運輸関係の仕事をしていた。

いつしか人も荷物も無事に旅をしてほしいと願うようになり、日々「ごあんぜんに」と祈っている。


人はたくさんの「あ」とともに旅をはじめる。






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