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【短編】 二千年前の話と、遊園地と、テロリスト

「この土地は、二千年前までわれわれの土地だったので、あなたたちは出て行く必要があります」
 スーツ姿の青年はそう言って、私に書類を差し出す。
 ここは、まわりに田んぼしかないような田舎だ。
「国連と、政府の承認によって、この地域一帯はわれわれの土地だと認められたのです」
 いやあ、急にそんなこと言われましても。
「だから、この土地は二千年前までわれわれの土地で、そのことは先日、国連や政府にも認められたので、あなたたちにはこの土地に住む権利がないということです」
 はあ、私は東京暮らしが嫌になって、田舎に帰って実家の田んぼを引き継いで、農業を一から学んでいる最中でして。
「あなたの個人的な事情なんて知りません。あなたがこの土地を所有する権利は、法的に消滅したのです」
 
 次の日、近所は大騒ぎになっていて、私と同じように土地を出ていけと言われたようだ。
「二千年前って、何時代の話だよ?」
「ネットで調べると、二千年前は弥生時代で、卑弥呼が出てくるより二百年も前だってさ」
 近所の人たちが、集会場に集まってそんな話をしている。
「なんでも、彼らは二千年前までこの土地に国を持っていたが、宇宙人の侵略で土地を追われたということらしい。その後、宇宙人が去ったあとわれわれの祖先が移り住んできて」
「その宇宙人って何だよ」
「宇宙人は宇宙人だから、それ以上のことは知らないよ」
 
 そんな訳の分からない理由で土地を追い出されるのは納得がいかなかったので、私たちは行政機関に訴えたり、訴訟を起こすことを考えた。
 でも一カ月間、彼らへの回答を無視していると、この地域にいきなり爆弾が落とされた。
 爆撃を受けた農家の斎藤さんの家には、真っ黒な炭のようになった遺体が転がっているだけで、どれがだれの遺体なのか分からなくなったという。
 
 私や近所の人たちは状況を理解できないまま、とにかく恐ろしくなって、この土地を出て行く決断をした。
 
「デスティニーランドが、ついに日本でオープンです!」
 私たちが土地を出て行って数年後、田んぼは全て潰されて広大な遊園地になっていた。
 かつて近所だった家の子どもたちを遊園地へ連れていくと、みんな無邪気にはしゃいでいる。
「失礼ですが、あなたにはこの土地の元住民で、テロリストの容疑があるため事務所まで同行願います」
 いや、私たちはただ遊びに来ただけなのにテロリストって。
「えー、容疑者の男をこれから連行します」

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