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【短編】 一日だけの転校生

 夏休み明けの朝の教室に、見知らぬ女の子が入ってきた。
「佐久間サクラさんは、サンフランシスコから引越してきたばかりで、いろいろ分からないこともあるから、みんなで助けてあげましょうね」
 先生がそう紹介すると、彼女はペコリと深くお辞儀をしたのだが、そのときランドセルがべろんと開いて、筆箱や、何かの白い生物が床に落ちた。
「ててて、何だよサクラ。オイラ、気持ちよく寝てたのに」
 彼女は慌ててその生物を拾い上げると、これ喋るぬいぐみなんだよねはははと笑ってランドセルの中に押し込んだ。
 クラスのみんなは彼女の笑顔につられて笑っていたが、僕は白い生物の鋭い瞳と一瞬目が合ったような気がして少し怖くなった。
 
 学校が午前中で終わり、友達と少し遊んだあと家に帰ると、なぜか佐久間サクラが居間のソファにいた。
「おかえりなさい。あなたにちょっと話があって」
 僕は驚いて自分の部屋へ逃げたが、彼女はお菓子とジュースをのせたお盆を持って、僕の部屋に入ってきた。
「教室で、あなたと目が合った白い子はラミーっていうの。どこか別の世界から来たんだって」
 そう彼女に紹介されると、白い生物は僕を睨みつけた。
「オイラ、前の世界で何千人も人を殺してこの世界に逃げてきたんだ。白くてふわふわした姿は、あくまでも追手の目を誤魔化すための変身なんだからな。カワイイとか言ったら一秒でお前を殺すからな」
 佐久間サクラは白い生物のことを秘密にして欲しいと言ったが、人を沢山殺したのなら罪を償うべきで、そいつの秘密を守ったり保護したりする気持ちにはなれなかった。
「おいサクラ、こいつオイラたちを全否定したぞ。やっぱり秘密を知られた以上殺すしか……」
 すると突然、部屋の窓ガラスが割れて黒い甲冑兵が現れ、白い生物と佐久間サクラの体を一瞬で抑え込んだ。
「お騒がせしてすみません。割れたガラスは弁償しますから」
 
 次に日学校へ行くと、佐久間サクラの席になぜか黒い甲冑兵が座っていて、クラスの注目の的になっていた。
「佐久間サクラさんは急な事情で転校されましたが、今日転校してきた甲冑姿の倉田クララさんは、久留米から引越してきたばかりで……」
 僕はまず、甲冑兵が女の子だったことに驚いた。
 そしてとにかく関わらないようにしようと思ったが、休み時間に席を立つと倉田クララに腕を掴まれた。
「一度学校というものに行ってみたかっただけなの。明日は転校するから安心して」

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