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淫と妖【第一章 道化師】

約束の時間が近づいてくる。

もう駆け引きなど必要ない。

髭を剃り、隠部を念入りに洗い、しっかりとムダ毛を剃り上げる。

歯を磨き臨戦体制は整った。

全裸のままセミダブルベッドに大の字に横たわる。

ホテルエクスプレス。

戦いの際にここに宿泊すると決めているホームスタジアムだ。

決戦に向け気持ちを高めていこう。

高速フリックでお気に入りの卑猥な動画を再生。

負けられない戦いのために、今出来ることの最大限の準備を。

大の字のまま天を仰ぐように卑猥な動画に集中する。

早速陰部がむくむくと反応。

今日はいつにも増して陰部のレスポンスが早い。


、、、ピンポーン!


とうとう来たなこの時が!

昂った気持ちを悟られないように素早く服を纏い一目散にドアに駆け寄る。

ガチャリ。

黒髪のロングヘアが胸あたりまでかかる。

深緑のスカートに紺のストールを肩からかけている。

2ヶ月ぶりの対面だ。

ひ「久しぶり!会えて嬉しいわー!!」

し「久しぶりだね!顔忘れてたけど」

!?

雷に撃たれたような衝撃が身体中を駆け巡る。

顔忘れたけど?

顔、忘れてたけど?

何を言っているんだ?

初めてTwitterを見て指名したじゃないか!!

あの思い出は、あの時の思い出は!!

しずくの中では無かったことになってしまったのか!

所詮、客を金としか見てないのか?

そうか、、、。

可愛いだけのその他大勢の風俗嬢と変わんないんだな。

期待したこっちがバカだったわ。

そりゃそうだよな。

50分しか一緒にいないんだもん。

しずくがTwitterで投稿してる

”420分でBBQに連れてってもらいました”

だの

”フォロワー500人になりました”

だのもっと沢山印象に残る人がいたら、

そんなTwitterで初めて指名したやつのことなんか忘れるわな。

でもな、仮に覚えてなかったとしても覚えてない、なんて言うもんじゃないぞ。

今までの恋焦がれていた想いが全て吹き飛んでしまったかのように、憎悪に変わってしまった。

し「今日5人目でお兄さん最後だよ」

あ、そう。もはや何の感情も芽生えない。

ただこちらも大人だ。不機嫌なことを悟られてはいけないので精一杯の答えを絞り出した。

ひ「そうなんだ。結構顔疲れてるね」

もはや、しずくが疲れてるかなんてどうだっていい。

どうせ疲れてるからサービスも適当になるんだろう。

色眼鏡、とは怖いものだ。

真顔のしずくも好きだったのに、今では仏頂面に見えてしまう。

し「ごめん、疲れてるように見えちゃってるんだね」

ひ「いやいや、こちらこそこんな遅い時間に呼んじゃってごめん」

何かその後も会話したのだろう。

たわいのない世間話をグダグダと続けていだと思うのだが、もはやこちらとしては、もうどうでもいいから時間が勿体ないんだよ、としか考えられなくなってくる。

し「脱がせて」
お決まりのパターンだ。展開は読めている。

次はクルッと後ろに回ってホック外して、と言うんだろ。

案の定、クルッと後ろに回って

し「ホック外して」。

レパートリーはそれしかないのか!!

憤りすら感じる。

ふっくらとした可愛い胸がこちらを向く。

まあ身体はキレイなのでよしとしよう。

しずくの柔らかい手が股間をまさぐる。

慣れた手つきでズボンを下ろす。

全てが既視感である。退屈だ。

下着の上から股間をまさぐる。

しかし感情とは裏腹に股間のレスポンスは早い。

つくづく自分の性欲の強さにも呆れてしまう。

二人とも裸になり、しずくのほうから首に手をまわして接吻。

一旦、憤怒の感情は置いて、この場を楽しもう。

今までの流れを断ち切るように目を瞑り、舌を絡ませる。

集中、集中、集中。

やはり男とは単純なものだ。

身体は火照り、脳が痺れる感覚を覚える。

ひとしきり接吻を楽しんだあと、しずくが片手で掛け布団を剥ぎ取りスルッとベッドに潜り込む。

し「隣に寝て」

言われるがまま、隣に寝そべる。

お互い仰向けのまま天井を見つめている。

しずくは視界に入っていない。

無機質な天井だけを捉えている。

だがこの瞬間変わったのだ。

ホームスタジアムの空気が。

わかる。男の本能が何かが起きることを直感的に感じていた。

そしてその直感は確信に変わった。

たった一言。

酸いも甘いも噛み分けた私の風俗経験の全てを根底から覆す言葉をしずくは言い放ったのだ。

#note書き初め

【第二章 覇気】へ続く

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